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第十四章 対立 場面五 アエギュプトゥス(二)

 だが、ゲルマニクスはあっさりと言った。

「わたしは東方全域に対する軍団指揮権を与えられている。当然エジプトも、その指揮権の範囲に入るはずだ」

 ピソは青年の勝手な解釈に苛々しながらも、それでもゲルマニクスを制止しようとした。

「何て強引な解釈をする。軍団指揮権はローマの公権力だぞ。それをカエサルの私領に適用するのは無理だ。何なら、本国に問い合わせてみるがいい」

 だが、ゲルマニクスは聞かなかった。翌日には船を用意し、アグリッピナと三男のガイウス・カリグラを伴ってオロンテス河を海へと下っていった。おまけにゲルマニクスはこの短い滞在中に、シュリア属州の運営に関して、行政・軍事共に多くの指示をピソを通さずに出していた。

 他に相談もせずに一存で引き受けたウォノネスの移送。無許可でのアエギュプトゥスへの立ち入り。シュリア運営への口出し。度重なるゲルマニクスの勝手な行動に、ピソは腹立たしさと、いい加減うんざりする気持ちとを抱えながら、その命令を取り消し、全てを旧に復するよう命じた。

 ピソ個人への反発があるにせよ、あの青年は軍団指揮権というものを勘違いしているのではないか。改善すべきだと思う点があるのなら、何故それをきちんとピソに告げ、理由を説明した上で改善を命じるという手順を踏まないのだ。一カ月やそこらの滞在で、その属州の一体何が理解できる? しかも頭越しに命令を出されては、総督の面目を潰す。上に立つ者として、その程度のことに思い至らないのだろうか。

 ピソはティベリウスに報告書を書いた。個人的な感情は極力抑え、事実のみを報告してきたつもりだったが、もういい加減、忍耐も限界だ。ピソはゲルマニクスの言動を箇条書きにし、この若者に軍団指揮権を与えたこと自体が間違いだとまで書き、親友に送った。



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