第5話 男子高校生の秘宝 吉川美波 編
申し訳ありません。ガッツリ下ネタ回です。あぁ、石を投げないでください!
私は待つ女。……感想もお待ちしています。(by待つ子でらっくす)
放課後、末松くんと一緒に電車に乗って、中央本線で末松くんの自宅がある小金井へ。
末松くんの家は小金井でもわりと大きな家が立ち並ぶ閑静な住宅街にあって、小ぢんまりとした外見の家なんだけど手入れの行き届いた庭なんかがあったりして、調布にあるあたしの家より立派だ。
「おぅ。上がれ、上がれ」
「お邪魔しまーす」
末松くんに促されて玄関で靴を脱いで上にあがり、古くて味わいのある板の間の廊下を進む。この廊下がまたぴかぴかに磨かれていて、歩く姿が廊下に映りこんだりする。で、よく見るとぴかぴかなのは廊下だけじゃなくて、家全体に掃除が行き届いていて埃一つないのだ。
ぴかぴかの廊下をずんずん進んで階段を上がってまた廊下をずんずん進んで、それで廊下の突き当たりにある扉を開けると、そこは巨大なゴミ箱だった。
「…………」
末松くんの部屋を見るのはこれが三度目になるんだけど、毎度ながらこの光景には絶句する。
部屋の中は脱ぎ散らかした服とか漫画とか大量の雑誌とかCDケースとかレコードとかポテチの空き袋とかが、え!? なに!? 竜巻にでも遭遇したの!? てな感じに掻き混ぜられて散乱している。
「おぅ。ちょっと散らかってるけど、気にせず入ってくれよ」
この部屋のどこを見れば、ちょっと、なんて形容詞が出てくるのかさっぱり分からないけど、とにかくあたしは一歩部屋に足を踏み入れる。すると―― くさっ!――何ていうか男くさっ! てゆーか汗くさっ!
あたしはドアを開け放ったまましばらく立ち止まって、部屋の中に充満する男くさいやら汗臭いやら何か色々くさい臭いがが薄れるのを待つ。
ううむ。それにしても、こーゆーのが一般的な男の子の部屋なんだろうか? あー、でも、ミズキの部屋はこんな酷くはないか。本とか作者を五十音順で並べてたりして、アイツって意外と几帳面なんだよねー。てゆーか、あたしの部屋より片付いてるし……。
ようやく臭いが薄まってきたところで、あたしは飛び石みたいにある僅かな足場をぴょんぴょん飛び跳ねながら部屋の中に入っていく。
「ねぇ、お宝ってどれー?」
「あー、悪い。今ちょっと探すから、適当に座って待ってて」
あたしの方を振り返りもせずに漫画がぎっしり詰まった本棚を引っ掻き回す末松くん。仕方がないのであたしは床に落ちていたクッションを見つけてその上に座る。するとクッションから、もわわん、と埃が舞い上がった。
ちょっと手持ち無沙汰になったあたしは、黙々と本棚から漫画を引っ張り出していく末松くんの作業を見つめる。……んん? なんだ? 漫画を避けたらその後ろにまだ何かあるぞ? てゆーか裸の女の人の写真だ! まさか、あれが世に聞くえっち本!? てゆーか、うわっ、うわっ、スゴーイ! 漫画避けたら後ろは全部えっち本だぁ!!
「あっ! あった、あった。じゃじゃん! これが俺のお宝!」
振り返ってあたしに突き出した末松くんの手には一枚のDVDが握られていた。で、DVDには【ぶっかけ女子校生パート8 ~もうおなかいっぱい~】と書かれたラベルが貼られていた。てゆーことは、男の子のスッゲーお宝ってえっちビデオなの!?
末松くんはさっそく部屋の隅にあったパソコンを立ち上げ、ディスクドライブにDVDを挿入した。
しばらくして自動的に本編が再生される。
最初は車内の映像だった。車はどこか田舎の道を走っていて、助手席にはセーラ服を来た女の人が座っていた。でもこの女の人、どう見ても二十歳は過ぎている。で、女の人がカメラに向かって、パパと香川県にやって来ました~。とか言ってる。二十歳過ぎてセーラ服着るなんて、ちょっと厚かましいんじゃない?
画面が切り替わって、今度はどこかのお店の中だ。さっきの女の人と三十代の男の人が無言で一心不乱にうどんを食べている。どんぶりの中にはちょっとしか汁が入っていなくて、うどんの上には大根おろしと天かすがトッピングされていた。
またしても画面が切り替わる。今度はどこかの旅館の客室のようで、二人は浴衣を着ていた。じゃあ、そろそろ。と男の人が言って女の人に近づき、女の人の浴衣の前をパッと開いた。その瞬間、女の人のの白くて大きな胸が、ぷるるん、と露わになる。
「うおぉぉぉ! でけぇぇぇ! 美味そー。喰いてぇぇぇ!!」
突然隣にいる末松くんが叫んだ。ヲイヲイ、喰いたいって末松くん。ありゃー脂肪のカタマリだぞ? と心の中でツッコミを入れている間に画面の中では男の人が女の人の帯も解いて、女の人はとうとう浴衣をすべて脱がされてしまった。
素っ裸になった女の人の肌は年齢の割には結構綺麗で、顔もよく見るとまぁまぁ可愛い。そっかー。こういうのが男の子には美味しそうに見えるんだー。とか考えていたら……
……凄かった。
再び画面が切り替わって、また二人がうどんを食べている。うどんには最初と同じように大根おろしと天かすがトッピングされているけど、お店は最初とは別のお店みたいだ。で、ごちそうさまでした~。と空っぽになった器が映し出されて、男の人が女の人に、どぉ?満足した?って聞いたら、女の人が、うん。もうおなかいっぱい。と応えたところで映像は終了した。
映像が終わってもあたしの心臓はまだドクドク鳴ってて、あたしは気持ちを落ち着かせるために窓を開けて、深呼吸で外の冷えた空気を何度も吸った。
「どうだ? スッゲーだろ?」
ディスクドライブからDVDを取り出した末松くんはあたしの方を振り向いて言った。末松くんの目はぎらぎら輝いてて、まるで飢えたオオカミみたい。
「……うん。マジびっくりした」
あんなの初めて見た。てゆーか興奮した。あたしが男になって女の人を抱いてる気分と、あたしが女になって男の人に抱かれてる気分がして、そんで二つの気分が頭ん中でごちゃごちゃに混じってムチャクチャ興奮した。もうホントこんな気分初めて!もしこれ女の体で見てたら、今頃パンツびしょびしょだよ!
「ふっ、ふっ、ふっ。そうだろう。そうだろう。何せ櫻坂亜美の極秘流出無修正バージョンだからな……」
「え!? こういうのって普通修正してあるものなの!?」
「お前なに言ってんだよ? 常識じゃん! つーか、お前だってエロビデの一本くらい持ってんだろ?」
「持ってないよ。てゆーか、こういうの見たの初めて」
「……ま、マジかよ!?」
絶句して石みたいにカチンと固まる末松くん。
「え? え? 男子ってみんなこーゆーえっちビデオを持ってるものなの?」
「当たり前じゃん! フツー誰でも持ってんだろ」
あたしはミズキの部屋にえっちビデオがあったかどうか記憶を探ってみたけど、それらしいものを見かけた憶えはない。てゆーか、あたしはミズキと身体を交換するたびにミズキの部屋を好き勝手に探索しているので、ミズキがえっち本とかえっちビデオを持っていないのはほぼ間違いない。
「あー、ミズキやばいって。お前ビョーキだよ。」
「そ、そこまで変かなぁ?」
「絶対に変だって。このビデオ貸してやるから家に帰って復習しろ」
「嘘っ、やった、ヒャッホゥ!」
何たる棚ぼたラッキー。家に帰ったらダビングしなくちゃ!
「後はだなぁ……そうだ、これから特訓しよう」
「特訓って?」
「俺の門外不出のチョーお宝ビデオを見せてやるよ」
「……ちょ、チョーお宝ぁ!?」
思わず喉が、ごくり、と鳴った。
『赤いサンタは死んだ……』
さて、【ブラックナイトパレード】読んで寝るか!(嘘です。明日も頑張ります!)