第五話 異世界でも気晴らしが必要
実はこの世界に来てから僕がかなりの時間眠っていたという事実が発覚してから、早いもので数日が経ちました。
最期に眠った日から何日経っているのかは聞いてもジュリアは教えてくれません。
ザクロに口止めされているのだと言われれば仕方がありませんが、それでもずっと眠っていると言うのは、案外退屈なものです。
自分が知らない間に色々な事が過ぎ去っていくのですから。
だから僕が少し拗ねても仕方がないと思うんです。
飛躍し過ぎですか?
でも、どのくらい眠っていたのか位教えてくれても良いと思うんです。
目を覚ますたびにむくれる僕に気を遣ってか、ジュリアは色々と僕が好きそうな物をザクロからだ。と言って持ってきてくれます。
とても高級そうな、可愛らしい裁縫道具。
明らかに趣味のお裁縫用には使ってはいけない様な美しい布。
宝石の様な輝きを持つボタンやビーズ。
お裁縫が好きだと言えばそんな物をザクロは僕に与えてくれています。
とても綺麗で、見ていてとても楽しいのですが、何と言うか、物で済まされている感じがして、余計に僕の機嫌は急降下していきます。
綺麗な物を貰っても、嬉しくありません。
きっとザクロの事ですから、一つ一つ選んでくれたんでしょう。
どれも僕のハートを打ち抜く位好みの物ばかりです。
適当に済まされている訳ではないとは分かるんですが、それでも、やっぱり、直接会って話したいと言いますか。
別に、ザクロだけじゃありません。他の皆にも会いたいです。
それなのに、僕がいつ起きるか分からないから最近殆どジュリアとしか話しをしていません。
ザクロは僕が起きたと知ったら仕事を目途が立つところまでやったら駆けつけてくれます。
だから、時々、少しの時間なら話せますが、それでも、それじゃ足りないんです。
別に、ジュリアが嫌と言う訳ではありません。ジュリアの事は大好きです。
けれど、こんな風に外から一切切り離されて生きているのは、つまらないです。
「白雪さま。こちらの布を使って何かお作りになられてみては」
「やだ」
可愛らしい花の模様の布を見せて来るジュリアに僕はベッドから出ずに、たった一言で返します。
大人げないとは思っています。
高校二年生が取る様な行動じゃない事も分かっています。
それでも、今は僕は閉じこもる事しか出来ません。
どうせ、次起きたら何日も経っているという考えに憑りつかれていて、自分から何かをしたいと思ったり出来ないんです。
自分だけ、色んなものから取り残されているのは、辛いです。
「・・・白雪さま」
そんな風に拗ねた僕にも、ジュリアは根気強く接してくれます。
優しくて、大好きです。
ジュリアはもう僕にとってなくてはならない存在です。
お姉ちゃんがいたら、こんな感じなのかなって、そう思います。
そんなジュリアを困らせて、僕は何がしたいんでしょうね。
自分でもよく分かりません。
よく分からないまま、自分の中に閉じこもっています。
だって、ジュリアにとっても、僕が起きない間は他の事をしている筈です。
それは当たり前の事ですが、やっぱり、僕だけ、動けていないんです。
それは、とても寂しい事です。
うじうじと布団の中で丸くなっていると、ジュリアが部屋から出て行ったのが音と気配で分かりました。
ああ。そうですね。もう面倒見切れないってなったんでしょうね。
ジュリアは呆れてしまったんですね。
自分がそうなる様にしたというのに、実際いなくなられると、とても悲しいです。
目からポロポロと涙が零れます。
「ひっ、うっく、えぅっ」
流石に泣き叫ぶ事はしませんが、嗚咽ぐらいは零して泣いちゃいます。
溢れる涙を手のひらで拭いながら、ますます布団の中から出たくないと思いました。
十数分程泣いていたら、部屋に誰か入って来ました。
ジュリアでしょうか?
僕の侍女を辞めたいって、正式に言いに来たんでしょうか?
布団から顔だけ出すと、ジュリアは小さめの本棚を持っていました。
小さくても、中にぎっしりと本が入っていて、とても重そうです。
それをジュリアは軽々と持っています。
ジュリアは意外と力持ちだと知っていますが、やはりそういうのは聖法とか使っているのでしょうか?
「じゅりあ・・・?」
僕が名前を呼ぶと、本棚を丁度良い位置に置いたジュリアは僕の方を見て、とても驚いた顔をしていました。
「どうしたんですか、白雪さま。どこか、痛くなったりしたんですか?」
焦ったように僕に近付いてくるジュリアに僕は問いかけます。
「僕の事、嫌いになった?」
「どうしてですか?私は白雪さまの事大好きですよ」
「でも、こんな風にうじうじして・・・」
「いいえ。今回の事は私と聖王が悪いんです。白雪さまだって不安ですものね。見知らぬ場所で、一人で今が何時なのかも分からない。しかもご学友とも会えないんですもの。不安になっても仕方ありません」
「・・・でも、僕ジュリアに当たっちゃったよ?」
「あんな可愛らしい我が儘、八つ当たりにもなりませんよ」
ジュリアは綺麗なハンカチを聖法で産み出した水で、ほんの少しだけ濡らして、僕の目元に優しく押し当ててくれました。
ひんやりして、とても気持ちが良いです。
「私に嫌われたと思って、泣いてしまったんですか?」
「だって、ジュリアがいなくなったら、僕は寂しい」
「私しか話し相手がいないから?」
「ううん。ジュリアは、お姉さんみたいだから、一緒にいてくれるだけで、楽しいの」
僕が勝手にそう思っているだけですから、もしかして迷惑かも知れません。
けど、僕はジュリアが大好きだから。
それが少しでも伝われば良いなって、そう思いました。
目元を冷やしている間、ジュリアは僕の頭を優しく撫でていてくれました。
ああ。そういえば、ジュリアに頭を触られるのは久しぶりです。
ずっと布団の中に引きこもったままでしたから、髪は結っていないんです。
ジュリアのあの優しい手つきが、懐かしいです。
「ジュリア」
「はい。なんですか。白雪さま」
「髪、結って?」
「もちろん良いですよ」
ジュリアの優しくて柔らかい声に、気分が少し良くなってきました。
いつもの様に鏡の前に座り、ジュリアに髪を結って貰います。
ああ、やっぱり落ち着きます。
ジュリアは宝物を扱うみたいに僕の髪を触ります。
かなり複雑に編んでいる筈なのに、絶対に痛くしないから、ジュリア以外に触れられる時には少し身構えてしまいます。
・・・ああ、でもザクロはどうでしょう。
ザクロも壊れやすい繊細な物を扱うかのような手つきで僕の髪に触れます。
でも、どこかジュリアとは触れ方が違うんです。
上手く言えませんが、ジュリアはやっぱり、お姉ちゃんが妹の髪でも弄る様に。
ザクロは神聖な物でも触る様な、何と言うか、壊れやすくて穢れやすい何かを触る様な、そんな手つきです。
本当に上手く言えませんが、ジュリアは甘やかしている。ザクロは過保護で過干渉。といった感じでしょうか?
こちらの方が分かりやすいですね。
「今日も上手く出来ました」
「ジュリアは本当に手先が器用だね」
「侍女ですから」
誇らしげに言うジュリアと鏡越しに目が合います。
やっぱり、ザクロとは違うけれど、その赤い瞳はどこか懐かしくて。
「そうだ。白雪さま。私本を持ってきたんです。全部恋愛小説ですから、白雪さまはきっと気に入りますよ」
思い出したようにジュリアは僕を本棚の前に連れて行きました。
・・・これが全部恋愛小説。
綺麗な装丁の本をジュリアが手渡してくれました。
真っ白い表紙に、銀色の薔薇が描かれています。
タイトルは・・・あれ?そういえば、僕はこの世界の文字を読めるんでしょうか?
そんな事を一瞬思いましたが、ジュリアが渡してくれた本のタイトルは問題なく読めました。
「聖母と銀の薔薇~茨の騎士編~」
聖母?僕の事でしょうか?
「これは聖母の天職を持った女性が主人公の童話の様な恋物語なんです。これは一番最初の巻で、他には水晶の竜編。茨の冠編。最新刊は水晶と氷のドレス編です。これ人気なんですよ」
タイトルだけでもの凄く気になります。
僕は茨の騎士編を開いて読み始めました。
どうやらこれは、聖母の天職を持って生まれたが為に世俗から隔離されていた女性がある日傷付いた騎士を見付け、手当てをしながら少しずつその騎士に惹かれていく、という所謂王道とも言えるストーリーらしいです。
けれど、少し普通の話と違うのは、その騎士の体から段々と茨が生えて来て、騎士が永遠の眠りについてしまう。そんな展開になっています。
そして聖母である女性はどうにか騎士を眠りから覚ましたいのだけれど、その為には自分の天職をランクアップさせる必要があるらしいのです。
ランクアップした自分の天職でなら、騎士を呪いから解き放つ為の聖剣を産み出せるらしいのですが、騎士を自分の部屋にかくまっている事が父親にバレてしまった聖母は騎士を自分の腹に取り込み、子として守っていく事にします。
それでなんやかんやありながら生家から逃げ出し、自分の天職をランクアップさせる為に旅に出るのですが、最後の方で水晶の竜が守っている水晶竜の手鏡というものが聖剣を産み出すのに必要だと分かり、水晶の竜の住む森に聖母が立った一人で向かう、という所で終わっていました。
一気に。一気に読んでしまいました。
続きを読みたくて仕方がありません。
読み終わった一巻を閉じた時、ジュリアが隣でにこにこと嬉しそうに笑っているのが見えました。
その時漸く、僕はジュリアを放っておいて読書にかまけていた事に気が付きました。
「ジュリア。ごめ」
「ようやくいつもの白雪さまに戻りましたね」
「え・・・?」
「先程まで、何を見ても悲しそうになさっていたから、心配してたんです。恋愛小説推奨作戦は成功ですね」
なんでしょうか、その作戦名は。
ああ、でも、ジュリアはずっと僕の事を心配していてくれたんですね。
僕がずっと拗ねていた間、ジュリアはあの手この手で僕の興味を惹く物を見せていてくれたんですから。
「心配かけてごめんなさい」
「いいえ。白雪さまが元気になって良かったです。続きをお読みになる前に、休憩しましょう。チョコレートをパイ生地で丸めたお菓子がありますよ。紅茶も入れましょう」
特に、何か食べなくても問題がなくなってしまったこの身体。
それでもジュリアは僕に色々と美味しい物をくれます。
紅茶だって、僕が好きだと思える物を沢山試してくれました。
僕が甘い者が好きだと言えば、どういう物が好きか聞いてくれました。
ジュリアは、とても優しい。
僕に、とても優しいんです。
まるで、本当にお姉ちゃんみたいに。優しくしてくれます。
「さあ、どうぞ」
ジュリアが渡してくれたお菓子をジュリアと一緒に食べて、僕も何かジュリアにしてあげたいと思いました。
お菓子が作りたいです。
ジュリアも甘い物は好きだと言っていましたから、一緒に作って、楽しみたいです。
ジュリアの淹れてくれた美味しい紅茶も、どうやればこんなにも美味しくなるのか知りたいです。
本を読むだけじゃなくて、もっと、色々な事がしたい。そう思います。
「そういえば、聖母と銀の薔薇は今城下の方で舞台化しているみたいですよ。主人公の聖母は確か、その劇場で一番の人気だったローゼロッテが降りてしまったみたいですよ。だから今、代役が彼女と仲の良かったハンナリーゼが務めているみたいです。私、ローゼロッテ好きだったから、残念ですね」
その言葉と共に、写真の様な物をジュリアは見せてくれました。
どうやら、本の中に入っているチラシの様です。
そこには、その舞台の場所や、役者の集合写真の様なものが描かれていました。
この世界には、写真があるんでしょうか?
「これは雲雀さまの様な画家系の天職、職業を持った方が描かれているんですよ。白雪さまの世界程文明は発展していませんから、一枚一枚聖法で複写したりしてあって。ああ、これは勿論手書きなんですよ。初回限定版特典で入っていた物です」
初回限定特典とは、何と言うか、かなり異世界感がないような、そんな気分になります。
ああ、でも聖母の腹は異世界と日本が繋がっているらしいですからね。そういう情報も入って来やすいんでしょう。
勇者召喚で僕も含めて9人も召喚できるのですから、案外異世界召喚という方法はそう難しい物ではないのかもしれません。
僕はまじまじとチラシを見つめました。
集合写真の中央に写っているのがローゼロッテという方の様ですね。
確かにとても綺麗ですし、役に合っている気がします。
そして、ローゼロッテさんの隣にいる、ハンナリーゼという方は活発な印象があり、どこか紫織ちゃんに似ている気がします。
ローゼロッテさんは碧李ちゃん系統の雰囲気ですが、お姉さんっぽい様な雰囲気も混じっています。
「良かったら、白雪さまに差し上げます」
役者の方たちの顔をじっくりと見ていたら、ジュリアが優しい声でそう言ってくれました。
「え、でも初回限定特典って」
「本を買う時はいつも三冊買う様にしているんです。普段読み用、保存用、布教用」
「あー」
雷公くんと紅火ちゃんがそのタイプです。
ちなみに読書家の蒼衣ちゃんは乱読派なので、そんなに買っていたら他の本が買えない。という理由で全部一冊ずつしか買わないそうです。
稀に二冊買うのは、家庭科部で共用する為の物だけです。
でも、まあ後二冊あるのなら、有り難く貰っておきましょう。
「ありがとう。ジュリア」
「良いんですよ」
「えへへ。・・・あ、そうだ。ザクロにこれ見に行きたいって言ってみよう!」
「え?白雪さま?」
良いアイデアです。
ジュリアと一緒ならどこに行っても良いって言っていましたし、ザクロも暇だったら一緒に行けば良いんですよね。
あ、でも一応王様だから、そう言うのって難しいんでしょうか?
「駄目、かな?」
そうジュリアに問えば、仕方ない。という表情で笑ってくれました。
「私の方からも聖王に頼んでみましょう」
「ありがとうジュリア!」
「ずっと部屋の中にいるのも退屈ですものね」
ザクロが来るまで一緒に読書を楽しんでいました。
ああ。水晶の竜編も素敵です。
ちょっとした冒険ものなのに、ちゃんとキュンって出来る場面が沢山あります。
夢の中で騎士と会えた時の聖母の反応が可愛いです。
これを舞台で見れたなら、とっても素敵でしょうね。
そんな事を思い、それをザクロに伝えながら許可を取ろうと話をしたら、ザクロは一言言いました。
「駄目です」
バッサリ、切られました。
「今現在母上の存在は公にする事は出来ません。城の中ですらまだ母上の存在を知らない者の方が多いのです。それなのに、城下にジュリアだけを連れて行く事は許可出来ません」
「じゃあ、ジュリアの他にも何人か一緒でも良いよ?」
「信頼の出来る者を一気に城から出すのには問題があります。勇者たちをつけるにも、勇者が外に出ては騒ぎとなり、母上の存在が魔帝國の者に認識されてしまうかもしれません。ストレスが溜まっているのかもしれませんが、これも国の為です。外に出たいのならば、城下ではなく、庭園の方へジュリアと共に出る許可を出します」
確かに、ザクロの言う通りではあります。
僕は聖国の王、ザクロの母親です。
僕の存在がこの聖戦の要とも言えるのだという事ぐらい、理解しています。
けれど、そうも僕を閉じ込めておく必要と言うのはどこにあるんでしょう?
城の中ですら満足に出歩かせて貰えません。
部屋の中で、偶に起きた時にジュリアと話しをして、ザクロがくれたと言う物を見ながら、もう少し自由にしたいと思う。
この、鳥籠の様な部屋は、本当に鳥籠なのではないのかと、そう思う様になりました。
「ご理解を。母上」
そう言って僕の髪に手を伸ばし、口付けるザクロに、僕は悲しくなりました。
多分、悲しいだけではないのでしょう。
もっとそれ以上に、何と言うか、怖い。とか、どうして。という疑問。何を求められているのかと言う、不安。
色々な感情が入り混じります。
ジュリアが部屋を出て行った時よりも、不安定な気分になりました。
ザクロの赤い、見守っていてくれている様なジュリアの瞳とは違う、求められている様な、そんな綺麗だけれど怖い瞳。
それを今は見たくなんてありません。
目を伏せれば、ザクロが僕の顎を救う様に触れてきます。
「母上」
ああ。駄目。今目を開けたら、きっとザクロは僕の事を、一生閉じ込めてしまうんでしょう。
根拠何て全くありませんが、どうしてだかそう強く思いました。
「母上。どうして、私を見て下さらないんですか?」
「今は、いやだから」
「何が嫌なんですか?」
「ザクロ。今日はもう、会いたくない」
そう言ったら、ザクロは僕をベッドの上に乱暴に押し倒しました。
今まで、こんな事をされた事はありませんでした。
ザクロはずっと、僕をとても大事に。大切にしていたんです。
驚いて目を開けてしまいたくなりましたが、やっぱり目を開けては駄目な気がします。
「どうして・・・!どうして、母上!」
「ザクロ」
泣き出しそうな声が聞こえて、誘惑に抗えなくなります。
僕は、どうしたって、ザクロの母なんです。
泣いている息子を慰めてしまいたくなる。
抱きしめて、名前を呼んで、愛していると、そう言いたくなります。
けれど、今それをしては、きっと、駄目なんです。
「今日は、いや」
「・・・分かりました。何かありましたら、」
「ジュリアに言う」
「ええ。そうしてください」
そう言った後、僕の肩を痛いぐらい押さえつけて来るザクロの手が離れました。
だからようやく、出て行ってくれるのかと思ったのですが、そうではありませんでした。
首筋に鋭い痛みを感じました。
「ぁっ!」
その時思わず瞼を開いてしまえば、口元に少量の血を付けたザクロと目が合いました。
「ああ。ようやく見てくれた」
そう満足そうに笑うザクロに、僕は血が出る程強くザクロに噛まれたのだと気付きました。
「次母上が目覚めてから三日は消えない様にしておきました。・・・ジュリア。母上に手当てを」
「はい。聖王」
ずっと近くにいたジュリアは僕の方にやって来て、怪我を治そうと聖法を使ってくれました。
温かく、柔らかな光が顔の近くに現れます。
それを見て、ザクロはいつもの様に微笑んで、部屋から出て行きました。
「それでは、母上。また来ます」
ザクロが部屋から出て行った後、ジュリアが小さな声で謝って来ました。
「申し訳ありません。白雪さま」
「ん、大丈夫だよ」
「私は、白雪さまの侍女ですが、それでも、聖王の部下ですから」
「うん。だから大丈夫。ザクロは多分、拗ねてるだけだろうし、ジュリアが気に病む事じゃないよ」
「あれを、拗ねていると捉えられる白雪さまは大物ですね」
「まあ、お母さんだからね」
そう言って笑って、ベッドに血が付かなかったのは良かった思います。
こんな綺麗なベッドが汚れてしまったら、掃除が大変です。
「ジュリア。そろそろ寝るよ」
「分かりました。では、次に目が覚めた時、何が食べたいですか?」
「うーん、ジュリアが得意な物で良いよ」
「では、その通りに」
僕はベッドに沈み込み、眠りに落ちました。
眠る直前、ザクロに噛まれた跡がじくり、と痛んだような気がしました。
ああ、母親って大変です。
久しぶり、という程ではありませんが、ザクロの登場です。
ザクロはやっぱりヤンデレなので、ここまでやっちゃいます。
この時のザクロの心境。的なのを書きたいな。と思っています。
ああ、そういえば「聖母と銀の薔薇」はちょっとストーリーに絡みながらも、個人的に関係ない長編として書いてみたいものです。