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オオカミ様がいた村  作者: 降雪 真
第2章 欲望と発展の街イナリ
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パーティーの結成

 翌日二人はダンジョン探索のため装備を一新しようと、ミゲルの武具屋にいた。


「おうアユム、聞いたぜ、C級に上がったそうじゃねえか」


 顔を合わせるなり、ミゲルはからかうように言った。


「よく知ってますね。昨日昇格したばかりですよ」


「なーに、C級ともなるとダンジョン探索がメインになるから危険も増える。


 そうなれば当然いい武器や防具が必要になるから、こっちも稼ぎどきってなわけでな。こういう情報はいち早く出回るんだよ」


 ミゲルはガハハと豪快に笑った。


「で、今日はどこまで新しくするんだ?」


「今日は俺たち二人分の防具と、アユムの武器を新しくしようと思ってな」


 レイは装備をミゲルの前に出した。これを参考に防具を依頼するようだ。


 随分昔から使っている皮鎧のようで、ところどころ補修した痕がある。大切に使ってきたものだと伝わってきた。


「おいレイ、これ」


 ミゲルは戸惑ったようにレイの顔を見返している。どうやらこの皮鎧は、二人にとっても思い出深いもののようだった。


 しかしレイはいつもと変わらぬ涼しい顔をして言った。


「いいんだ。もう随分ガタが来てたしな。ちょうどいいタイミングさ。


 おいアユムも、いままでの装備出しとけよ」


 アユムは二人の間にある空気に戸惑いながらも、愛用の鎧を出す。


「おいおい、こいつはただの獣の皮鎧じゃねぇか」


 呆れたようにミゲルが言った。


「こんな装備でダンジョンに潜ったら、あっという間にお陀仏だぜ? というより、よくいままで無事だったな。おいレイ、こいつ本当に大丈夫なんだろうな?」


「そんなこと言わずよく見ろよ親父。こいつの鎧はいい皮を使っている名品だぜ?」


 ミゲルは苦虫を噛み潰したような顔をすると、ジロジロとアユムの鎧を検分していた。


「……確かに状態もいいし、いい皮使ってやがるぜ。アユム、すまなかった。


 でもそうか、お前魔物の皮鎧を使ったことねえんだな」


 ミゲルはそう言うと何やら考え込だした。だがすぐにパンと膝を叩き店の奥へと引っ込むと、1張りの弓とゆがけを持ってきた。


「使ってみろ」というミゲルに言われるがまま、アユムは弓を手に取った。


 いままで使っていたものよりずっと弓力が強い。これでは満足に矢を引くこともできないだろう。


 アユムは肩を落としながら弓を返そうとしたが、ミゲルは弓を受け取ろうとせず、ゆがけを顎で指している。アユムはため息を軽くついてからゆがけを右手に着けてみた。


 すると驚いたことに指先から体全身まで、暖かいナニカに覆われたのを感じた。手に吸いつくようで、着けた違和感もほとんどない。


 試しにさっきの弓を弾いてみると、すんなりと引くことができたのだった。


「ゆがけには魔物であるオークの皮を使っている。『力』を補助する機能が付与されているから、射手には人気の代物ってわけだ」


 ミゲルは自慢げに言った。


「魔物の皮にはこいつのように、様々な機能を付与することができる。


 ダンジョンの魔物は獣とは比べ物にならないほど強い。だからその力が宿った素材の装備で戦うのが常識ってなわけよ」


 ミゲルはほかにも、敏捷性が上がる靴や、防御力を高める鎧など次々と見せてくれた。


 アユムはそんな魔法のような道具の数々にまたも虜になり、目を輝かせながら聞き入るのだった。


 レイは何かを諦めたように顔をしてその様子を眺めていた。


 だが竜皮の鎧が豪商の屋敷が買えるような白金貨4枚もするように、当然いいものは値も張るようだ。


 二人はミゲルと話し合い、前衛となるレイは防御力重視のものを。アユムは敏捷性を重視した防具とミスリルのナイフを依頼した。


 二人はこれでほとんどの貯蓄を吐き出してしまったわけだが、アユムは上機嫌だ。


 その右手には先刻のゆがけがはめられている。例のごとく、レイが「昇格祝い」ということで半ば脅すようにして負けさせたのだ。


「さ、これで明日からは一からのスタートだな!」


 武具屋を出るとレイは清々しい顔をして言った。


「だけど本当に有り金全部はたいちゃったね。レイは僕の分まで結構多く出してくれたけど、本当によかったの?」


 レイはアユムの背中を強く叩いた。


「何水臭いこと言ってんだよ。これからはパーティーでダンジョンに挑むんだろ、相棒。パーティーの装備に金を出し合うなんて、常識だろ。知らないのか?」


 そう言ってレイは二カっと笑った。


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