プロローグ 異世界召喚に至るまで
僕の名前は花車白雪。
こんな名前だけど男です。
背がちょっと平均より高いだけで、ひょろっちくて、曾祖母に生き写しの顔を隠す為に前髪を弟曰く恐ろしいぐらい伸ばしているぐらいしか外見的特徴がないだけの気弱な男です。
あ、でも好きな事とかありますよ。例えば、料理とか、裁縫とか、少女漫画を読む事だったりとか。
……はい。そうです。僕は所謂乙男という奴で、少女漫画のドキドキを女子と同じテンションで語れるので、女子とは案外仲が良いです。男子にはやっかまれていますが。
僕は家庭科部に所属していますが、そこの女の子達はとてもよくしてくれています。
僕が作った小物を可愛い。と言ってくれますし、少女漫画で良いシーンがあったらずっと一緒に語ってくれます。
家庭科部の女の子は全部で四人。
花宮紅火ちゃん。
ちょっと強気だけど可愛い物が大好きなとっても可愛い子です。
ポニーテールを纏めているシュシュは毎日違います。女子力が高いです。
花市蒼衣ちゃん。
物静かな感じの子で、図書館とかが似合うタイプです。
本が好きだから可愛いブックカバーをよく一緒に作ります。
前髪が真っ直ぐのストレートの黒髪がお人形さんみたいな可愛い子です。
花川碧李ちゃん。
おっとりとしていてふわふわとした髪の毛と同じ柔らかい感じの子です。
料理が趣味でお菓子作りが得意です。
色素が薄いから、皆で色々と髪留めとかを作って飾り立てるとお姫様みたいでとっても可愛いです。
花野紫織ちゃん。
ちょっと子供っぽい感じの子だけど、女の子の中で一番背が高いです。
お馬鹿な発言をするという印象が強いですが、皆の中で一番頭が良くて、よく勉強を教えてくれます。
ショートカットにしているのが余計に猫っぽい印象を抱かせてくれる、可愛い子です。
四人ともとても優しくて良い人たちです。
女の子らしくてとっても可愛いし、少女漫画に出て来る美少女みたいです。
「白雪ちゃん。新刊もう買った?」
「うん。やっぱり壁ドンが一番ドキッてしたなぁ」
「だよね!あれファンタジー要素あるのにそういうちょっとした小技が活きてるって言うか」
「今度白雪ちゃんにやってあげよっか?」
「身長足りなくない?」
「そこは机に押し倒して机ドン」
「それって最早押し倒してるだけじゃん」
「えー、でも絶対白雪ちゃん可愛い反応すると思うけどなぁ」
きゃぁきゃぁ。とかそういう効果音が似合う声で話しているのを見ると和みます。
可愛いなぁ。
そんな事を思いながら、壁ドンに必要な身長差について話していると皆の幼馴染がやって来ました。
「紅火。今日何か食べ物は作ったか?」
「あー、時雨ちゃんだー」
「不満気だな。何か不都合でもあるのか?」
「時雨ちゃんには碧李ちゃんのシュークリームはもったいないよーだ!」
「俺は紅火が作った物が良いんだが」
紅火ちゃんの幼馴染の花香時雨くん。
剣道部の主将でザ・侍。と言える人で、その、少し怖いです。
僕は男子に嫌われるのは慣れていますが、やっぱり時雨くんは紅火ちゃんが好きみたいで、紅一点ならぬ女の子の中に男一人である僕をとても冷たい目で見ます。
クール系。と言うか、少女漫画のヒーローみたいな人です。
格好良いけど、やっぱりちょっと怖いです。
「蒼衣ー。制服のボタン取れちゃったから着けて~」
「あら、天晴貴方今月三回目よ」
「いやー、遊んでるとすぐ取れちゃうんだよねー。あ、っていうか天晴って呼ぶのやめてよ!俺天晴だから!」
蒼衣ちゃんの幼馴染の花里天晴くん。
軽音部のボーカルらしいです。
ちょっとチャラい感じが蒼衣ちゃんとミスマッチですが、そこが良い。
天晴くんは僕にもある程度優しくしてくれますが、やっぱり蒼衣ちゃんに近付くなって牽制されている気がします。
茶髪で制服を着崩しているとかちょっと不良っぽいけど喧嘩は駄目らしいです。蒼衣ちゃんが「情けない」って言っていました。
やっぱり少女漫画のヒーローみたいな人です。でもやっぱりちょっと怖い。
「碧李~。僕お腹空きました~」
「あ、じゃあシュークリーム作ったから食べる?」
「わーい。碧李のシュークリーム大好きですー」
碧李ちゃんの幼馴染の花表雲雀くん。
美術部らしく、いつもジャージ姿でやってきます。
ジャージも顔も絵の具だらけで、碧李ちゃんがよく拭いてあげています。
常に敬語で小柄な感じだから分からないと思うけれど、この中で一番年上です。三年生です。
碧李ちゃんと並んでいるととても可愛いです。
子供っぽいけど、結構自由なので僕とも話す機会がありますが、前髪を上げようとしてくるので要注意です。
年上とか前髪的な意味では怖いですけど、優しい人です。
僕達が何か作る時デザインを考えてくれたりします。
少女漫画でもヒーロー的位置にいますね。
「紫織。宿題で分かんねーとこがあんだけど」
「あー雷公だ!どこが分かんないの?教えてあげるから肩を揉め!」
「おう、ここが分かんねーんだけど」
最後は紫織ちゃんの幼馴染の花咲雷公くん。
普段から結構眠そうな感じで、無気力な感じが良い。と僕は思います。
僕とも普通に喋ってくれるし、実は僕と隣の席です。消しゴム拾ってくれます。良い人です。
でも普段から眠ってたり、偶然外で会った時私服が残念な所とかは親近感が湧く以上に世話を焼きたくなります。
その後「服選んで」と言われて選んだら凄くキラキラした目で見られました。
やっぱり少女漫画のヒーロー的位置にいる人です。
何と言うか、皆格好良くて、可愛いから、一組一組で少女漫画が一本出来上がりそうな感じです。
そして僕は相談される側のお友達。
うん。時雨くんや天晴くんはちょっと怖いけど、紅火ちゃんや蒼衣ちゃんがいない時は普通だし、多分大丈夫。
ちなみにそういう所も萌えポイントです。
「そうだ、時雨ちゃんなら壁ドン出来るよね」
「壁ドン?何だそれは」
「えっとね、白雪ちゃん。漫画借りるね」
「うん。良いよ」
紅火ちゃんは僕の漫画をパラパラとめくり、壁ドンのページを選んで時雨くんに見せていました。
「ほら、これ!」
「……何だ。俺にやって欲しいのか?」
「そう!私じゃ身長足りないから、白雪ちゃんにやってあげて!」
「……何で男にしなくてはいけないんだ」
「白雪ちゃんが絶対可愛いから!」
力説する紅火ちゃんを時雨くんは理解不能。という目で見た後明らかに全員聞こえただろう舌打ちをして僕の方に近寄って来ました。
「あ、あの」
「黙れ。ああなった紅火はやらなきゃ収まらん。黙って俺に委ねろ」
「は、ぃいいい」
ああ。僕が女の子だったら絶対に恋に落ちています。
こういう事を素で言うから時雨くんは格好良いんです。
そして壁際に追い込まれて壁ドンをされて、はわわわわ。となった時、まるで僕達がいた家庭科室が大きな一つの鐘になった様な、そんな感覚に陥りました。
ゴーンという大きな音と共に、平衡感覚を根こそぎ奪われる様なそんな振動。
僕は思わず時雨くんに掴まりました。
時雨くん自身も立っていられなかったのでしょう。僕と支え合います。
もしかしたら地震なんじゃないか。そんな風に思った時、家庭科室は家庭科室ではなくなりました。
何と言うか、大きな祭壇の様な場所に僕達は立っていました。
「おお、おお!勇者様の召喚に成功したぞ!」
「しかもこれ程までの力を持った方々が9人も!」
「これで此度の聖戦は我等聖国の勝利だ!」
何かよく分からない事を言っているなぁ。とか思いながら、僕達はお互いの顔を見合わせました。
そして、最近少女漫画ではファンタジーも良いものが出ているという点で、僕達家庭科部は声を揃えて叫びました。
「「「「「異世界召喚!」」」」」
そんな僕達の様子を男子組(僕も一応男子だけれど)はポカンとした表情で見ていました。
あ、なんかちょっと怖いです。
こんな感じの話を急に思いついて、ただ何となく書いただけですが、男が聖母で前世の息子にヤンデレられたら面白いなぁと思いました。
一応勇者枠で召喚された訳ですが、そんなにバトルはないだろうなぁ。と思います。