表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
虹色の英雄伝承歌(ファーレ・リテルコ・ポアナ)紅刃の章1~復讐の果て、さまよい続ける死神剣士~  作者: 新景正虎
第四章 輝く生命の息吹受け、今、燃え上がるは真紅の炎
61/64

託されし願い

一方、エダ・イスパーの心は虚無の中をさまよっていた。


故郷も家族も、恩人さえも失った彼の心にはもはや何も残ってはいない、そう彼は思っていた。


しかし…そこに一筋の光が瞬き、ふと彼は顔を上げる。 


そこにいたのは自分の方へと迫りくる幾多の魔物と、その間に立ちはだかっているのは一人の少女。


彼女は震える手で剣を握り、魔物ではなく剣の重さと戦いながら、全てを失った自分を魔物たちから守ろうとしている。


なぜ?どうして?そう思いながら、その頼りなげな後姿を見た彼の脳裏にあの日の光景がよみがえってくる。


そう、目の前にいる少女はあの時の自分自身の姿。それを見た彼の胸中に今までどんなに考えても思い出せなかったあの日、ルアンナが発した最後の言葉が鮮明によみがえってくる。


それは…それは……



「生きて…お願い…あたしたちの分まで生きて」


それが思い出された瞬間、彼の脳裏にこれまでの出来事が蘇ってくる。


自分を救ってくれたガシオン公。


世界の広さを伝えてきたあの白い装束の詩人。


忠告してくれた名も知らぬ剣闘士。


自分に命とそれ以外の物を託したスクード。


そしてこの少女。思えばこの少女はずっと自分を見ていたような気がする。


分かっていた。本当は分かっていた。皆が自分を生かそうとしていた事を。しかし心が耐えられなかった。故郷も親も、親しい人を誰も守ることも救う事もできず、皆死んでしまった。なのに自分だけが生きている、そのことに耐えられなかった。


だから、せめて仇を討とう。仇を討ってから皆のところに行こう。そう考えたのかもしれない。


だが、スクードが、村の皆が、ルアンナが…自分に対して生きる事を望んだというのなら…このまま彼らのところに行くわけにはいかない!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ