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第十四章 対立 場面二 東方問題(二)

 シュリア属州は、黒海沿岸の小アジア(トルコ)からアエギュプトス(エジプト)へと続く地中海沿岸で、核となる属州だ。この一帯で唯一、第一人者直轄の「一級属州」に格付けされており、四個軍団が駐屯している。この四個軍団が、この一帯全てを広い意味で担当している。

 東に敵国パルティア、北に小王国がモザイク画のように集まる小アジアを睨み、そして南には一神教を信仰するが故の特異性から周辺民族との摩擦が絶えない、ユダエア属州を管轄下におく。ユダエア属州は、一応「属州」ではあっても、独立した属州というよりもシュリア属州の一部という扱いになる。ユダエア長官の上官は第一人者や元老院ではなくシュリア総督だ。

 ユダエアの地を属州化したのは晩年のアウグストゥスだった。常にローマと良好な関係を保ち続け、「大王」と呼ばれたヘロデが、ローマ建国暦七五六年(紀元四年)に死亡すると、ユダエア王国は混乱した。この時シュリア属州総督の地位にあったのが、後に「テウトブルクの悲劇」で三個軍団の壊滅を招いたクィンクティリウス・ウァルスだ。

 ウァルスにはこの混乱の収拾は、いささか荷が重かったとするしかない。曲折の末、ユダエア王国はローマの属州となり、ウァルスに代わってスルピキウス・クィリニウスがシュリア属州総督として派遣された。かつてガイウス・カエサルの東方行きの際、副官として苦労した男だ。

 クィリニウスはユダエア属州長官に任命されたコポニウスと共にこの地の統治に当たった。どちらも有能な男たちで、特殊事情を多く抱えるこの王国の属州化が比較的問題なくなされたのは、彼らの力量による部分も大きい。六年前、シュリア総督はクィリニウスからシラヌスに代わり、ユダエア属州長官も三年前から四代目のグラトゥスという男が務めているが、今のところ、大きな混乱は起きていなかった。

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