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黒き鋼の巨人  作者: 機人
3/19

出会い

コンコンとノックの音がする。


「はい、もう大丈夫です。」


扉が開き、リリーナさんが入ってくる。


「ん、ぴったりね。良かったわ。」


「ありがとうございます。服まで頂いてしまって。」


「良いのよ。あなたの服は軍の重要資料として回収されてしまったし、直に帰ってくるとは思うけど、その間着るものがないなんてことにするわけにはいかないもの。」


「僕の服や荷物に何か?」


「…当初私たちはあなたをスパイではないかと疑っていたわ。」


「えっ?」


「あなたがいた場所ね、この要塞から離れて点在している陣地のうちの一つの敷地内だったのよ。そんなところに妙な格好した男がいたら、どうしても疑いを持って接するべき…だったんだけど。」


リリーナさんが頭に手を当ててため息をつく。


「あなたの持ち物を調べさせて貰ったけど…、私の出した結論は白ってとこね。」


「はぁ…」


「これから聴取を受けてもらうのだけれど、ありのままを話してくれて良いわ。」


「…信じてもらえるかな…。」


「それはあなたと相手次第よ。それともう一つ。あなたに合わせたい人がいるの。」


「?」


合わせたい人?誰だろう。


「失礼します。身元不明人の聴取を行います。」


「あら、この話はまた後でしましょう。それじゃあね。」


「は、はい。」


厳しい顔をした軍人に左右を挟まれ、扉を抜ける。歩いているとやはりまだ足が痛む。


「痛むかね?」


「す、すいません。」


「構わん。こういうのは、慣れていないようだからな。」


「は、はぁ。」


「おい、止まれ。」


「パーシング中佐の命令により、陣地内に侵入した恐れのある民間人を護送中だ。」


「失礼しました。どうぞ。」


「ご苦労。」


兵士が立っていた扉を抜けると延々と続くような廊下を歩かされる。


「ここだ。」


五分くらいは歩いただろうか。左に立っていた兵士がそう言って立ち止まる。


「パーシング中佐。例の少年をお連れしました。」


「ご苦労。下がりたまえ。」


「ハッ!」


カツンという小気味の良い音とともに左右の男達が敬礼し、扉から出て行く。

代わりに室内にいた男が俺を椅子に座らせ、拘束具のような者で固定する。


「私は、キャスリー・パーシング中佐だ。君の名は?」


「嶺機逡也です。」


「何故、君はあの場にいた?」


「わかりません。気がついたら、ここに。」


「気がついたら?」


「はい。俺は、東京の高校に通ってるただの学生です。普通に生活をしてて、いつの間にか、ここに。」


「君は、日本人だな?」


「そう、です。」


「なるほどな。あらかじめ君の荷物を確認させてもらったが、確かに君の証言と合致している。」


「あ、俺の荷物…。」


「心配するな、すぐに返してやる。それよりも、気がついたらここにいた、と言ったな?」


「信じてもらえるんですか?」


「…我々にも事情があってな。君の言うことを信じざるを得ない、と言うか、信用に足る証拠があると言うか。」


「証拠?」


「実際に見た方が早い。ついてきてくれ。」


横に立っていた軍人に拘束を解かれる。


「い、良いんですか?」


「言ったろう?信用に足るものがある、と。」


前を歩くパーシング中佐の後をついて行こうと足を踏み出した。


「あぁ、そうそう気をつけるがいい。そこには—」


ガツン

パーシング中佐の言葉の途中で足に激痛が走る。


「…段差があるから、足をぶつけないように…。」


「す、少し…遅かった、です。」


「…すまん。」



パーシング中佐に連れられ、エレベーターに乗り上へと向かう。


「結構かかりますね。」


「この要塞は地下にあってね。地上に出るのにも一苦労だ。」


エレベーターが止まり、外に出ると別のエレベーターに乗らされる。


「これでも、色々と考えて作られているのだが、こちらとしては面倒なことこの上ない。」


「はは…。」


この人は結構おしゃべりなのだろうか?というか、俺にそんなことを言ってしまっても構わないのだろうか。


「お、見えたぞ。地上だ。」


「あ…。」


陽の光が見えると安心する。ずっと狭く暗い場所にいたからか、やけに懐かしい感じがする。


「そうそう。」


「はい。」


「君、頭は大丈夫かね?もちろん怪我という意味でだが。」


「…言われなくてもわかりますよ。」


「なるほど。良さそうだな。」


おしゃべりというよりも、ただからかっているだけか?

…しかしそれがなんともわざとらしく、油断させてこちらの本心を引き出そうとしているように感じるのは気の所為だろうか。


「降りるぞ。今度こそ足元に気をつけたまえ。」


「…。」


…この人、絶対楽しんでる。


「ここは…?」


「新兵共が基礎訓練を受ける場所だ。」


「新兵?もしかして、俺を…?」


「それは少々気が早いな。しかし、そうなるかもしれんし、そうならんかもしれん。」


少し歩くとコンクリートが打たれた広い空間に三十人ほどの人間がいた。


「んんっ…バートリー!バートリー教官!」


「!全体止まれ!」


号令とともにそこにいた全員が直立する。


「休め!」


見事に統率が取れた行動—


「…とと。」


一人体がぐらついていた。


「これより、私が戻るまで待機!それと、横峰!ついてこい!」


「わわ…。」


タンクトップ姿のいかつい男と横峰と呼ばれた人物が歩いてくる。


「お久しぶりです!パーシング中佐!」


「ご苦労。すまないが、休憩所を借りるぞ。そしてそこの彼女も。」


彼女?女の子なのか?


「横峰、挨拶はどうした。」


「あ…パーシング中佐!横峰里沙訓練兵であります!」


…今まで得た状況を整理するに


「り、里沙…?」


「え…逡也、君…?」


どうやら、ここにきたのは俺だけではないようだ。









「以上をもって、本法廷を閉廷する。エリカ・ストライダー曹長は一階級降格ならびに訓練所での5日間の基礎訓練を命ずる。何か言いたいことはあるかね?」


「いえ!寛大なる措置に感謝致します!」


「よろしい。下がりたまえ。」


「ハッ!」


背後で重苦しい扉が閉まる。


「まあ、今回のことはそう気にするな。」


「隊長…。」


「あの状況だ。貴様の行動は正しくなかったかもしれんが、間違っていたとは言い切れん。」


「しかし…。」


「とにかく行ってこい。その後で話は聞かせてもらう。」


「了解いたしました。」


「ではな。」


隊長に対して敬礼を行う。


「それとな。」


「ハッ!」


「…訓練所だが、例の坊主がいるかもしれんぞ。」


ニタリと笑いながら隊長は姿を消した。


「…っ!」


あの男が…!


昂ぶる気持ちを抑えつつ、私は自室へと歩を進めていった。

色々とキャラが増えてきました。


そのうち登場人物をまとめたものを投稿します。

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