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戦舞踏への誘い

「……惜しいな」


「惜しい?」


 その呟きにエダが聞き返すと、ガシオンは小さくうなずき、


「貴公、私の元へ来ないか? その腕を剣闘士として振るうといい」


「剣闘士だと?」


「……知らぬか? 多くの人々の前で人、あるいは魔物と戦う者たちの事だ」


 その説明にエダはしばし沈黙し、


「……つまり、見世物になれと」


「そうだ」


 そのガシオンの言葉に再びざわつきだす兵士たち。


「……皆も聞いたであろう? この者とてこの戦の被害者。それに腕の立つ傭兵が再び帝国の傭兵となるよりはましではないか?」


「それはそうですが……」


 ガシオンの言葉に顔を見合わせあう兵士達。それを見た彼はエダに向かって問いかける。


「どうだ? ここで魔物の糧となるよりは楽な死に方ができるかもしれんぞ」


「……いいだろう。好きにすればいい」


 淡々と答えるエダにうなずくガシオン。


「決まったな。死神エダ・イスパー!貴公の身はこのフォルト・ガシオンが預かる!

貴公が自らの死を望むというのなら、剣闘士として華々しく戦い、死んで見せよ!」



「戦女神『フェテシュ』よ、戦いで倒れし兵士たちをあなたの元へと送ります、審判と安らぎを」


 戦士たちが信仰する戦いの女神『フェテシュ』に仕える神官が祈りをささげ、その力を借りた浄化の炎を放つ。


 それは戦いで倒れた兵士たちが魔物たちの糧とならぬよう、あるいは邪悪な者たちの魔術の犠牲とならぬようにするための弔いの儀式。


 肉の焼けるにおいが辺りに漂う。


 顔をしかめる者もいる兵士たちに対し、フォルト・ガシオンとエダはそれを眺めていた。


「女神『フェテシュ』は誇り高い。浄化の炎をもってしても卑劣な行いをつづけたあの男に安息が与えられることはないだろう、冥府へと送られたのち、冥府の神エダの元で裁きを受ける」


 燃え盛る浄化の炎と煙。煙は風を受け、雲の切れ目から日が差し込む天へと伸びていく。


「その後、人ならざる者へと生まれ変わり、その転生はその罪が洗い流されるまで続くに違いない」

 その言葉にもエダは眉を動かさない。ただ、黙って炎を見つめている。



 生と死、審判と裁きをつかさどる神エダ。故郷を焼かれ、復讐を誓ってその名を名乗りし青年。

 名高き英雄との出会いによっても、その空しき復讐は終焉を迎えずに幕が下り……そして再び幕が開く。


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