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アルフレッドとの邂逅を終えた四人は、執事服の男セバスとメイドのメリルに案内され其々が客室へと案内された。
濡れた服から用意された服へと着替え、濡れた服をメリルに預けた四人はセバスに連れられて昼食の用意された会食場へと案内された。
会食場には、アルフレッドの他に七名の人が座っていた。
「ふむ、セバス‥‥カイトはどうした?」
アルフレッドがセバスに訊ねた。
「カイト様は何やら体調が優れないらしく‥‥お部屋にて食べられるとの事です」
セバスの言葉に、アルフレッドが溜め息を一つ溢して席に座る面々へと向き直る。
「愚息が体調を崩しているらしく、この場に揃った者で昼食を始めたいと思う」
アルフレッドの言葉に皆が頷くと、食前の祈りを捧げた後会食が始まった。
時折会話を交えながら粛々と食事が進む中、それは唐突に起こった。
「旦那様!大変です旦那様ァッ!」
メイドのメリルが勢いよく会食場に入ってきた。
「騒がしいぞメリル! 皆様が食事中だ!」
セバスがメリルを一喝する。
「セバスさん! 大広間に‥‥!」
カイトの部屋へ食事を運んだメリルが、大広間へと立ち寄った時に何かがあったらしい。
メリルがセバスを連れて大広間へと向かう。
「‥‥皆申し訳無い、食事を続けよう」
アルフレッドが促した。
食事を終えた辺りでセバスが戻ってきて、何やらアルフレッドに耳打ちをする。
セバスに話を聞く内にアルフレッドの目が見開かれてゆく。
「皆、申し訳無いが大広間へ集まってもらえぬか」
アルフレッドの申し出に、ティナ達四人と会食をしていた七名が会話を中断して大広間へと向かう。
辿り着いた大広間は、飾り気は無いが所々の家具の質の良さが高級感を醸し出していた。
「アルフレッド様、あちらです‥‥」
セバスがアルフレッドへと声を掛け、メリルが青い顔をして見詰める大きな姿見へと促した。
姿見には赤い文字でこう書かれていた。
「今夜、十一時五十九分、だれかがしぬ」
ティナとジュディ以下 館の人間が驚愕した。
瞬間、再び雷が鳴り薄暗い部屋を光が覆う。
大広間には、緊張感が溢れていた。
「今夜、十一時五十九分、誰かが‥‥死ぬ?」
ルーニアが呟いた。
その時、会食場に居た内の一人の白衣を着た老人が笑いながらアルフレッドへと言葉を向けた。
「ヒッヒッヒ‥‥これは何かの余興ですかなアルフレッド様?」
問われたアルフレッドが白衣の老人に言い返す。
「いえ、我の預かり知らぬ事ですガリバ医師」
アルフレッドの言葉に、今度は妙齢の女性が話を切り出す。
「それでは、これは悪戯では無いと仰るのですか? アルフレッド卿?」
「少なくとも、我がカーマイン家の者はこの様な事は致しませんよ、ラナ様」
ラナと呼ばれた婦人が、気味が悪いですわと呟きながら扇で口許を隠した。
「では、これは一体‥‥」
癖の強い髪を七三で分けている青年が呟く。
「バストール君、これは恐らく‥‥殺人予告だろう」
癖毛の青年バストールにうらぶれた中年の男が言った。
「殺人予告!? 本当ですかホムズさん!」
中年の男ホムズに向けて少女が叫ぶ。
「ええ、エリザベスお嬢さん、間違いなく」
ホムズがエリザベスに向けて断言した。
「ワソトン君、私の鞄を持ってきてくれたまえ」
ホムズが隣に立つ男、ワソトンに頼む。
「はいホムズさん、解りました」
ワソトンがホムズの部屋へと向かった。
「‥‥今は何時でしたっけ」
今まで発言しなかった男が、そう言った。
「‥‥十三時八分、か」
ホムズがそう呟き、思考にふける。
「なんか、面倒な事になりそうね」
ジュディが三人に向かい聞いた。
「やはり、このメンバーではこうなるのですね」
ルシアが何かを確信しながら言い切った。