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俺(の)小説  作者: 木下秋
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同窓会

 同窓会の案内が届いた。


 飾り気のないテンプレートな印刷文を裏返すと、宛名が手書きで書いてある。見覚えのある、お世辞にも上手いとは言えない男の手書きの文字。中学の時の友人、H氏によるものだ。


 H氏は一、二年時に同じクラスで、当時特に仲の良かった友人の内の一人だった。身長が百八十幾つあって、性格は明朗快活。それでいてブラックユーモアもあって、くだらない話をよくして笑いあった。頭脳は人並みだったが、怠けず、地道にやるタイプ。リーダーシップ、責任感もあり、三年間学級委員をやり通した事で教師からの信頼も厚かった。中学卒業後は地元の工業高校へ通い、高校卒業後は驚くようなところへ就職した。日本人なら誰でも知っているような会社だ。


 同級生だった頃はそれこそ毎日のように会っていた。夏休みに入っても、だ。当時俺は入学してすぐソフトテニス部に入るも顧問の教師が気に食わず、即幽霊部員と化していた。一年の途中からは退部届けも入部届けも出さないままに、H氏の居る水泳部に入り浸った。


 秋頃のことだった。屋上のプールが使えなくなると水泳部(部員は五名ほど)は茶道室で筋トレをしていた。――彼らはユルかった。「目指せ全国大会!」といったアツさはなく、茶道室ではだいたい机にノートを並べて宿題を片付けながらダベる、というのが常だった。暖房を効かせた部屋で噂話に花を咲かせて、春には正式な部員になった。ソフトテニス部の顧問、若い男性教師はその年に異動になって、女性音楽教師と結婚するも即離婚。いい気味だった……というのは置いといて、とにかく俺は特に得意でもないのに水泳部員になったのだ。


 だから夏には毎日プールに行って、時々ちゃんと泳いだりしながらも、ほとんどの時間水にプカプカ浮かんだり、キャイキャイはしゃぎあったりなんかして、午後は冷房の効いた茶道室で宿題を写しあった。


 中学を卒業してからは高校で新しい友人もできて、その中で立ち位置も変わった。つまり、中学時代常に、文字通り大きな存在だったH氏の腰巾着だった俺は、高校に入ると対等に話し合える友人達ができたのだ。中学時代はそれはそれで楽しかったけれど、いつも誰かにくっついてまわり、時にイジられ役を演じた自分にはもう戻る気はなくって、H氏とは会わなくなっていった。


 同窓会の連絡が来るのはこれが最初じゃない。以前にも一度来ていて、それは往復葉書だったから『欠席』を丸で囲んでテンプレの文章を書き、作法に倣って返事を出した。そして、今回で二度目。


 改めてH氏の律儀さを感じさせる宛名書きだった。いつも面倒事を買って出るような男だったから、きっと今回も何十枚と宛名を書いたのだろう。


 とてもじゃないが捨てられず。文字に懐かしさを感じながら、机に仕舞った。



 でも、同窓会には行かない。

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