B級冒険者への渇望
1年、2年と街での毎日は忙しなく過ぎていく。
最近ではダンジョンの探索も中層まで到達していた。こうなればB級冒険者もあと1歩だ。
あと少し、そのためにはよりよい装備や道具がどうしても必要になってくる。
アユムはミゲルの武具屋以外にも、ジミーの勧めを聞きながら様々な武具屋を訪れるようになっていた。
もちろん戦闘技術についても日々訓練は続けている。しかしそれでもアユムは行き詰まりを感じていた。
(やっぱり、二人では限界があるんじゃないだろうか)
そんな考えが頭をちらつくことも増えた。
キラリによれば、一般的なパーティー人数は3~5人だという。
人数が多ければ役割分担ができて個々の負担が減るが、それ以上多いと狭いダンジョン内での連携は難しくなるからだ。
「ねぇ、シンさんとはいつ潜るんですか?」
ここのところキラリと会っても、そうせがまれることが増えた。
「アユムならもうとっくにB級でもおかしくないのに、勿体ないですよ。
ねぇわかってます? このままじゃ所帯を持つことも、冒険者として一生やっていくことも難しいと思いますよ。
私だって、もし旦那様がC級冒険者がイヤ。もっと頑張ってください」
「でもレイがさ、パーティーメンバーを勧誘する話をすると機嫌が悪くなるんだよ」
キラリはぷいっとそっぽを向いてしまい、その日は何をしても機嫌を直してくれなかった。
シンとはあれからも度々パーティーなどで顔を合わせている。
ある日アユムは、よく行くと本人から聞いていた酒場で、シンが来るのを待っていた。ひとまず相談をしてみたかった。
※
「シンさん、お久しぶりです」
しばらく通いつめていると、ようやくそのときが訪れた。シンが酒場に入ってくるのを見て、アユムはいそいそと駆け付けた。
「あぁ、アユム君じゃないか。奇遇だね」
「突然すみません。ご迷惑かとは思ったんですが、どうしても相談したいことがあって」
シンは手慣れた様子で席に座り、店員に「いつもの」と注文を済ませる。アユムは隣の席に座った。
「迷惑なんかじゃないさ。有望な後輩の面倒を見るのは古参の務めってね。それで、相談したいことってどうしだんだい?」
「じつはダンジョン探索のパーティーのことで相談したくて。
二人でパーティーを組んでいるんですが、それだと限界があるのに、メンバーが別の人と組むことをよく思っていないんです」
「レイ君だね、話は聞いているよ。まぁ彼にも、色々と事情があるんだろう。
いいかい、パーティーメンバーを変えてはいけないなんて決まりはない。常にベストな状態を冒険者は模索している。装備や道具、それにメンバーもね。
別のメンバーと組むことで、自分たちに足りないものを知り、吸収することもできる。これはどの冒険者も経験していることだ」
注文したウイスキーのロックが、ナッツ類と一緒に運ばれてくる。ウイスキーを口に運びながら、静かにアユムの反応を観ている。
「僕が君をパーティーに誘ったのだって、僕が以前先輩にしてもらったことと同じことをしようと思ったまでだ。
もちろん君の力が必要だとも思ったわけだけど、無理強いをしたいとも思わない」
前を向き、ウイスキーをまた一口飲み進めたきり黙ってしまった。気まずい空気が流れる。
「すみませんシンさん。折角親切に言ってもらっているのに、失礼なことを言ってしまって」
アユムはさっと顔を青くしてあたふたと謝罪した。それを見てシンはぷっと笑いだした。
「大丈夫、ただの冗談さ」
あぜんとしたアユムに、シンは続けた。
「まぁそう深く考えず、アユム君だけでも今度一緒にダンジョンへ潜らないか。
ちょうど三日後、僕らのパーティーは休暇をとることにしている。
その日なら僕も空いているから、二人で軽く中層を回ってみてもいい。色々と教えてあげられると思うよ」
「どうかな?」シンはそう言って優しく笑いかける。アユムはその笑顔につい了承してしまった。




