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第十四章 対立 場面二 東方問題(三)

 南には、当面のところ大きな問題はない。注視すべきは北の小アシアと東のパルティアだ。ローマの東方戦略とは、短く言えばシュリア属州の西に位置する大国、パルティア王国にどう対処するか、という事に他ならない。むしろ、対パルティア戦略上の要地であったことが、シュリアを属州化する大きな理由であったといえる。

 ポンペイウスがセレウコス王国を倒してこの地を「シュリア属州」としてから、八十五年が過ぎていた。小アシアもこのシュリアも、文化的には完全にパルティアと同じペルシア文化圏に属する。それでもローマは以前からこの地域の国々を一部は属州化し、一部は友好関係を確立することで、敵国パルティアを西と北から囲い込むように封じ込めてきたのである。

 今回ゲルマニクスが派遣されたのは、いくつか調整が必要な政治情勢の変化がこの地に起こったからだった。君主政をしく東方の国々では、王であるとか、皇太子であるとか、王弟であるとか、そういった人間が使節となって交渉に当たったほうが、心情的に相手の納得を得やすい。ティベリウス自身がいかに抵抗しようと、対外的には彼はローマ唯一の絶対者だ。現実的な男であるティベリウスは、「アウグストゥス」という称号の使用は極力控えたものの、これらの君主国相手の書簡ではそれを用いている。君主には君主として振る舞う―――それが必要な状況下であれば、意に染まない称号の一つや二つ、使用できない男ではない。そして今回は、「次期第一人者」として、ゲルマニクスがこの地に派遣されたというわけだった。



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