神石の力
まずアユムが御使いとして課せられたのが、膨大な魔力の扱いに慣れるというものだった。
そのために与えられたのが「神石」と呼ばれる掌に納まるくらいの小さな石だ。
紫の怪しげな光を放つ魔石と違い、神石は青く、柔らかな光を放つ。その光は見ているとほっとするのと同時に、泣きたくなるようなもの悲しさを引き立てる不思議な光だった。
「神石は年に数個賜る貴重なものよ。その内に秘めたる力は莫大だ。
御使いとしての務めには膨大な魔力を扱う術を学ばなければならん。
アユム、お前はまず神石の力をコントロールできるようになるのだ」
ヨミはそう言って神石をアユムに手渡した。
「よいか、決して粗末にするでないぞ」
ぎゅっと握られたその手は冷たく、骨ばった指が刺さって痛かった。
神石の力は凄まじい。首から下げた神石を見て、アユムは驚愕していた。
力を使うのは簡単だが、扱うのは至難の業だ。
魔法を使おうとすると包み込むような力が全身に漲り、何でもできるような気持になる。そのためいつの間にか予想していた以上の結果が伴った。
樹を揺らそうとすれば暴風が吹いて自分まで吹き飛ばされ、起き上がってへし折れた樹を見たときはゾッとした。
「そんな風に乱暴に扱ってはダメよ」
アユムの修行には、サリナが付き添ってくれた。サリナはアユムの肩に手を添えると言った。
「普通魔法は自然界にあるわずかな魔力を集めて使うものだけど、神石の力を使うときはそれではダメなの。
神石から溢れ出る力を、自分の中で循環させてから使うのよ。力に身を委ねて、その声を聴かなきゃ」
サリナはアユムの手から神石を取ると、手で包み込み目をつむると、祈るように手を組んだ。
すると辺りが急に暗くなったかと思うと、突然雨雲が立ち込めしとしとと雨粒がその顔に当たった。
「ね、これが神石の力なの」
凄いと興奮してアユムはサリナに駆け寄った。しかしそう言って笑うサリナの顔は悲し気で、頬を伝う水滴は涙のようだった。
(笑ってほしい)
アユムは切に願うのだが、何故サリナが悲しそうにしているのかもわからず、何もできない自分が不甲斐なくて仕方なかった。




