2
その後、中年をボコボコにした後 簀巻きにして外に放り出して、何事も無かったかの様にジュディの局地破壊兵器を破壊するメイシンと、悲しみに打ちひしがれるジュディの図と言う普段の銀龍酒家へと戻っていた。
時は過ぎ【爆裂!フューゾル市大調理大戦】当日となる。
大会会場は、市民公園の広場であり本日は快晴である。
「お集まりの皆さん! いよいよ【爆裂!フューゾル市大調理大戦】のお時間がやってまいりました!」
マイクを片手に実況の男が嬉々として言った。
「実況はお馴染みの【永劫なる語り部】ターナカがお送りします!」
「永劫なる語り部って誰だよ?」
「ターナカって聞いたことねぇよ」
客席からはターナカを知らないコールが響き渡る。
「本日はゲストに市長さんと、その秘書さんに来ていただきました! いやぁ、お二人共お美しい」
市長のロゼッタと秘書のルシアがスーツ姿でゲスト席に座っている。
「あの二人ゲストで来てるんですねぇ」
ティナが二人を見てからジュディとルーニアに話し掛ける。
「ロゼッタさんとルシアさん、相変わらず格好いいですね」
ルーニアがティナとジュディに飲み物を手渡しする。
「式典とかに参加しないといけない仕事とかダルく無いのかしら」
渡された飲み物をストローで吸い上げながらジュディが呟いた。
「それでは、本日の参加者のご紹介です!」
ターナカが進行を続ける。
「先ずは昨年の大会の覇者! 紅蓮の炎を自在に操る地獄よりの使者! 相対した相手はそのオーラに身動きを止めると言うフューゾル最強の男! 絶対覇者ゴーギンだぁあぁっ!」
紹介された男、ゴーギンが片手を高々とあげる。
観客は大興奮である。
「えっと‥‥料理大会ですよねコレ?」
ルーニアが困惑しながら二人に訪ねる。
「‥‥そうね」
「‥‥うん」
ジュディとティナが何とか返事をした。
「二番手に登場するのは、ファトゥナート大陸のグランドチャンピオンッ! 【滅殺の修羅】の異名を持つ名実共に頂点に立つ男、東西南北必殺行脚! ゴーギンに引導を渡すためにルーベルアノーから遥々やってまいりました、ゴッホーだーッ!」
その紹介に、会場がゴッホーコールに埋め尽くされる。
そのゴッホーは、ゴーギンを見下ろすように上から目線で見る。
ゴーギンがゴッホーを睨み打ち震える。
「‥‥なんですかコレ」
ティナがポツリと呟いた。
その後も紹介が進み、メイシンの紹介となる。
「さあ、最後の挑戦者は‥‥おおっと!? なんと市長さんからの紹介での特別枠です!」
ターナカが興奮する。
「その姿、妖艶にして淫靡、妖しい魅力は数々の男達が魂を抜かれてきた事でしょう!」
「いや、メイシンさんの紹介が容姿の話ばっかりなんだけど‥‥」
ターナカの偏った説明に、ティナがゲッソリする。
「スリットの入ったドレスから見える太ももがまたイヤらしい! 踏まれたい! あの脚に踏まれたい!」
遂にターナカの願望が入り始める。
「‥‥っコホン、失礼しました‥‥十二カ国連合で、その名を知らぬ者は居ないと言う料理人! フューゾルでは調理師免許を持っていませんが、市長の話では十二カ国連合での免状許可を得ている特級厨師! 銀龍酒家オーナー【美しき麗しの女マスター】メイシン様だぁあ! メイシン様!ターナカのマスターにもなって下さい!」
紹介が終わりメイシンが歩いてくる。
普段のメイシンと違い髪を調え、龍の刺繍を誂えた艶やかな照りのある純白のチャイナドレスを身に纏っている。
ただし、眠そうな目とキセルは変わらずである。
「うわぁ、店長綺麗‥‥」
ルーニアがウットリとしながら言った。
「普段からああしてれば良いのにねぇ」
ジュディもルーニアの意見に同調した。
「さあ、各人準備が整ったようです! まもなく【爆裂!フューゾル市大調理大戦】開始となります! メイシンサマガンバレ」
ターナカが最後に小声で呟きながら、まもなく【爆裂!フューゾル市大調理大戦】が開始されようとしていた。