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心に刺さる一本の棘

「いい娘さんですね」


「かわいい盛りです、しかし…」


 そこでレトンは一旦、言葉を区切り…


「…あの子も数年後には私の元から去ってしまいます」


 意外な言葉に食事に伸びていたビアトロの手が止まる。


「なぜ?」


「…取引のある東国のある商人から息子の許嫁にと言われてね」


「それを受けたと」


 いわゆる政略結婚という奴か。


 そう思いつつもビアトロは口には出さない。


「これから商いをつづける以上、東とのつながりは必要ですし、あの子も納得しています」


 それは本当だろうか。ビアトロはその事をレトンに問い質したい衝動に駆られたが、自分は客人に過ぎない事を思い出すと、好奇心をぐっと飲み込み、話題を変える。


「それにしても、あの子はずいぶんと熱心ですね。商売の事とか道具の事とか、あれこれ気をかけてもらいました」


 ビアトロはラトについて気が付いたことを尋ねてみた。


「それは…」


 だが、またしても口ごもるレトン。ビアトロとしてはそれほど深刻な話題とも思えないのだが…


「…今から、およそ半年くらい前のことです。この町にとある冒険者の一団が滞在しまして、その中の一人がずいぶんと気に入ったようでとても懐いていました、

 しかし南の砂漠への探索へと赴き、そこで命を落としたそうです」


 海を越えた南にはかつて存在したという古代王国の遺跡がいまだに存在しており、そこには莫大な財宝が眠っているとされている。


 だが、同時にこの辺りに生息する魔物(ファルダ―)とはくらべものにはならないほど強力な怪物も生息しているとされ、鍛え抜かれた一流の冒険者たちの一団をもってしても探索は命がけだという。


「…無論、冒険というのは危険が伴うもの。十分な備えをしたとしてもあえなく命を落とす事もありえます。でもラトはもし、自分がもっと詳しかったら、強く言っていたらそうはならなかった。そんな思いを抱いているのかもしれません」


 レトンの言葉にビアトロは無言でうなずく。

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