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詩集 碧い鳥

薔薇の姫

作者: 紀 希枝

 先日、みすぼらしい薔薇を見つけました

 うす汚れた一輪の薔薇です


 私が毎朝通る、白壁と瓦屋根の連なる細い坂道の脇には

 さくら草の群れる低い生垣も続いています

 今まで気づきもしませんでしたが、ちょうど私の腰くらいの位置に

 うすい桃色の花が一輪だけ

 まっすぐと貌をあげていたのです


 きっと着物の帯によく映えるだろう色の花弁は

 どうしてか、煤に汚れていました

 この道を車は通れないはずなのに


 花弁はよく見れば、端が散れぢれでした

 うねる枝とそこから伸びたいくつもの棘を見て初めて

 それが薔薇だと気づくほど

 みすぼらしい薔薇でした


 きっとこの薔薇は、花の国から逃げてきたお姫さまです

 さくら草たちがひっそりと匿っていて

 それが今日ついに、この私に知られてしまったのです

 だって、この薔薇はこんなにもみすぼらしいのに

 同じ色をしたさくら草が頭を垂れるほど、輝くように咲いていたのです

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