なんでも相談受け付けます。
足音で目が覚める。
午前9時15分、いつもの人が俺の事務所の階段を上ってくる足音。
ガチャリ と機械的な音が鳴り響き、音の鳴るほうに目をやると少し恰幅の良い男がビニール袋を携えて部屋の中に入ってくる。
「おう、水悟起きたか」
部屋に入ってきてビニール袋の中身をテーブルの上に出していく。
「おはよ。俺明太子」
コンビニで買ってきたであろうおにぎりを1個俺のほうへ投げて寄越す。
その包装を解いて、ねむいまま頬張る。
すこしピリっとした明太子の味が口の中を刺激してくれる。
「あとこれもだろ」
そういって安いチョコレートバーを1本投げてくる。
「せんきゅ。 で、今日はなんなんだ?」
チョコレートバーを受け取り、こちらの包装を破る。
かじりつくと吐きそうになるほど甘い香りが口の中に広がり、ナッツとキャラメルとチョコの合わさった味が口の中で混ざりあう。
「まあ、テレビ見ればわかるぞ。昨日からずっとこのニュースばっかりだ」
そう言ってテーブルの上にあるリモコンを操作し、俺が寝ていたソファの正面にあるテレビの画面が映る。
テレビの画面ではリポーターが忙しない雰囲気を醸し出しながら、必死で何かを伝えようとしている。
「こちらが遺体の見つかった朝霧邸です!どうやら、近所の人たちもあまりこの家には近付かないそうです」
「この事件の犯人が知りたい。被害者は朝霧邸の当主、朝霧邦生七十二歳。家族構成はこうなっている」
そう言って恰幅の良い男が俺に紙を一枚渡してくる。
朝霧家って遠井町の有名な名家じゃねえのか? 政治家とも繋がっているとか聞いたが
妻の恵利子四十四歳、養子娘の春香十九歳。 ……?十九歳?
「周りに不審な人物はいたか、誰か恨みを持っている人間がいたか分かる?」
「いや、特に居なかったはずだ」
恰幅の良い男は少し考えて呟く。
「……うーん、そうだな。これは
妻の恵理子が不倫をしていて、不倫関係の男と一緒になる為に当主を殺し
遺産を継いだら 邪魔になった娘を殺す
とかあるんじゃないか」
俺が言い終わると同時に、男は携帯をすぐに取り出しどこかに電話をし始める。
「早く出ろ!!!!クソッ!!!」
と苛立ちを見せたが、相手が電話に出るや否や
「おら!加藤!朝霧恵理子の身辺調査をしろ!不倫関係のある男が必ずいるはずだ!それと、娘の春香を保護しろ!」
と怒鳴りつける。
「理由?そんなんどうでもいい!!早くしねえと娘が殺されるぞ!かならず不貞の証拠を挙げろ!それと必ず殺した証拠もあるはずだ!とにかく探せ!」
そう言って通話を切る。
「まあ、全部俺の予想なんですけどね」
「その予想が今まで全部当たってるから怖いんだよ。今回も無事事件解決だな」
「解決したのは俺じゃないけどね。じゃ、情報料をいただきますか」
「明太子のおにぎりとチョコレートバーで満足しとけやっと言いたいが、お前にはかなり世話になってるからな おらよ」
そう言って胸ポケットから出した封筒をテーブルの上に置く。
「探偵ってのも大変だね。俺はやりたくねーや」
封筒の中身を見る。十万円か、適当に話をしただけで十万もらえるなんて幸運だよなあ。
「なんでも相談所って探偵みたいなモンだがな」
「ええ、なんでも相談聞きますよ。 それが 椎名水悟の なんでも相談所 ですから」