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第十四章 対立 場面四 王の追放(五)

 マルコマンニ一族の状態も少し落ち着いた頃、ドゥルーススは首都からの書簡を受け取った。一読したドゥルーススは思わず場違いな歓声を上げ、部屋にいた軍団兵たちを驚かせてしまった。

 ドゥルーススは目を丸くして突っ立っていた副官のフルウィウスに、書簡を渡した。

 元老院からの書簡は、ゲルマニクスによってアルメニア新王の戴冠がとどこおりなく終わった事を述べ、続けてこう記されていた。

「元老院並びにローマ人民の名において、ガイウス・ユリウス・カエサル・ゲルマニクス、並びにドゥルースス・ユリウス・カエサルに対し、小凱旋式(オヴァディオ)の挙行を許可するものとする」

 凱旋式(トリウンフス)は、四頭立ての戦車で市内をパレードする。それに対し、小凱旋式とは、騎馬姿で臨む戦勝パレードだ。「凱旋式」よりも一段格が下だが、名誉であることには変わりない。そもそも、ドゥルーススは一度も華々しい戦争を戦っていない。内乱を扇動し、平和協定を結ぶという、むしろ交渉事に近い地味な任務だった。その地道な仕事を元老院は国の平和維持に大きく貢献したと評価し、小凱旋式の挙行を許可するという。しかも、ゲルマニクスと共に。

 東方へ向かった時以来会っていない従兄は、この知らせをもう聞いただろうか。彼も首尾よく任務を果たしたのだ。共に小凱旋式を挙行できるなど、これほど嬉しいことがあるだろうか。

 室内にいた全員は争って書簡を回し読み、歓声と拍手が沸き起こった。晴れやかな空気の中、ドゥルーススはフルウィウスを抱擁した。父はこの知らせを喜んでくれているだろうか。早速首都の皆に手紙を書こう。ゲルマニクスにも、シュリアにいるピソにも知らせよう。たくさんの人たちの顔を思い浮かべながら、ドゥルーススは弾んだ気持ちでそう思った。

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