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「は? 殺す? 何を言ってるのか解りませんが、確かに真夜中の来訪等、礼を失していた事は謝罪致します、カーマイン卿」
そう言って謎の人物が胸に手を当てて礼をする。
「お初にお目に掛かりますカーマイン卿、私はダーレ=カガシヌと申します、良しなに‥‥」
部屋に沈黙が訪れる。
その時、再び部屋のドアが開いた。
「いやー、トイレ我慢出来ませんでしたよ、アッハッハ」
名前が解らない男が笑いながら入って来た。
「‥‥恥を忍んで人が居ない時間にカーマイン卿に融資を頼みに来たのですが、一体何事ですかな?」
その言葉に、沈黙を破り声を出したアルフレッド。
「えっ‥‥えっと、鏡に書かれた文字の意味は?」
アルフレッドの疑問にダーレが答える。
「なんの話か今一解りかねますが、あまり外聞の良くない話でしたので使者には直接伝えず文章で、尚且つ簡潔に解りやすい様に伝える様にと申し付けたのですが‥‥」
そこで、ルシアが得心を得たと言う表情で口を開いた。
「成る程、どうもそのままの意味で捉えにくいと思いましたが人名でしたか」
この一言が、一連の事件に終止符を打つ決め手となった。
***
フューゾル市庁舎の市長室、今ここにはティナ達四人とロゼッタがいた。
「‥‥それで?」
何故か呆れた表情のロゼッタが四人に聞き返した。
「だーかーらー、お陰で温泉入れなかったんだって」
ジュディが唇を尖らせてブー垂れた。
「いや、私は事の顛末を聞いたんだけど‥‥」
温泉に入れなかった不満をぶちまけるジュディに、ロゼッタが冷たい視線を向けた。
「結局、使者の人が文章を書く事が苦手だったみたいであんな騒ぎになったらしいです」
ルーニアが答える。
「なんでそんな奴を使者にしてんのよ、そのダーレって人は」
ロゼッタが尤もな意見を言った。
「それで、同じ貴族で金回りの良いカーマイン家に金の無心に来たと言うのが顛末ですね」
疲れた表情でティナが続けた。
「ふーん‥‥ルシア、折角の有休が無駄になったわね?」
ロゼッタが卿見なさそうにルシアに話を変えて聞いた。
「いえ、皆さんと一緒に行動出来て楽しかったですよ」
にこやかに笑いながらルシアがロゼッタに言った。
「そう、なら良かったわね‥‥所で一つ気になったんだけど、アンタ達フューゾル国内に居たのよね?」
ロゼッタの言葉に、四人が何を言ってるのかと言う表情になる。
「ルシアが気付かないのが不思議だけど‥‥」
そこまで言って真面目な表情に変わる。
「フューゾルは貴族制じゃ無いから貴族なんて存在する訳無い筈よ、アンタ達誰に何処で会ってきたのよ?」
存在しない存在に存在しない場所、とロゼッタは言った。
「「「「えっ?」」」」
【カーマイン達の夜】おしまい
最後だけ世にも奇妙な風味にしてみました( ・∇・){第二話おしまいです