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心の迷宮

「エダとの事?」


「ああ、ずいぶん熱心に通っているみたいだし、何かあったんじゃないかなって」


翌日、宿に顔を出してきたラトにビアトロは尋ねてみた。


聞いて見ると彼女は以前、エダに助けられたことがあるという。


しばらく前にレトンが隣町に商品の買い付けに行く際、ラトも同行したのだが、その際護衛として剣闘士の何人かが駆り出され、その中にエダもいた。ラトはそれ以上詳しくは話してくれなかったが、その様子からすると何かあったらしい。


本人が口にしたくない以上、追及するわけにはいかない。ビアトロはそれ以上は尋ねはしなかった。

では、自分はどうなのだろう。


ビアトロは懐から本を取り出し、びっしりと文字で埋め尽くされた紙をめくる。


昔の自分。読み書きを知った自分がまず読んだのは英雄たちの物語だった。


そこに書かれていた数々の神話や物語に胸躍らせた事を覚えている。


自分の手で新たなる英雄たちの活躍を書き記し、後世へと伝えたい。


そう思ったからこの世界への道を進んだ。


ビアトロは紙をめくる手を止め、そこで本を閉じる。


教団が支配していた時代ほどではないにしろ、今だこの世界には魔物(ファルダーが住まい、辺境の地に住む者は襲われることもある。


それらから人々の暮らしを守る意味でも腕の立つ戦士、冒険者はいくらいても困ることは無い。


その点からいってもやはり彼の存在は惜しい、彼が生きていれば後世に伝えるに足るだけの活躍をしてくれるだろう。


だが、すべてを失った彼がこの世に対して何の未練もないというのも分かる。


彼に生きてほしいというのは自分を含めた周囲の勝手な願望に過ぎないのだろうか。


ふと、ビアトロはガシオン公の存在に思いを巡らせる。彼も同じ様に考えているのだろうか。だから彼を手元に置いているのかもしれない。


彼が目覚めてくれることを信じて。


それとも、ただの戯れなのだろうか……

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