初めてのデート
迎えたデート当日。アユムは事前に何件か服屋を回り、店員の勧めを聞きながら買った一張羅で臨んでいた。
待つこと15分、そわそわと何度も時計を確認しているとキラリがやってきた。走ってきたからか、少し顔が赤い。
「お待たせしてごめんなさい。少し用事が立て込んでしまって」
申し訳なさそうに謝るキラリは、先日のパーティーとも、もちろんギルドの姿ともまるで違った雰囲気を醸し出している。
今日は淡い色のシャツに、長めの赤いスカートが風を受けてふわりと舞う姿がとても可愛い。
アユムははっと我に返った。
「俺も、さっき来たところだから、気にしないで。さ、行こうか」
慣れないリードにぎくしゃくしながら、ジミーの紹介した店へと向かった。
店は評判通り、海鮮パスタの美味い素晴らしい店だった。新鮮な魚介がごろごろと入っていて、レモンと塩であっさりと仕上げられている。
初めて食べる新鮮な味に、顔を見合わせて笑いあった。デザートも文句なしに美味しかったのでキラリも満足そうにしていたのが嬉しかった。
もちろん会計はアユム持ちだ。アユムは心なしか胸を張って店を出た。
「次はどこへ連れて行ってくれるんですか?」
横をテクテクと歩きながら、キラリが楽しそうに言った。
「じつは、とっておきの場所があるんです」
何度も答えをせがむキラリを宥めながら、アユムはジミーの教えてくれた広場へと向かった。ちらりと時計を見る。丁度いい時間だ。
近づくにつれ、歓声が聞こえてくる。アユムはキラリの手を引いて、歓声のする方へと向かった。
そこには、いかにも魔法使いといった格好をした男が一人立っていた。
※
男が指を鳴らすと噴水の水が高く高く噴きあがる。水は7色に染まり、流れるように色が次々変わっていく。
かと思えば龍の姿に変わり観客を驚かせ、次の瞬間には何百もの蝶となって会場を沸かせた。
それからも踊る人形に打ちあがる火の粉。
ちらりと横を見ればキラリも目を輝かせて笑っている。アユムはすぐに視線を目の前の魔法に移し、この幸せなひと時を噛みしめた。
魔法で盛り上がるたびに、観客から銅や銀の硬貨が、魔法使いの足元に置かれた帽子に投げ入れられる。
(でも何でこれほどすごい魔法使いが、こんなところに?)
ダンジョンに潜ったほうが余程稼げるだろう。
不思議に思ってよくよく見ると、両腕のブレスレットから淡く魔石の光がこぼれているのが見えた。
「さあ、いよいよクライマックスです」
魔法使いの声に、周囲の緊張感と期待が高まる。キラリも息を飲んで見守っていた。
アユムが覚悟を決めて、そっと彼女の手を握ろうとしたそのとき、大きな爆発音が会場に轟いた。
(一体なんだ⁉)
咄嗟にキラリをかばうようにして抱き寄せた。
しばらくして爆発音が収まり音のした方を見ると、そこには両腕を吹き飛ばし上半身が黒焦げになって倒れ伏す魔法使いの姿があった。
破裂したような悲鳴が上がるが、すぐに黒い制服を着た男たちがやってきて魔法使いの死骸を回収していった。
(とんでもないことになった)
アユムは目の前で起きた惨劇と、デートにこの場を選んだことを嘆いた。
「キラリさんごめん」
しばらく歩いてから慙愧に堪えずアユムは何度も謝罪した。
「そんなに気にしないでください」
そのとき、腕に軟らかい感触が当たった。腕を組んだキラリの顔がすぐ近くにある。
アユムは頭の中が真っ白になった。
「魔石は扱いが難しいですから、冒険者ならよくあることです」




