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少女との出会い

神ファルテスが人界より放逐され、その影響が減じた今、その尖兵である魔物(ファルダー)の数も減りつつある。だが、それでもその脅威の記憶は人々の中に根付いている。


だからこそ、こうした血なまぐさい娯楽に人々は興奮し、自分達の代わりに自分達を脅かす魔物(ファルダー)と戦う者に対して快哉の声を送る。


戦いが終わると、闘技場の一角に四角い大穴が空き、階段がせりあがってくると、そこからは牛頭大男(ラタネ・ベロース)の死体を運び出すべく兵士たちが駆け寄ってくる。


それを見たエダは思う。これも悪くない、だが、それでもここは自分の居場所ではないと思う。


エダは歓声に背を向け、歩き出す。その後ろ姿を見つめるまなざしがあった。だが彼はそれに気付かないまま階段を下り、闘技場を後にする。


まなざしの主、それは使い込まれた革鎧と砂埃で薄汚れた白装束をまとっていた。


その人物は戦いの宴が終わり、闘技場を後にする人々の流れに乗る事も無く、エダの後姿をじっと見つめていた。


そこに一人の少女が現れ、その人物の外套を引っ張る。だが、相手は気づかない。それでも少女は引っ張る。それでも気が付かない


「……おじさん……ねえってば!」


少女にそう叫ばれ、ようやく白装束の人物は少女に気付く。


「君は……もしかして迷子かい?」


「違うよ」


白装束の人物の問い掛けに少女はぶんぶんと首を振る。その様に白装束は目を見張る。


なぜなら、わずか数十年前この地域が教団に支配されていた頃、女子供は教団によって尖兵を生み出す儀式に使われるため、頻繁に誘拐されていた。


だから今の時代、子供が一人で出歩くことなどそうそうない。


「じゃあ君は一体?」


「ラト、ラトゥーニ・スリエード」


「スリエード? あの有名なスリエード商会?」


「うん、そうだよ」


問い質す白装束に対し、気を悪くする様子も見せずにうなずく少女。スリエード商会といえば一代で財を成した冒険商人であり、先の戦争においてもこの地を収めるフォルト・ガシオン公に援助をした人物。しかし……


「……そのスリエード商会の子がどうして私に声をかけたのかな?」


その問いに少女……ラトは視線をエダの消えて行った方向に移すと……


「おじさんがあの人をじっと見ていたから。

……あたしもあの人の事を気にしているの」 


「どうして?」


じっと遠い彼方を見つめる。その横顔に白装束はそう問いかけると、ラトは振り返り……


「なんかね、こう……普通だったらさ、相手から攻撃されたら避けようとするよね? でも、あの人は違うの、自分から危険に飛び込もうとしている。なんか死に場所を探しているような感じ」


その指摘に白装束は何度もうなずく。

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