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第十三章 ゲルマニア戦役(二) 場面六 ピソの赴任(四)

 今、アウグストゥスの言葉の意味がよく判る。『そなたほど、わたしの手を焼かせた者はいない』―――と。ティベリウスは、自分と全く異なる気性と資質を持つこの「預りもの」を、正直なところ扱いあぐねていたのだ。アウグストゥスも、恐らくそうだったのだろうと思う。

 ピソは石のように押し黙ってしまった友人を前に、小さく吐息を洩らした。その手が少し苛々した仕草をしたが、結局黙ったまま卓上のカップを取り、口に運んだ。カップが卓上に置かれると、奴隷が横からワインを注ぎいれる。短い間があって、不意にピソの口元に苦笑が浮かぶ。

「いいのか。わたしはこういう性格だぞ。相手が第一人者だろうと、神君の血を引いていようと、それだけで遠慮はしない」

「………そうだな」

 ティベリウスは呟いた。ピソはティベリウスを見つめる。

「わたしはいつ現地に向かえばいい」

「年明けになるな。元老院に諮る必要があるし、向こうの準備もある」

アンティオキア(アンタキア)(シュリア属州の洲都)まで、船で二ヶ月。長旅だな。年寄りには堪える」

 ピソは気さくに笑った。この時、ピソは六十三歳。ティベリウスは五十七歳になっていた。




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