第2話 バレてはいけないぼく達の秘密 吉川瑞貴 編
今回は下ネタありません。安心ですね!
もし、よろしければ感想プリーズ!
冬の東京の風景はいつもどこかしらシュールだ。
それは、東京の上空を覆っているスモッグが太陽の光を遮り、建物とか街路樹とか歩いている人とかの影をぼんやりと霞ませ、全ての風景の輪郭を曖昧にしているせいだ。
でも、シュールといえば生理痛で朝からブルーになってる高校生の男子の方がよっぽどシュールかもしれない。あぁ、何でこのぼくが生理痛で苦しまなくっちゃいけないんだろう? どうして神様はぼくには入れ替わりの超能力を授けてくれなかったんだろう? ひょっとして男女差別? とか考えながら駅前から学校に続くだらだらと長い登り坂を歩いていると、いきなり後ろから、ばん、と背中を叩かれた。
「ふぁーすとやっぴー!」
振り返ると、それは奥宮優希ちゃんだった。ユーキちゃんはぼくとミナミが通う学校の同級生で、父親がI T関連の会社を経営する社長さんで、麻布に住む本物のお金持ちのお嬢様だったりする。あっ、でも、お嬢様といっても漫画とかアニメに出て来るみたいな高飛車で命令口調で口に手をあてて、ほ~ほっほっほ! と笑うような、そんな女の子じゃない。ユーキちゃんはポニーテイルがよく似合う、可愛くて、気さくで、いつも元気一杯な女の子なのだ。
「……やっぴー」
ぼくは力なく返事を返す。あぁ、こんな体調の日はユーキちゃんの元気が羨ましい。
「お? どしたのミッちゃん。元気がないぞー。ひょっとして女の子の日なのかなぁ?」
「……はぁ。まぁね」
ぼくが憂鬱なのは生理痛のせいもあるんだけど、ミナミに身体を乗っ取られたことによる精神的ダメージも大きい。でも、ぼくとミナミが入れ替わっているなんてことはユーキちゃんには、てゆーか誰にも口が裂けてもいえない。もし、このことがバレてしまった日には、ぼくの人生はご臨終してしまう。
「そっかー。可哀想にねぇ。よしよし」
ユーキちゃんは、よしよしとか言いながらぼくの頭を撫でて慰めてくれる。ユーキちゃん優しいなぁ。あぁ、人の同情が身に染みるぅ。
「それにしてもさぁー、毎回見てて思うんだけど、ミッちゃんって生理重そうだよねー」
「え? そ、そうかなぁー。自分ではよく分かんないんだけど……」
「絶対そうだよー。だって、私、生理とかでおなか痛くなったことないもん」
「えー? ホントにー? それ羨ましいなぁ」
ちょっと照れたように、えへへへ、と笑うユーキちゃん。
「実は私、肩がこったこともないし、便秘になったこともないんだよねー」
「……へぇ」
「あと、風邪もひいたこともないんだよー」
「…………」
「どぉ! スゴイでしょ!」
「……そっ、それはユーキちゃんがバカだからじゃないの?」
「わっ! ミッちゃんひど~い! バカじゃないよぅ! 健康ユーリョー児なだけだよぅ!!」
ユーキちゃんの駄々ッ娘パンチを背中に浴び、ぼくはさらに足を速める。
「ところでさー、ミッちゃん今日放課後空いてる?」
「うん。空いてるよ」
「じゃあさー、ライブ見に行かない? 【Doomsday MachineS】って海外のバンドなんだけど……」
「知らないなぁ。どんな音楽をやってる人たちなの?」
「え、え~と……激しい音楽……かな?」
奥歯に物が挟まったみたいな表現で言葉を濁すユーキちゃん。んん? さては何か裏があるのか?
「ふ~ん。なんか微妙な言い回しだね」
「そっ! そんなことないよ! あー、ほら、チケット代はいらないから。ネッ!」
なに!? タダですと!? それなら行って損はありますまい。
「場所は?」
「Zepp東京。開演時間は夜7時。一緒に行こ! お願い!」
胸の前で手を合わせておねだりポーズのユーキちゃん。その可愛らしさたるや男だったらイチコロだ。
「仕方ないなぁ。行きますか!」
「やっほう!」
そんな調子で色々とおしゃべりしている間に、ぼくたちの通う学校の白い校舎が見えてきた。
明日も頑張ります!




