最高のプレゼント
数日かけてカズイシ村からイナリへと戻りギルドへと報告すると、受付のキラリからはこれまでにないほどの笑顔で迎えられた。
「おめでとうございます。やっぱりアユムさんならできるはずだと信じていました。私の目に狂いはなかったですね。
これでアユムさんもC級冒険者、一流冒険者の仲間入りです。
今日はもうお疲れでしょうからゆっくり休んで、明日からはバリバリ頑張ってください!」
その後キラリはダンジョンに潜る際の注意事項などを説明してくれたように思う。しかしアユムの耳には届かずにいた。
事務手続きを終えるとアユムのカードには「C級」の文字が刻まれていた。
(こんなものが何になるのだろう?)
アユムはぼんやりとした頭でつらつらとそんなことを考えながら家路につくのだった。
※
「おかえり」
帰るとそこには既にレイがいた。
(こんな早い時間にもう部屋にいるなんて珍しい)
動揺するアユムに対し、レイはいつもと変わらないように見えた。
「そろそろ戻る頃なんじゃないかと思ってな」
レイがぽんっと何かを投げてきた。
「こいつを渡そうと思って」
それは何かの動物の皮でできた、小さめのウエストポーチのようだった。試しに着けてみると着け心地も悪くない。
「ありがとう。でもどうしてカバンを?」
「C級昇格の餞別。普通だろ、これくらい」
レイは顔を背けそう言ったかと思うと、くるりと振り返りにやりと笑って言った。
「使ってみろ、驚くから」
何のことやらわからないまま、腰につけたカバンを見る。
(あまり大きなものは入らなそうだ)
そう思ってまずは試しに財布を入れてみた。シルバーウルフの報奨金もあり、ずっしりと重い。
財布をカバンに入れてすぐにアユムは思わず床を見た。腰に重さがかからなかったため、カバンの底が抜けて落ちたかと思ったのだ。
その様子をにやにやと見ているレイ。その様子に少しムッとしながらカバンの中を見てみると、そこには「何もなかった」。
なかったというより、何も見えない。真っ黒な空間が広がっていた。
アユムは驚いて何度もカバンの外も中も見返した。引っ繰り返しても何も出てこない。
手を突っ込んでみると、するすると腕が肩まで入ってしまい怖くなって引き戻した。
「レイ、これって何なの? 財布どっかいっちゃったんだけど」
あたふたと焦るアユムを宥めるレイ。
「まぁそう慌てるなって。これは『空間収納』機能が付与されたカバンなんだ。財布のことを思い浮かべながら、手を入れてみろ」
アユムは半信半疑のままカバンに手を入れてみる。するとあたかも既にそこにあったように、手にずっしりとした財布の感触を感じた。引き出すと手にはいつも通りの財布が握られている。
「な、言っただろ? このカバンの中では重さも時間経過もなく物をしまっておくことができるんだ。
結構量も入るんだぜ。そうだな、お前のいまの荷物くらいなら軽く入るんじゃないか?」
(まさかそんなはずが)
アユムは絶対嘘だと思いながら、持っていた荷物を移し始める。
長期間旅ができるように準備したため、荷物の量も10㎏近くある。
しかしそのすべてがするすると吸い込まれるように入っていき、すべて納まってしまった。
「『グラビトン』っていう、特殊な時空魔法を使う魔物の皮からつくられる魔道具なんだ。つくれる職人も少なくて、中々手に入らないんだぜ?」
そう言って肩をすくめるレイ。ただただびっくりが勝ってしまって、その間もそこらにあるものを次々と入れていくアユム。
次第にだんだんと楽しくなり、椅子や机、タンスまで試してすっぽり入ったときは二人して笑ってしまった。
「ありがとう、レイ!」
「そこまで喜んでもらえるなら頑張った甲斐があったよ。
ダンジョンに潜るならどうしても荷物も多くなりがちだからな。このカバンがあれば、どんな量の荷物も気にならないだろ?」
嬉しそうに何度も頷くアユムを見て、うんうんとレイも満足そうにしている。
「じゃあこれからは、俺の分の荷物もよろしくな!」
こうしてアユムの、荷物持ちとしての役割が決定したのだった。




