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第十四章 対立 場面一 シュリアへの旅(五)

「奥歯に物が挟まったような物言いはよせ。ゲルマニクスにどう言われようと構わん。放っておけ」

「ゲルマニクス・カエサルよりも、むしろアグリッピナ殿が」

 マルクスはそこで言葉に詰まった様子で黙り込む。ピソは先を促した。

「続けろ」

「………アグリッピナ殿は、父上が、ゲルマニクス・カエサルをご自身で訪問されなかったことに、ひどく腹を立てておられるそうです」

「あの若者と違って、わたしは先を急ぐ。使者にも公務多忙につき直接伺う事は出来ないことを一応詫びさせたはずだ」

「ですが―――」

 マルクスはちょっと(ひる)んだ様子だったが、思い切ったように言った。

「ゲルマニクスは、第一人者代理の格で派遣された東方全域の総司令官です。ティベリウス・カエサルでさえ、当時同様の立場だったガイウス殿の下へ、ロードス島から出て挨拶に出向きました」

「あの時のティベリウスは私人だった。わたしは最高司令官直々にシュリア属州を委託された公人だぞ。任務を優先するのが当たり前だ」

 マルクスはまだ何か言いたそうな表情を見せる。だが、ピソはそれを遮って続けた。

「大体、あの若者には年長者を敬う心はないのか。六十歳もとうに越えた身で、元老院議員になって十年やそこらの青二才に頭を下げるつもりはない。総督として、元老院議員として、正しいと思うようにやる。まして、アウグストゥスの血を引くだけの女など、一切敬意を払うに値しない。お前も一々気にするな」

「はい………」

 マルクスはやや困った様子だったが、それでも父の言に頷いた。

 船はそれから数日でシュリアに上陸を果たし、一行は州都アンティオキアへと向かった。

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