知らされた事実
「ガシオン様」
「どうした」
兵士の一人がエダのそばにある剣が突き刺さったままの死体を指さす。
それはエダが追い求めていた『ブル・フレッチャー』の死体。
「む……貴公がやったのか?」
その問いかけにエダは淡々と答える。
「ああ、そうだ。仲間の敵だと思うのなら斬ればいい、逃げも隠れもしない」
そういうとエダは立ち上がり、両手を広げて無抵抗を表す。
今ここで兵士たちの誰かが槍を突き出せば…漠然とそう考えながらエダは目を閉じる。
だが……
「……そうか、では真相は闇の中か」
その言葉にエダは目を開け、ガシオンと呼ばれていた指揮官を見上げる。
「真相だと?」
「そうだ、この戦いのきっかけとなったラウザ村の焼き討ち。それは帝国の仕業ではなく、領民に対して重税を課していた公爵が、自らの手勢を使って手を下したのではないかという疑いがあってな。密偵を放って調査をさせていたら、この仮面の男が公爵の手先だという情報を得たので行方を追わせていたのだ」
それは、エダにとっては寝耳に水だった。だが、確かにあの日、自分とあの少女は公爵の行いを国王へと訴えるべく、焼き討ちにあった村を……
しかし、すべては終わった事……
「だが、この男が死んだというのなら真相は闇の中か」
「……それは事実だ」
「なに」
エダの言葉にガシオンが問いただす。
彼は語る、あの日の事を。自分の故郷が何者かによって焼かれた様を。そしてその集団を束ねていた仮面の男を敵として追い続けていたことを。
その事をエダは、彼自身が驚くほど雄弁にガシオンに語った。
「……そうか、貴公はラウザ村ただ一人の生き残り……それで、貴公はこれからどうする」
エダの話を聞き終えたガシオンが短い沈黙の後、そう問うとエダは……
「これから? そんなものはない。俺は帰る場所も生きる理由も失った。これ以上生きていても仕方がない」
その言葉を聞いたガシオンはしばらくエダの顔を見下ろしていたが、やおらに口を開く。