眷属
「…眷属?」
「はい、僕は広く自然を管理する使命を主より請け負っていますが、更に細かく、木を管理する者、花を管理する者、草を管理する者を増やしたいのです。」
レイチュアはこの地の植物をある程度増やしていた。
中には果物の木や、野菜の様な物もあり、私も少し拝借したが、甘くて瑞々しい、良い出来の物だった。
手が回らない訳では無いだろうけど、細かい管理をする者を作った方が効率が良いのだろう。
「自然の管理の為に、自分の力の範囲でやりたい事があるのなら、別に許可を取る必要は無いわ。好きにしなさい。」
「御意。」
教会の聖堂の椅子に座っている私にレイチュアは一礼して、去っていく。
私は、二人にも声をかけた。
「貴方達も、夜の管理、昼の管理の為に必要だと思うのなら、眷属を増やして構わないから。」
私が座っている席の後ろから光と闇の管理人がピョコッと姿を現した。
「私は、今のところ必要有りませんわ。私の仕事は、1日1回、夜を昼に変える事だけですもの。」
「同じく〜。それ以外の時間は退屈ですけどね。」
この二人、最初の行儀の良さは何処へやら。
初仕事を終えた途端、勝手に教会に上がり込み、私の許可も無しに住み着いた。
いや、別にそれは良いんだけど…。
行くとこ行くとこに付いて来るのだ。この二人。
レイチュアは、忙しそうにあちこちで仕事をしているのに…。まぁ、仕事を与えたのは私だから、悪いのは私なのだけれど。
この仕事の配分量は少し理不尽かも知れない。
私は、元からやろうとしていた事をこの二人に押し付ける事にした。
「ダクネス、シャイニー。貴方達の仕事を追加するわ。」
『え。』
「貴方達の力を使って、眷属を作りなさい。
ダクネスは冬、秋、水、氷、雪、曇り、雨を司る者を。シャイニーは夏、春、火、炎、マグマ、晴れを司る者を。」
二人は顔を青くして首を振った。
「無理ですよ!いや、本当に。俺がご主人に与えられたのは、昼を夜にする力だけじゃないですか。眷属だって、闇の管理を手伝う者くらいしかできませんって!無理!無茶!無謀!」
シャイニーもコクコクと頷いてダクネスに同意する。
「その力を、今から貴方達に追加します。眷属を作った後、ちゃんと責任を持ってその子達の面倒を見ること。貴方達は今から産まれる子達の親であり、上司なのだから。」
シャイニーは眉を下げて怪訝な表情を作った。
「何故、その様な回りくどい事を?私達に力を与えて眷属を作らせるより、貴方様が直接作った方が簡単ではないんですの?」
シャイニーの疑問ももっともだが…。流石にレイチュアの仕事量に合わせてみましたとは言いづらい。
「回りくどくても、私が出来る事を何でも自分でやってしまったら、星が育たないでしょう?星の成長とは、貴方達の成長に直結しているのだから。」
ただの言い訳だったのだが、二人は、納得した様だった。
「そうですね。貴方様は自分の考えをちゃんと持ったお方だもの。出過ぎた事を言いましたわ。お許し下さい。」
「申し訳ありませんでした。謹んで、その役割お受けします。」
結局この二人は、私を慕っていない訳では無いのだろう。真面目にやるべき時は、真面目に出来る。言うなれば、やれば出来る子って感じの、親しみやすさがあるだけ。
それはきっとこの二人の長所だ。
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「…準備が整って来たわね。」
闇と光の管理人達に力を渡し終わり、二人は眷属を作るべく、集中する為に一旦教会から離れた。
「そろそろ、生物が生きていける環境が完成する。」
でも、私には、時間が無限にあった。
急ぐ必要はない。
今日は取り敢えず、レイチュアが作った林檎を食べて、取らなくてもいい睡眠を取って…。
私は疲れを癒す為、寝室に戻った。