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第十四章 対立 場面五 アエギュプトゥス(四)

「第二に、執政官を経験し、東方全域に及ぶ軍団指揮権を持つ総司令官であり、かつ第一人者代理という立場にある者が、長衣もまとわず、先駆警吏も連れず、ギリシア風の衣装でアエギュプトゥス各地を歩き回ったことは、立場を弁えない軽々しい振る舞いであると言わざるを得ない」

 ティベリウスの声は、がらんとした元老院議事堂の冬の空気の中、切りつけるように厳しく響いた。

「第三に、ゲルマニクスはアエギュプトゥス長官セイユス・ストラボの制止にもかかわらず、穀物倉庫を無断で開放し、民衆に小麦を分け与えた。繰り返して言うが、アエギュプトゥスは第一人者の私領だ。穀物倉庫は第一人者の個人財産であり、その運用は長官に委ねられている。他人の財産を無断で使って大盤振る舞いをするようなゲルマニクスの行為は、決して許されてはならないものだ」

 ゲルマニクスはアレクサンドリアを見物して回り、市民たちに熱狂的に迎えられたという。アエギュプトゥスとはゆかりの深いマルクス・アントニウスの孫が、軽装で気さくに市内を歩き回り、その上食糧を大盤振る舞いしたのだから、歓迎されて当然だ。それから遺跡を見物するため、ナイル河を遡行した。それとて決して褒められた行為ではないが、それについてはストラボの報告書を朗読させたのみで、ティベリウス自身は一言も触れなかった。

「元老院議員諸君。どうかその伝統と権威をもって、我々の若い同僚の軽率な行動を諌め、正しく導いてやって欲しい」

 ティベリウスのこの要請を受け、元老院はゲルマニクスに対し自重を求めることを議決し、その内容は書面でエジプト及びシュリアに送られた。二箇所に送ったのは、ローマからアレクサンドリアまで、海路で半月は優にかかるからだ。ゲルマニクスはアエギュプトゥスを発てば、当然シュリア方面へと戻るだろうと予想された。



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