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不夜城の王様

かって俺は、インターネットがまだ走りの時代、マルチメディア番組と言うものをやっていた。


マルチメディア・・なんて死語なんだが、このころはデジタルの文化を

総称して、こう呼んでいた。


インタラクテブとかコンピューターグラフィックとか

デスクトップミュージックとか、そんなことがネタであり

まあ、楽しい時代・・・・


そんな時にインターネットのプロバイダーを始めたり

インターネットに動画サイトを作ったり、あるいは市場を作ったり

そういうやつのの多くは、企業から金を集め、そして上場し

大金持ちになっていった。


その特徴は、優秀なプログラマーを抱え、自分はプレゼンにたけている

・・・要はPRのうまい奴、口のうまい奴が、成功した。


それがIT革命ってやつの走り・・・まあ成金が何人も生まれた。


だが、それからはサバイバルの時代になった。


一度、金を持ったとしても、システムを構築し、運営するのにさらに

能力が必要・・・さらに運が必要。


アマゾンは興隆し、アマゾンのようなものは消える・・

楽天は興隆し、楽天のようなものは消える。


そういうものだ。


デジタルの業界も、切磋琢磨が必要な時代に、田村は成功をしている。


それだけ時代を読む能力にたけているのだろう。


そのあたりを、それっぽく企画書に仕上げた。


あなたは、すごい奴だ…だから取材さしてね・・・・という

おべんちゃら満載の企画書に、サクソンもOKをすぐ出してきた。


4日後、快諾の返事があり、豪華な社長室でロケをおこなうことになった。


俺は、カメラマン・ビデオエンジニア・女性レポーターを連れて

サクソンコーポレーションに向かった。


「すごいビルですね」


レポーターが驚きの声を上げた。


「年商200か300億だもん・・そりゃそうでしょ」



15建て外側はガラス張のきらびやかな自社ビル。


その前で、フリのVTRを収録する。

こういう成功の象徴・誇示は俺は好きではない。


さすが、田舎もんだな~と思いながら中に入ると

三階まで吹き抜け・・・ロビーも豪華、まあ絵になる現代建築。


強面の警備員が、俺たちにぴったりついて誘導する。


エスカレーターで三階まで上がり、吹き抜けの俯瞰を撮影。


面白いのは、ロビーに20名位制服の警備員がいること。


ちなみに三階に打ち合わせ用のサロンがあるのだが、

見渡すと、軽く10名近い警備員がいる。



こういう会社は、逆に胡散臭く感じるのが俺の悪いところ。



大体、こういう警備万全ってのが一番怪しい。


確かに、ヤバイ犯罪人が入り込めないのだが、それと同じ位、

中でヤバイ事をしてももれない、秘密基地になりうる。


警備員が、常に視界に入るのも、なんかオープンじゃないのが、気にくわない


なんか空気がピリピリしているのだ。


「では、こちらに・・・」


俺たちは、エレベータに乗せられ上へと向かった、



最上階に社長室はある。


エレベータが開くと、違和感のある風景になった。


なんというのか、中世の貴族の屋敷みたいなウッディなインテリア

扉も重厚な木製の扉デ、執事のような衣装の奴が立っている。


さっきまで、シルバーの金属とガラス張りの現代建築だったのに

突然時代を感じさせる空間。


これも成金趣味だなと思いながらいると扉が開いた。


するとヨーロッパ調の深い色で彩られた、まるで中世のヨーロッパの貴族の

広間のようなのがでてきて、アールデコの木製の背景の前に、

田村は座っていた。


「こんにちは田村です」


「あっ、今日はよろしくお願いします。」


一番聞きたいのは、西條メグとの関係だが、まさかそれは、あり得ない。

今日は、こいつを見に来ただけだ。

そもそも、若くして大金持ちなんて、好きになれない。


「田村さんの人生哲学・・・それをお聞かしいただければ、と思います

 ますばその経歴からお聞きしたいのですが」


な~んて、それっぽい質問をレポーターにさせながら、部屋の中をうかがっていた。


「僕は、苦学生でね。本当に貧乏だったんですよ。

 だからこそ、こういう東京の真ん中で成功することが…」


まあ喋り慣れている台詞を聞きながら、バッグはバーバリーで15万

ネクタイはマイケルコースで5万・・・・おお背広は特注だ・・50万くらい

さらに時計は…ウプロたな・・・500万くらいか・・・・なんて分析を・・


「大学の時に、僕がやりたいことは何だと自問自答して到達したのが

 テクノロジーで、人々を幸せにすること・・・・」


つまらん。適度に質問を繰り返しながら、部屋をチェックする。

ただどこにも、原田モモヨにも西條メグにも関係するようなDVDも写真もない

15分くらい成功者の思いをしゃべらせいおいてから、軽くジャブをいれてみた。



「新しいジャンルに挑戦したいとおっしゃいましだが、メディアなんて

 考えたりしてますか・・


「そうですね・・デジタルの世界は進化していますが、僕はあくまで

 アナログな心・・・・親子とか夫婦とかの絆を大切にして

 そういう人間のコミュニケーションをデジタルで繋ぐことを・・・」


ありきたりな答えだ。

そこで、俺はやや強烈なのを自分から聞いてみた」


「エンターティメントのジャンルにもご興味があるときいてますが、

 映画制作とか タレント育成とかは・・」


 奴の目つきが変わってきた。当たり前だ、四谷プロの件があるんだから。


「そうですね。興味はあります。もともとミーハーなので」


女性レポーターに戻した。


「CMも有名タレントつかってらっしゃいますね。

 そもそもイケメンでらっしゃるから社長が出てもいいのに」


おべんちゃらにはにこにこしている。


「では、プライベートについてお聞きしたいと思います。

 ご趣味の方は…」


予定通りの質問をする。


「実は、絵画が趣味なんですよ。ゴッホとかピカソが好きでね…

 ここにも飾ってますが・・・歴史のある名画は心を癒してくれますね」


つまらん、これも彼が幾多の雑誌で答えている事だ。

そこで、また俺自身が聞いてみる。


「お酒が好きと聞いてますか゛・・」


「そうですね。ワインが大好きなんですよ。

 ロマネコンティの1973年なんて・・・・・」


銘柄を言われてもわからん・・・まったく成金な奴だ。


「よく麻布で飲んでいるとお聞きするんですが・・・・」


また彼の目つきがきつくなった。


「よくお調べですね・・・・」


名刺をチラッと見た。


「高木さんは、怖いな~」


「田村さんの事をより深く知りたいんですよ。

 特にキャラクターを視聴者に伝えたいんです」


「そうですか・・・でもあまり僕をさらけ出すと

 会社のイメージもあるし・・・お手柔らかにお願いしますよ」


やさしく言っているが、そろそろ終わりにしましょうというニュアンスも

感じた・・・まあなんだかんだで30分は回しているし…


「最後にもう一つ聞きたいんですが・・・・」



と、その時だ、体が揺れた。


最近慣れてきたが、地震だ。

しかもこういうビルの耐震構造は、とにかく揺れる。


グワン~グワン~


ガラスごと揺れるので、気が気でなくなる。


15秒近く揺れたので、結構ビビった。


カメラマンが、俺に耳打ちした。


「変な音がするぞ・・」



どうも、田村の後ろ側の壁から、妙なハウリング音とカーンカーンという金属がぶつかる音が聞こえる。


確かに、机の後ろだけ、5mくらいのの幅、2mくらいの奥行で、突き出たデザインだがその奥行では、隠し部屋にもならない。


単なるデザインだろう。


そこから、音がしている。


それに田村が答えた。


「うちの空調ダクトですよ。この後ろ通ってるんです。

 たまに、変な音がするんですよ」


そういいながら、田村は、蒼白になり、いやな汗も額に流していた。

よほど地震がに苦手らしい。


金を持つと、大事なのは命になる。


そりゃそうだろう。


100億持っていても、使わないと意味がない。


割とタフっぽいのに、冷や汗をかいて、すぐにでも逃げたしたい感じの

田村社長にはちょっと驚いた相当なビビりだ。



地震が落ち着いたので、次はストーレートを繰り出してみた。


「田村さんは、養子だったと聞いたんですが・・・・」


「そんなことまで調べたんですか??」


「はい、そこにもドラマが・・」


「ああもう、それは答えたくないな。そもそも関係ないでしょ!」


もはやこいつは、失礼だと激怒している。


「そういう事を調べてるなら、撮影は終わりだ!!」


やや乱暴言い方で返してきた。


すると強面の警備員らしき奴が、割り込んできて、

俺たちはまたたくまに追い出された。


ビルから押し出すようにしながら、その警備員は一言余分なことを言った。


「消えろ、二度と来るな。高木、お前は煩わしいんだよ。」


「えっ」


俺は、驚いた。


何が余分って、こいつが俺の名前を知っているのがおかしい。


そして、いつかの夜、俺の上で脅した声と似ていたのだ。


しかも、こいつは、どこか裏稼業のにおいがする。



どちらにしろ、番組はおじゃんになった。

だが、田村の人となりは、なんとなくつかめた。


まあ怪しい奴だ。



養子の話は、タブーというのが一番だが、まずは警備員

俺はまずここを調べることにした。


収録したテープをプレビューしていると、この警備員がばっちり映っていた。


その顔を例のやくざコネクションの山崎に見せると…即答だった


「こいつ組で中本の部下だった吉田だよ。

 武闘派だから有名でね・・・・でも、組を辞めたとは知らなかったよ」


それからその警備会社を調べてもらった。


すると・・サクソンコーポレーションの警備員は100名いるのだが、

その全員が吉田と同じ○○組の構成員・・・いや元構成員だったのだ。


つまり、こんな怪しい会社はないという事だ。



「周りのビルの人には、評判悪いね…あのビルの警備員って、強面でしかもすぐ怒鳴るので嫌われていたらしい。」


「24時間誰か出入りがあって、しかも夜になると、モデルみたいな女が何人も入っていくから、

 怪しいって噂が流れてたよ」


「警備員が、すべて暴力団なんてオカシイぜ。30名余りいるんだよ。

 これだけいれば、ドラッグパーティでも殺人でも なんでもできるよ。

 要は、あのビルは、城みたいなものだよ。」


「あの田村ってやつは、まともな奴ではないな」


まいったな~IT長者のドキュメントは流れるし、モモヨの真相にも近づけてない。

むしろ、西條メグの死の真相とやらに接近しているみたいだ。


四谷プロの中本にとって俺は、モモヨの過去をあばき、さらにミクの死を通じて田村を探る

まあもっとも消えてほしい奴だろう。


まあ、これはニュース部門に売れるだろう。

なら、続ける価値はあるか・・・・危険なので、局にこもることにした。


そして、まずは、クリスマスイブの西條メグの事件を追う事にした。


山崎がインメン長身インテリという東大出の構成員を用意してくれた。

こいつに隠しカメラを持たせ、夜の街に潜入させることになった。


そのインテリ構成員は、田村の出入りするクラブやタレントコールガールのいるクラブやバーに入り浸った。

しばらくすると、一つの都市伝説にぶちあたった。


「サクソンコーポレーションの地下室」


あのビルには、地下があり、そこで夜な夜なパーティが開かれているらしい。


☆☆☆☆☆


伝説の女王は、ゾウガメに呟いていた。


あの悪夢の起こる前の日・・・それが私には重要だっの。

あの島で、あの方と愛を作った。

やさしい叔父様だった・・・・私にかけていた父の思い出を彼が満たしてくれた。

そこには、家族として扱ってくれる・・そんな深さと温かさを感じていた。


プロダクションも、この恋には目をつぶってくれた。

精神が不安定な私を癒す数少ない手立てと納得してくれたからだ・


初めて、女を見せたのは、その日だった。

彼は、やさしく受け入れてくれた。

そして、私に愛を授けた。


だが、暴漢の事件以降、彼は距離を置こうと言ってきた。

仕方のないことだ。

すでに主役クラスの俳優である彼にとって、不倫でさらに年の離れたアイドルとの逢瀬は

外の漏れてはいけないことであった。


だが私の中では、愛は育っていた。


だからこそ、私は引退を決意したのだ。




・・・・・続く

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