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稲光が轟き、暗雲にその佇まいを覆われた古びた洋館が姿を現す。
「今夜、十一時五十九分、だれかがしぬ」
でろれろれーん、と背後に効果音でも現れそうな状況の中、楳図かずお風味の表情で、ティナとジュディ以下 邸の人間が驚愕した。
瞬間、再び雷が鳴り薄暗い部屋を光が覆う。
部屋にはティナ、ジュディ、ルーニア、秘書のルシアの四人と、館に住む人達が集まっていた。
事の発端は、ルーニアが商店街の福引で温泉旅館の二組ペア宿泊券を当てた事から起きる。
「え? 温泉旅館ですかルーニアさん?」
たまたま銀龍酒家に食事に来ていたルシアにルーニアが声をかけ、ルシアがなぜ私にと言っ表情で答えた。
「はい! 店長にも声を掛けたんですけど‥‥」
メイシンは今日からロゼッタが主催する晩餐会の為に、新しい献立を考えるらしく二週間は動けないと言って断っていた。
「ルシアさんも晩餐会に立ち会われるなら無理かも知れませんが‥‥」
ルーニアが恐る恐る聞いた。
「私は昨日から、十日間程溜まっていた有給が消えない内に消化しなさい、と言う市長命令で休暇を頂いておりますよ」
目を細めてルーニアに笑いかけるルシア。
「ホントですか! ‥‥迷惑で無ければ一緒に行きませんか?」
ルシアが再度聞き直した。
少し考えた後、ルシアが返事を返した。
「ええ、お邪魔で無ければ是非御一緒させて頂きます、御予定は何時からですか?」
予定を聞いてきたルシアに、少し気まずそうにしたルーニアが答えた。
「すいません‥‥急なんですけど明日の朝から出発なんです」
ルシアが微笑みながら「あら、それは急いで用意しなくては」と言い、食事を終えた後詳しい時間と集合場所を訊ね自宅へと支度に戻った。
明くる朝、銀龍酒家の前にはティナ、ルーニア、ルシアの三人が立っており、なかなか出てこないジュディを待っていた。
暫く待つと、漸くジュディが現れる。
欠伸をしながらゆっくりと歩くジュディに、ティナが怒鳴る。
「ちょっ! ジュディさん! 朝の待ち合い馬車の時間が来ちゃいますよ!」
慌てるティナを見ながらジュディが言う。
「慌てないでよティナちゃん、待ち合い馬車は逃げないわよ?」
「逃げないけど出発するんですよ! 時間が来たら!」
今だ眠気眼のジュディの手を取り、待ち合い馬車の元へ走り出した。
何とか出発時間に間に合った四人は、他の客と共に幌馬車に乗り込む。
目的地まで時間があった為、馬車の中では世間話に花が咲いた。
目的地近くの街道に来た馬車の業者に、この辺りで降りる事を伝えた四人は荷物を卸し、去って行く幌馬車の客達に手を振って見送った。
「さてと、目的地まではこの横道に沿って行けば着くみたいですね」
ルーニアが案内地図と道を見比べながら言った。
「一本道ね、迷い様が無いわねこれ、まさか地図もある一本道で迷わないわよね?」
ジュディが何故か迷う事前提で話をする。
「不吉な事言わないで下さいよジュディさん!」
ティナが、このパターンは‥‥と、嫌な予感を覚えながらジュディを批難する。
「あ、これはいつもの面倒事が起きるパターンですね、皆さん得意の」
ルシアが無理矢理フラグに持っていった。