光と闇
リリアルは闇を嫌った。だからこの星に夜は来ない。
私は光と闇を管理する魂を作った。
光と闇は表裏一体だと思う。そんな考えからか、黒と白の、双子の様に瓜二つの男女が現れた。
「主よ、俺は闇を齎す者。」
「主よ、私は光を齎す者。」
『貴方様に従い、世界の均衡を保とう。』
片膝をつき顔を伏せる二人。私のいる場所には既に、森の様に植物が溢れていた。
「ダクネス、シャイニー。貴方達には昼と夜を作って貰う…レイチュア!」
「はい。」
「植物が育つには、昼と夜はどのくらいの時間が丁度いいと思う?」
私の基準は全て地球に基づいている。話す言葉も日本語のまま、魂を作る時に、それで通じる様に調整しているのだ。
此処にはまだ夜が無いから、一日を区切る物がない。地球と同じように、二十四時間で一日としても良いけど、逆に一日が百時間でも私には、何の問題も無かった。
「主に与えられた僕の力で、植物は昼と夜が無くても育ちますが、昼と夜が12時間ずつ交互に来れば、もっと、やり易くなります。」
「そう。最初は昼から、12時間経ったらダクネスがこの星を暗くして、また12時間経ったらシャイニーが明るくしなさい。24時間で一日、365日で、一年とします。」
『拝命いたします。』
やはり、地球の植物を参考にしているから、レイチュアには地球と同じ時間の流れが丁度良いようだ。
「主の御心遣い、有難く存じます。」
私達には睡眠は必要ない。
でも、これから作る生物達には休息の時間が必要だった。闇は人々に安息を齎す。光しか無い、影の無い世界はきっと、歪な物になるのだろう。
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レイチュアは着々と植物を増やしていってる。
私はまだ木が生えていない大地の真ん中に家を建てた。
「教会?」
私は魂を産み出すときも、物を作る時も、与える役割を決めるだけで、明確に何かを想像している訳では無い。潜在意識の中にある、ぼんやりとしたイメージが形を作っているのだ。
「神様が住む場所のイメージだからか…」
白くて大きな教会には美しい、色取り取りのステンドグラスが埋め込まれていた。扉の両端には女性の彫刻が教会の中に私を誘うように立っている。
中は大聖堂になっていて黄金のシャンデリアが明るすぎない程度に照らされていた。
奥にある扉を開けて階段を登れば寝室があった。
レースの白いカーテンに、壁際には机と本棚が置いてある。私はその向かい側にはシングルのベッドに転がった。
「ふふ、神父様もいないのに…。」
私は可笑しくなって笑った。ランプが付いた部屋の外では、既に闇の時間が訪れていた。ダクネスの初仕事は成功したのだろう。
窓から外を見てみると、闇が深すぎてこの教会が空間から切り取られているように感じられた。
…空を見上げても星は見えなかった。