第4話 正しい超能力の使い方 2 吉川瑞貴 編
微妙に下ネタです。ご注意ください。
あと、感想もお待ちしてます!
昼休み。ミナミの友達、ユーキ、ののか、ヒカルの3人と弁当を食べた後、食後のおしゃべりをしていたら、あと10分で5時間目。おっと、ナプキンをそろそろ交換しないと……。
「ゴメーン。ちょっとトイレ行ってくる」
いつまでも終わりそうにない話だったので、ちょっと断りを入れて席を立とうとしたら、
「あ、私も行くー」
「私も」
「じゃあ、私もついでにー」
ユーキちゃんも含めて全員が席を立った。みんなでゾロゾロいつものパターン。女子の連れションだ。そもそもなんで全員でトイレに行かなきゃいけないのかはよく分からないけど、とにかくそういうことになってるっぽい。……謎だ。
教室を出て廊下をちょっと進んですぐのトイレに。入る前にちゃんと女子トイレのマークを確認してドアを開ける。初めての時は間違って男子の方に入りかけてユーキちゃん達にメチャクチャ笑われたんだよなー。
「じゃあ、お先にー」
「いってらー」
一個だけ空いていた個室に入って扉をバタンと閉めて、タイツとパンツを一緒に下ろして便座に着席。ついでにオシッコもしておこう。音姫ボタンをポチっとな。
ジャボボーッと音が流れる。その間に放尿。そういや男子トイレには音姫ボタンって付いてないんだよなぁ~。それどころか、個室にウォシュレットが付いているのは一部だけで、男子トイレと女子トイレを比べたら、女子トイレの方が明らかに綺麗で快適になってる。男子たるぼくとしてはビミョーに男女差別を感じるんだけど、これって気のせい?
膀胱が空になったらビデ使ってトイレットペーパーで股間の雫をふき取って水で流して、お次はナプキン交換。
赤く染まり、たっぷり吸ってぐっしょり重くなったナプキンをパンツからはがして手が汚れないように内側に折り畳み、ナプキンが元々入っていたビニール製の袋に入れる。そんで、トイレの隅に設置されているサニタリーボックスにポイして蓋を閉める。そんで、新しいやつを封を切って取り出してパンツに貼り付けて完了。
はぁ。ミナミが入れ替わりの超能力を身に着けてから生理を押し付けられるようになったせいか、以前より血が苦手になったような気がするんだよねぇ。だって、去年までは包丁とかで指を切ってちょっと血が出たりしても痛ってーってだけで特に何も思わなかったのに、今は血がとても不潔なもののような感じがしてイヤなのだ。
個室を出て手を洗って外に出ると、ユーキちゃん達がトイレの前で立ち話をしながら待っていてくれた。というか、何かを見ているのか、視線がみんな同じ方向を向いている。
「ごめん。待たせたー?」
「おぉ、ミッちゃん。ねぇ、アレ見て?」
ユーキちゃんに促されて視線の先へと目を向けると、末松とミナミがスーパーボールでキャッチボールをしていた。……ちょ、ここ廊下だぞ!?とか考えていたら、ののかとヒカルが、
「ミズキくんと末松くんって、いっつも一緒にいると思わない?」
「超仲いいよねぇ。あれは絶対できてるよ」
「末松くん×ミズキくんだよね?」
こらっ、かってにカップル成立させんな!そもそも何でぼくが【受け】なんだよ!つーか、ののかとヒカルの漫研コンビはすぐ話をそういう方向に持っていこうとするし!
「末松くんは意外と【わんこ系】かもしれないよね?」
「だったらミズキくんは【小悪魔系】だよね?」
二人のBL脳が暴走の兆しを見せ始めたので、ぼくは、ていっ!と二人の頭にチョップをお見舞いした。
「ヒトんとこの家族で勝手に変な妄想すんなし!」
「フヒヒ。サーセン!」
「ナマモノ取り扱い注意!」
まったくもう。あと、ミナミの奴、調子に乗ってるっぽいから、少し釘を刺しておこう。つかつかとミナミに歩み寄るぼく。
「ちょっと、廊下でキャッチボールすんなよ。窓ガラスに当たったら危ないだろ」
「えー?大丈夫だって。失敗しないから」
面倒くさそうに振り向きながら返事をするミナミ。こいつ全然わかってない!
「あと、一時間目、数学の小テストあったと思うけど、ちゃんと出来たんだろうね!?」
「あーあれね。テストはちゃんと受けたよ」
「受けたよじゃなくて、まともな点数は取れたんだろうね!?」
「(・ω<) てへぺろ」
こんのヤロー。数学の矢神先生はテスト好きで、テストの結果が一定以下の生徒には、特別に追加で宿題を課すことで有名なのに……。
「ちょっと、誰が戦後処理やると思ってるんだよ!」
「あ~もぅ。ほんっと細かいなぁ。……えいっ!」
怒気を孕ませたぼくの抗議もどこ吹く風。それどころか、いきなり頭突きを繰り出してきた。アウチッ!瞬間ぐるりと視界が反転。目の前には女子の制服を着たミナミが立っていた。
「そっ!」
外で超能力を使うな!と声を上げようとした瞬間――、
「ちょっとミズキくん!いくらか姉弟だからって、女の子に暴力振るうのはサイテーだよ!」
いつの間にか傍らにまで来ていたユーキちゃん猛抗議。一方のミナミは、ミズキ酷いシクシク、とか言いながらわざとらしい嘘泣きをしている。図ったな!
「ゆ、ユーキちゃ、じゃなかった。奥宮さん。い、いまのは違うんだ……」
「何が違うの?私、ばっちり見てたよ!?」
だ、駄目だ。凄い権幕。取り付く島もない。眼が逆三角形になってる。そもそも超能力の説明抜きで誤解を解くなんて不可能だし……。くっそー、ユーキちゃんの横でニヤニヤした嗤いを浮かべているミナミが憎らしい!あぁ、なぜ神様はミナミにしか超能力を与えなかったんだよー。これって絶対に男女差別だよー。とか考えながらユーキちゃんの猛抗議に耐えていたら、キーンコーンカーンコーンと、昼休みの終了を知らせるチャイムが鳴った。やった、助かった!
「あぁ、もうチャイムが……。とにかくミズキくん、もうしちゃダメっだからね!」
ミナミの手を取って教室に戻ろうとするユーキちゃん。するとミナミは、
「あ、ちょっと待って……てりゃ!」
不意を突かれてまた頭突きをされてしまった。再び視界がぐるりと反転ぼくの目の前に、ぼくの姿をしたミナミが立っていた。
「じゃあ5時間目の授業頑張ってね、ミナミ」
怒りのあまり拳をプルプル震わせているぼくを尻目に、軽やかな足取りでミナミは去っていった。……ふっ、不幸だぁー!!
己はなにをやっているのだ!?……と自問自答しそうになります。でも、明日も頑張ります!