曇りなき刃の輝き
さて、どうする。
エダの実力がここまでだというのなら、手を抜けばこちらがやられる。それともいっそのこと…
それは前から思っていた事。だが、彼にも自由を求める理由がある。
と、ふとスクードの脳裏に幾人かの顔が浮かぶ。
生き別れになった自身の妹とその娘。かつて共に戦った傭兵団の仲間たち。敗残兵である自分達を受け入れてくれたガシオン公、それにあの白装束の詩人、そして……
その時、それは唐突に訪れた。
まるで暗雲の切れ目から日差しが差し込んだかのように、ある考えがスクードの脳裏に浮かぶ。
彼はふっと息を吐く。彼の周りには人が集まってくる。たとえ自分がいなくなっても生きていさえいればいつか彼は気づいてくれる、誰かが……気付かせてくれる。
だから、だから…もう迷いはない。後は、やり残したことの決着をつけるだけ。その先は…彼次第!
「行くぞ!」
そう宣言すると初めてスクードの方から攻勢に出る。
ぶつかり合う剣と剣。沸き立つ観客の歓声が耳に届く。
技はほぼ互角、後は体力の差。
だが年を食っている分、自分の方が消耗が早い。全力が出せるうちに決めなければ。
機会は一度だけ。
何度目かの打ち合いの後、エダの動きがわずかに揺らぐ。
それは二週間前の予選会の時と同じ光景。あの時の相手はあれに勝機を見出し、そして敗れた。
その轍は踏むまいとスクードはより確実な勝利を得るべく更に攻め立てる。大きく態勢を崩すエダ。
…今だ!…
その隙を狙い、スクードは渾身の力を込めて剣を振り上げる。
もはやためらいはない、エダの命を奪うという事は彼の望みであり、彼を救う事なのだから。
すべてを終わらせるためにスクードは刃を振り下ろす!
だが…次の瞬間スクードが味わったのは手にしていた剣の重みの喪失感、そして自分自身の中から外への衝撃だった。




