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3/12

ふもとの村は水力紡績機を作るのにはもってこいらしい。

 俺たちは山を下り、ふもとの村にたどり着いた。


 この村の名はクロスフォード。


 特に何の変哲もない村だ。


 この村に住む人たちはみな農業を営み、割と自給自足に近い生活をしている。


 ちなみに、俺は定期的にこの村を訪れ、村で必要になるものについて錬金術で生成したりしていたので、そこそこ知名度があり感謝もされている。


 俺も村の人との交流は楽しかったので、都度都度ここに来ていた。


「あ、アルフレッドさんだ!」


 俺たちが村の砂利道を歩いていると、俺のことに気付いた子どもが寄ってきた。


 彼女は8歳の少女レイリー・ロイド。


 俺がお人形さんを錬金術でプレゼントして以来、すっかり俺になついている。


 レイリーがぱたっと俺の足に抱き着いてきて、「アルフレッドさん、レイリーと遊びに来てくれたの?」と尋ねてくる。


 控えめに言っても可愛い。


「いや、今日はたまたま散歩で来ただけだ。すぐ帰るよ」


「えー、寂しいなあ……」


 レイリーはしゅんとして悲し気な顔をしてしまう。


 こんな少女一人を幸せにしてやれないなんて俺はなんて無力な男なんだ……。


 なぜ突然中二病的思考が入ってしまったのか分からないが、それは気にせず俺はレイリーの頭をわしゃわしゃとなでながらごめんよーと謝罪の言葉を述べる。


「おじさん、まさかロリコンなの……?」


「俺に変な幼女性癖はない」


 以前も言ったように我ながらヤバい扉開いちゃうかな系男子じゃないんで。


 カレンはジト目で俺の方を見てくる。


 疑いを晴らすことができていないらしい。


「まあそんなのはいいだろ、しかし、この村はどうだ? 気になるものとかあるか?」


「ん、あそこ。割と大き目な川があるね」


「ん? ああ、あれか。あるな。レーヴェント川だが、それがどうしたか?」


「ちょっと見に行こうよ」


「川遊びとか子どもかよ」


「遊びじゃない遊びじゃない。これは……ビジネスだ」


 なんとなく、影から魔王討伐を助けてそうな雰囲気を漂わせているセリフが彼女の口から放たれる。


 ビジネスならしょうがない。


 これがどう商売につながるのか全く分からないが、俺はカレンについて川に行くことにした。


 とことことレイリーが後ろをついてくる。


「アルフレッドさん、彼女さんなの?」


「いや、萌えないゴミだよ」


「ちょっと言い方!? 何で急にそんな風当たり強くなっちゃったの!? 唐突に台風来たかと思うぐらい強風ぶっこんでくんじゃん!?」


「そもそもただの居候がゴミ以上の立ち位置を獲得することは不可能だと思うぞ」


「マジですか。おじさんとちょっと仲良くなれたと思ってたのは私だけだったの?」


「いや、俺もお前のこと嫌いじゃないけど、まあ帰ってくれるなら帰ってほしいわ」


「つい今朝がた交わした友達の約束どうした? 朝令暮改っぷりがすごいよ?」


「二人とも、夫婦漫才みたいー!」


「レイリーは難しい言葉を知っていてえらいな」


「えへへ……」


 俺はレイリーの頭をうりうりと撫でながらでれでれとしたレイリーの顔を見る。


 可愛いやつめ。


 やはり幼女という生命体は恋愛対象ではないが、鑑賞対象としては素晴らしいな。


 俺がニタニタした気色悪い笑顔を浮かべていると、「おじさん、やっぱ真正のロリコンだよね……」と汚物を見るような視線をカレンは向けてきた。


 まあ、幼女は好きか嫌いかで言えば、愛してるの部類に入るからな。好きか嫌いの2択の無視っぷりがヤバい。


 俺とカレンの関係性が険悪化しながらも、最終的にはなんやかんやで仲直りを遂げているうちに川にたどり着いた。


「うん、素晴らしい川だね」


「そうか?」


 特に良い点などないと思うが。


 水がきれいって程でもなく、これといって目立つ素晴らしいポイントもない。


 はっきり言ってしまうと何のとりえもない、存在価値のない川ではないかと思う。


 いやもちろん、川の付近の人たちの農業の営みには重要だと思うが。


「ここに水力紡績機を基幹装置とした工場を建てよう」


「水力紡績機?」


「うん。おじさん、今から言うもの作れる?」


「なんか、複雑なものか?」


「うん、超絶複雑」


「無理」


「マジか」


「うん」


「そこをなんとか」


「設計図がないと再形成ができない。俺のあの家も設計図があったうえで再形成されてるからな」


 そう。俺の錬金術は俺がイメージできるものでなければ作れない。


 なので、基本的に複雑な機構を有するものは、設計図がなければ形成できないのだ。


「なるほど、そういったものが必要なんだね。じゃあ設計図を作るよ」


 カレンは納得したようだ。


 カレンと俺はレイリーについていって、レイリー宅へ向かう。


 羽ペンと紙を貸してもらう予定だ。


「マジか、まだ羽ペンの時代なの? 確かにこっちの世界でも18世紀ぐらいまでは羽ペンだったらしいって聞いたけど」


「なんだ、羽ペンより進んだものがあるのか?」


「まあ色々ね。羽ペンよりは便利だと思う」


「そうか。ものが書きやすくなってくるってのはそれだけでいいよな。残せる情報とかの量が格段に違いそうだ」


「それは間違いないね。おじさんの醜態とかも後世に書き残せるしね。ロリコンの伝説的錬金術師がいましたみたいな」


「後半だけで結構です」


「二人とも不思議な話してるー。こっちの世界って、カレンさんは別の国から来たの?」


「ん、そんなところだよレイリーちゃん」


「へー、なんていう場所?」


「んー、二ホン?」


「二ホン? 変な名前だねー」


「確かにこの辺じゃ聞かない名前だよね」


 そういってレイリーとカレンはしばらく元の世界について話し込んでいた。

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