目覚め
「ぐ…。」
「…!目が覚めた?」
意識が覚醒すると共に、体の痛みが戻ってくる。
「ここ、は…?」
「その質問に答える前に、まずは診察させて貰える?頭痛はする?」
「はい…。すごく…。」
酷いがらがら声が出る。
「調子は良くなさそうね。名前は?」
「…し、しゅんや…。嶺機逡也です…。」
「ミネキ…?あなた、日本人?」
「は、はい…。」
「年はいくつ?」
「じゅうはちです…。」
「あそこで何してたの?」
「きがついたら…あそこにいて…。」
あの光景がフラッシュバックする。
飛び散った血、炎に炙られた独特の匂い。
「ふんふん…。分かったわ。少しの間じっとしててね。」
そう言うと、目の前の人物はライトを取り出し、目にかざしてきた。
「ライトの光を目で追って…。大丈夫そうね。意識ははっきりしてきた?」
「大分、よくなりました…。」
「よしよし。上体を起こすわよ。」
ウイィン…。と音を立ててベッドが動く。
「はいこれ。薬よ。」
トロリとした液体の入ったコップを渡される。
口に含むと、乾ききった喉が水分を求めて一気に飲み干してしまう。
「やっぱり、液化薬にして正解だったわ。」
目の前の女性が微笑む。
「ありがとうございます。…あなたは?というか、ここは?」
「私はリリーナ・バークライン。このリンド要塞の軍医よ。」
「ぐ、軍…?」
「そうよ。…じゃあ、そこで少し休んでなさい。後で事情は聞かせてもらうから。…それと。」
手首を手錠でベッドに固定される。
「こ、これは?」
「一応ね。あともう一つ、足はまだ動かさない方がいいわ。」
「…そう、みたいですね。」
ズキズキと痛む足に眉をひそめながら、目を瞑る。
「一体、なんなんだ…。」
少しすると、意識が朦朧とし、そして完全に眠りについた。
「どうだったのかね?」
「確証は持てませんが、民間人の可能性がある。」
「なんだと…?」
「し、しかし!彼は我々の陣地の外縁に…!」
「上官の会話に口を挟むな!馬鹿者が!」
「も、申し訳、ありません。」
「緊急時とはいえ、民間人に対する無許可での発砲。これは軍法会議ものだ。反省しろ。」
「…ハッ。」
「とにかく、回復次第聴取を進めてくれ。」
「了解しました。」
「頼む。…行くぞ。貴様は1日独房に入ってもらう。」
「…ハッ。」
「ついてこい。」
「すいません。少佐。」
「何か?」
「彼…もしかしたら、日本人かもしれません。」
「日本人?…おい、貴様と奴には何か奇妙な縁でもあるかもしれんな?」
「…。」
「なあ?ストライダー曹長。」
「…。」