港町『スカータ・マレ・スタ』
まぶしい。日の差さないビエト・ラディオ(闘技場)から出ただけではない。傾きつつある太陽の日差しが直接目に飛び込んできたからだ。
ビエト・ラディオ(闘技場)の南口から出たビアトロとラトに先導されて進む。
この『スカータ・マレ・スタ』は大陸の西を統治する『オヴェ・スタフィ王国』最大の港町。
闘技場の周りは大商人たちの許しを得た商人たちが店を出す自由市場となっていた。
大勢の商人たちが露店を構え、仕入れてきた商品を並べて商いをしており、大勢の人々でごった返していた。
「この馬は『シュベーロス山脈』の厳しい山地で育てられたんだ。旅のお供にどうだい」
「『ノル・レインテ』産の塗り薬だよ。魔法の知識が無くても傷口に塗るだけで痛みが和らぎ、治りも早いよ」
他方では品定めをする冒険者と思しき客に声をかける商人も…
「なあ、あんた。ずいぶんいい体格しているな。冒険者かい?」
「ああ」
「どうだい、今度うちの商隊の用心棒になってくれないか、今度東のほうまで行かないといけないんだ」
「いいぜ、旦那、いくら出す」
「そうだな…」
そんなやり取りがされる一方で売り物を見ているまた一人の男。たくましい体格の割には腰に下げている剣はビアトロの剣より刃が短い。
おそらく普段は大型武器を振り回す重武装の戦士だが、今は最小限の装具だけを身に着けているのだろう。
そんな光景を横目に見ながらビアトロはラトについていく。