表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/12

第十話 さよなら


「悪い、また後でかける!」

『え? ちょっと駿之介ーー』


俺は通話を切り、走った。改札をダッシュで駆け抜け、停車していた電車に乗る。


「発車します。閉まるドアにご注意ください」


閉まるドアが遅く感じる。電車に乗り、向かった先は、ローナの家だった。


家に着くと、明かりがついていない。暗くて静かだ。

俺は家のチャイムを鳴らした。だが、応答はない。俺は玄関のドアを叩いた。


「おい! いねーのか⁉ ローナ!」

「何してるんですか⁉」


後ろから声がして、振り返ると一人のおじいさんが立っていた。


「あの、俺ここに住んでいる藤崎ローナと彩の知り合いなんすけど」

「ああ? なに言ってんだ、ここには今誰も住んでいないよ」

「え? 引っ越したってことですか?」

「いんや、ここの売家はもう1年も誰も住んでいないさ」

「1年……?」

「家を間違ってるんじゃないのかね?」

「いや、そんなはずは……確かにこの家のはずなんだ!」

「しつこいなぁ。警察を呼ぶぞ!」


 そう言われ、俺はその場を移動するしかなった。家を間違っているはずはない。確かにこの家のはずなんだ。ということは、やはりーー


俺は自宅に戻った。


「お帰り。出掛けてたの?」

「あぁ……」


母さんの言葉にそう返すのがやっとだった。


部屋に行くと、机の上に記憶の欠片が浮いていた。

俺は急いで、記憶の欠片に触れた。すると、ローナのホログラムが現れた。


『駿之介くん、いきなり消えてしまってごめんなさい』


俺は震える手でローナに触れた。映像のローナは透けて触れなかった。


『私たちがこの日本に来たのは、逃げた悪魔と、その悪魔が持ち出した魔導書を追ってのことでした。でも、その目的を果たした今、私たちはこの日本に留まる理由が無くなってしまいました。魔法の国に帰らなくてはいけないんです』

『今日、先輩が私たちに関する記憶の消去を学校で行いました。もう、私たちを覚えている人は誰もいません。だから駿之介くん。駿之介の中にある私たちの記憶もーー』


ローナはそこで顔が歪み、下を向いた。数秒押し黙り、目を拭いながら顔を上げる。そこにはいつもの笑顔のローナがいた。


『最後に、駿之介くんと遊園地に行けて本当に楽しかった。私のお願いを聞いてくれてありがとう』

「なんだよ……勝手に満足してんじゃねーよ」

『駿之介くんが私のことを忘れても、私は駿之介くんのこと忘れませんから』

『最後に……』


最後だけ、ローナの音声が途切れて聞こえなかった。けれど、口の動きでなんて言ったか俺には分かった。


ーーーー大好きです。


「忘れるもんか、ぜってー、忘れねぇからな」


俺がそう言った瞬間、激しい光が現れた。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ