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『ライン』ってやつは興味深いな。

 色々話し合った翌日。


 美少女とひとつ屋根の下に暮らしている状態だったが、その日の夜は特に何もなかった。


 ほんとだよ? サービスシーンとか特にないからね?


 しいて言えば、寝起きのカレンはアホ毛が立ってていい感じに可愛かった。


 ただまあその程度である。


 俺自身33歳のいいおっさんなので、さすがにこの年の幼女に興奮することもない。


 アホ毛が立っててかわいいとか言ってる時点で我ながらヤバい扉開けちゃうかな予備軍なのは気にしてはいけない。


 そして、ダラダラと一日が始まり、朝のスープとパンを食べている時だった。


「おじさんの知り合いがいるっていうふもとの村に言ってみようよ」


「まあそれは問題ないが、何もない所だぞ?」


「まあまあ。見てみたいんだよね。私もこの世界に来たばっかりで色々と見てみたいしさ」


「そうか。じゃあ行くか」


 俺とカレンはご飯をささっと済ませて、家を出ていく。


 話を聞くと、彼女の名前はトウドウカレンというそうだった。


 最終的にはカレンという名前で呼ぶことになった。


 ちなみに俺の名前はアルフレッド・ローレンだ。


「話が早くて助かるよ、おじさん」


 決してトシクッテル・オジサンとかいう名前じゃない。


 なんでこいつ名前呼びしないで失礼な方で呼んじゃうの?


 俺は、こいつに礼儀というものが海辺の一粒の砂ほども備わっていないことに悲しみを覚えつつ、カレンを引き連れながら家を出た。


 家を出たところで、俺はカレンの肩をトントンと叩き、後ろを振り返らせる。


 カレンは首をかしげながらも俺が見た方を一緒に見やる。


 そこには俺の家、少しおしゃれな雰囲気が漂うログハウスがあった。


「これは俺が錬金術で成形して作った家な」


「え!? これも!? マジかおっさん、すごすぎじゃない!?」


 カレンはおおーっと声をあげながら家を眺める。


 そして家に近寄って、素材となっている木をなでる。


 しかし待て、テンションが高いときの方がより失礼な物言いになってるのなんでだ。


 親しき中にも礼儀ありだぞ。


 会って1日しか経ってないやつに親しさとか特にないけど。むしろ鬱陶しさしかないまである。


「このささくれ立った感じとか、本物って感じがすごいね!」


 カレンは木をさわさわと愛でるようになでながら笑っていた。


「まあ、ささくれ立った感じとかは作ろうと思えば作れるな。そこのは経年劣化だが」


「そっかー。でも、こんな感じで成形までできるなんてすごいじゃん。どれくらい時間かかるの? 1か月ぐらい?」


「いや、これぐらいだったら一時間あればできるな」


「ヤバくね? おじさんの錬金術ってかなりすごいじゃん」


「まあな。錬金術に魂かけすぎて友達一人もできないぐらいだからな」


「その自虐ネタ悲しすぎぃ……」


 ううっとカレンは嗚咽を漏らしながら俺の自虐ネタに悲しみ打ちひしがれる。


「おじさん、私が最初の友達になってあげるよ」


 何でこいつはいつでも上から目線なの? 天界の方なの?


 ビジュアルが天使だから納得感がすごい。


 納得しちゃうのかよ。


 ただまあ、その気持ちはありがたいので受け取っておこう。


「おう、まあよろしく頼む」


「オッケー。おじさんは異世界での私の最初の友達だね」


 カレンは満足げにうんうんと頷いている。


「こういう時さ、前の世界だったら、LINEってやつを交換してたんだ」


「ライン?」


「そ。友達になった人と、いつでも連絡を取れるようにするために」


「いつでも連絡を取る? どういうことだ?」


「んー、確かにこの世界じゃ、『いつでも連絡を取れる』なんて奇跡的すぎてわからないかー」


カレンはんーと腕を組みながら考えるしぐさをした。


「ま、とりあえず、スマホってやつを持ってると、それを通じて、知り合いならいつでもだれとでも連絡が取れたんだよ。それこそ、10分後あそこで待ち合わせしよー、みたいなさ」


「マジか……。それは……すごいのか何なのかわからんな。それってすごいのか? というかそんな急用発生するか?」


「それはおじさんに友達いないから分からないだけだよ」


「俺の傷を不用意にえぐるのは止めてもらっていいですか? 俺にも錬金術でもどうしようもないことがあります。それは、私の心の傷です」


「大丈夫、それなら私が心のバンドエイドになってあげるよ」


「バンドエイド? それなんだ?」


「……説明が面倒だからいいや」


 カレンはうぅんと頭を抱えてしまった。


「いやー、常識が違う人とコミュニケーションをとるのは、そこそこに大変だね」


「俺も結構それは感じてるぞ。でもまあ、これからは友達だからな。じっくり距離を詰めていけばいいんじゃないか?」


「お、おじさんいいこと言うね。ごもっとも。これからよろしくお願いします」


 カレンはぺこりと体を傾げたので、俺もそれにならってお辞儀をしておく。


 随分と年の離れた友達ができたものだ。


 ただ、こういうのも案外悪くないかもしれないと思っている俺がいた。

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