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その後、静かになった大広間の時間は過ぎて行き、間も無く午後十一時五十九分に成ろうかとしていた。
「もうすぐ時間ですね」
ティナがお代わりしたお茶を飲みながら呟いた。
「そうね、でもこんなに密集してて犯行を行えるのかしらね?」
お茶請けのクッキーをかじりながらジュディが言った。
「姉さん、私怖いです‥‥」
ルーニアが顔色を青くしてティナに言った。
その時、柱時計の針が十一時五十九分を指した。
数秒の沈黙の後、妙齢の女性ラナが安堵の溜め息とともに言葉を吐いた。
「‥‥どうやら悪戯だったみたいですわね?」
隣に座っていたエリザベスが笑いながらラナの言葉に返す。
「ですよね、でも達の悪い悪戯でしたね」
その時、セバスが何かを思い出して叫んだ。
「そうでした! その柱時計は一分程遅れています!」
セバスの叫びに全員が目を向けた時、零時を告げる柱時計の音が雷鳴と共に響き渡り、部屋の電気が消えた。
客達の悲鳴が響き渡る。
一分程で電気が点き、全員が周りを確認する。
「皆無事か!?」
ホムズの叫びに各々確認をしていた時、メリルが叫んだ。
「‥‥っ! 一人足りません!」
「何だって!」
ホムズが確認を取ると、確かに一人足りない。
「あの男の人が居ない!?」
ワソトンが叫んだ。
「‥‥そう言えば、彼の名前は何だったか‥‥」
ホムズが皆に目を向けて訪ねる。
しかし誰も答えない、館の主であるアルフレッドもセバスも、何故か知らなかった。
その時、応接間の扉が開く。
そこには見覚えの無い人物が立っていた。
「だっ! 誰だ!?」
主であるアルフレッドが叫ぶ。
「‥‥伝言は伝えてあった筈だ」
瞬間、部屋の中に緊張が走る。
「貴様があの反抗予告を書いた犯人か‥‥」
ホムズが謎の人物に向けて言い放つ。
「‥‥‥‥‥‥」
謎の人物が無言で部屋に入り、歩み寄る。
部屋に居る全員が身構えた。
「ルシアさんが言った通り、外部犯でしたね」
ティナが身構えながらルシアに言った。
「‥‥やはり、何か引っ掛かりますね‥‥」
ルシアは姿見に書かれていた文字を思い出しながら呟いた。
「あの男を‥‥殺したのか?」
アルフレッドが謎の人物に聞いた。
無言で近付いていた人物の足が止まる。
そして、その口を開いた。