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マッド整形医登場 ~よく似た女~

有名人と、よく似た顔の女がいる。

メイクのせいなのか、安室似、加藤ミリヤ似、綾瀬似、上戸彩似・・・

本人には及ばないが似ている素人って、有名人の人気とともにどっと増える。


実は、六本木心中事件のニュースの顔写真で思ったのは、

西條メグの顔って似ている奴が多いことだ。


これが今の流行ではないから、気づく奴が少ない。


よくいくキャバクラにもいた。


俺は、キャバクラで今話題の西條メグの写真を見ながら、


「似てるよね・・・・君そっくりなんだよ、この娘に」


「よく言われるのよ。」


キャバクラの成田喜子という女は、嬉しそうにこたえた。。

本当に、そっくりなのだ。


「これって、う~ん、どこかで見た顔なんだよな~」


「50歳くらいから上は、別のタレントさんに似てるっていうのよ。

 誰だかわかる?」


そこでやっとわかった。

30年前の原田モモヨに・・・ 寸分たがわぬという表現がはまるほど、

そのバランスの良さもちょっとした下世話なセクシーさも同じ。


キャバクラのその女、成田喜子も、そこまでではないが、モモヨに似ている。


「原田モモヨに似てるっていわれない」


「よくわかったわね。私もファンなの・・・だってそっちは大スターだし…」


さらに不思議な感覚を感じていた。

翌日、うちの会社・MAD-TVにオーデションに来ていた若い子に、

同じ顔をしているのがいた。


「あの殺された娘に似てない」


オーディションに来た娘に聞くと、


「今、業界で流行っているんですよ。この顔」


翌日、銀座のクラブに行くと・・・また同じ顔だ。


渋谷を歩いてると・・・・髪型は違うが、やはり同じ顔。


1週間で5名は目撃した。



全くどうしたことだ。


だが、この顔、今のアイドルでも女優でも、いないタイプ。


なのになぜ増えているのかが分からない。



何かがある・・・俺は再び、くだんのキャバクラにむかった。


俺は、またキャバクラに行き、喜子に聞いてみた。


「高木ちゃん・・・秘密守れる?」


そこで判明したことは、整形という事だ。


だが、それ以上は頑として口を割らない。


「だって、モグリなのよ・・・だから言えないの」


モグリの整形医・・・・それは面白い。



このネタは、雑誌記者だろうな・・・とジョージに聞いてみた。


「それね・・・ちょっとヤバい系の医者でね・・

 六本木界隈では有名なのよ。

 もう70歳は軽く超えているじいさんだけど、腕がいいのよ」


「つかまらないの・」


「よほどの芸能プロダクションとか、やくざ系のルートがないと

 頼めないのよ・・・・だから部分だけで200万から300万

 顔全体とかになると500万・・・・完全改造だと何千万って

 とるらしいのよ」


「すごいね1000万単位」


「たって保険きかないからね」


こうなると、当たり前である。


六本木のとある整形医が同じ顔を作りだしているからなのだ。


そのアンダーグランドの整形医、もともとの患者は、


保険の効かない暴力団関係。


手配中の犯人や、詐欺のために顔を変えるのが、彼の主なる生業。


そして、いつしか芸能界からの依頼が来て、次々美女を作り出して


ブレイクしたらしい。


年齢は70歳を超え、その技術は、まさに芸術クラス。


そのため、どんなに高額でも、依頼は絶えないのだ。


そして、このところ多いのは、芸能関係の整形。


手術跡がほとんど判らないその技量を求め、次々と依頼が来る。




☆☆☆☆☆☆☆


伝説の整形外科医は、じじいである。

しかも、美女のレパートリーが古いらしい。

世代的には、サユリストだという噂もある。


その伝説の医者・野村正義はいつも世をはかなんでいた。


「俺は、なんで、こんな事をしているんだろう」


仕事は、ひっきりなしに来る。


今日は、暴力団の若僧を300万で他人にした。

詐欺事件で手配され、顔が出たため、組の方で金を出してくれた。

昨日は、キャバクラの女に入れあげた成金が、女優と同じ顔にしろと

言ってきた…骨格が似てなかったので、1000万の大仕事。


紹介人に4割戻すので、この二日で780万の売り上げ。


結構シリコンやセラミックを使ったので、利益は1/3

250万程度かな・・・・


こんな感じで、年3億ほど稼いでいる。


20年はやっているので、50億近い貯金もある。


だが、虚しい・・・・


表に出られないことも、さることながら、人のためになっているのか・・・

それがわからなかった。


そこで、いたずらな気持ちが沸き起こってきた。


整形で、同じ顔の女を、いっぱい作ってやろう。


その時、選んだのが、35年前に、理想の顔として魅了された

原田モモヨ・・・・そのころすでに中年の私にとっても魅力的だったのだ。


美人なのだが、昭和の顔、今は伝説の人で、パッと見た時に、

原田モモヨだと人は思わない。

だからこそ、患者たちも、喜んでいた。


現役のタレントに似るのは、嫌がる患者が多い。

なぜなら、個性失うからだ。



そして10年の間に、少しずつ少しずつ、その顔の女を増やした。

それでも500名は下るまい…


六本木や麻布で、たまに見かけると、うれしかった。


そして、何人かは、芸能の道でテレビに出たりしている。


本当に面白い。

髪型やメイクや服が違うと、原田モモヨに見えないのだ。


同じ顔を作る…この試みは、整形医の生きがいになっていた。


だが、その一人が、事件で殺されてしまった。


それは、彼に衝撃を与えたのだ。



その患者の名前が、西条メグだった。


偽名らしいが、そんなことは、もぐりにわかるはずもない。


彼女連れてきたのは、あるITなり君だった。


整形医がすむ六本木はIT長者の町である。


六本木ヒルズとミッドタウンが出来たおかけで、時代の寵児たちが集まってきた。だが、それは高層ビルの階上の話であり、道路では、黒人とキャパ嬢が

客引きをする下世話な町であり、さらに俳優や力士が、夜な夜な喧嘩を繰り広げる、まあチンピラが跋扈する


風俗タウンの顔も、あわせもっている。


こんな町を根城とするIT長者のやる事は、カッコをつけるという事。

金を持ったら、着るものや時計や見てくれを気にし出す。

そして、最後はイケメンに変身するための整形、

腕のいい整形医はセレブには欠かせないのだ。


整形医も、数多くの成金たちをイケメンに変えた、


そして、そんな、やつらがはまるのは、セックス&ドラッグ。


女が出てくる。


殺された患者・メグもその一人だった。


そして、手術していた時に、

あの娘は、カミングアウトしてきた。


「私ね現役のタレントなの・・でも、夜の方も働いてるの・・・

 あいつら、いい客なのよ。一晩で100万200万くれるの」


金で体を売っていることを話してくれた。


そんなアイドルがいるのも、IT長者町ならではの話なのだ。


「それにこの整形は、向こう持ちで しかもマンション買ってくれるのよ」


メグを連れてきたのは、サクソンコーポレーションの田村という男であった。

彼女をこの顔にしてくれと言われた。


手にしていたのは、原田モモヨの写真だった。

これには整形医も驚いた。


 「この顔なら、もう200名は作っている、

 それにしてもこの若造、ここまで骨格の似ている女を探せたなんて

 ほんと運のいい奴だな」


そして、西條メグは、自らの生まれつきの顔を捨てた。

おかげで、死んでもその正体がわからなくなったのだ。


まさか死んでしまうなんて・・・・


☆☆☆☆☆




船越警部は、西條メグの頭蓋骨を前に腕組をして、考えていた。


「どこから始めようか・・・・」


名前も顔も嘘・・・・


タレント名鑑にある片桐梅子についまずは捜査をしたのだが、

写真を入手するとまったく似ても似つかぬ・・・・整形しても

骨格からして全く違う女であった。


しかも、5年前に23歳で行方不明。


親は「東京に出て行って、それから全く連絡がない・・・」としか言わない。


もともと地元の不良で、親も捨てていた感じがある。

だから、失踪届けが出てなかった。


それが、話を複雑にしている。


片桐梅子の名前は、なんらかの方法で入手したのだろう。

つまり、西條メグは、その経歴を買ったはずなのだ。


だが、芸能界入りのきっかけが、六本木のキャバクラらしいので、

この時点で、片桐梅子と名乗っているから始末が悪い。


もはや、聞き込みではわかる範囲ではなさそうだ。


そうなると、リアルなのは、DNAと血液分析と、この頭蓋骨。


この頭蓋骨から復元したモンタージュ写真を作るしかない。


そして、モグリの医者を探すことだ。


これは、あのテレビ屋を巻き込もう。


☆☆☆☆☆☆☆


「高木ちゃん~ちょっとお願いあるんだけどさ~」


いつもの如く、軽い調子で話は始まる。



「あのさ~モグリの整形医探したいのね。

 で、いつものドッキリお願いしようかと・・・」


話は、西條メグの捜査だ。


もぐりが東京で活動しているらしいことは判明しているらしく

今回の依頼は「ドッペルゲンガー大作戦」


世の中にはにいている人が三人いる・・・・これを東京で実証する

という番組企画にして・・・・そのネタ元を原田モモヨにする。


そもそも一人は、タレント名鑑から目星がついている

グラドルが一人いる。村野リリー。


こいつを振り出しに、似ている人を探すという企画。


そもそも警察が200万は出すと言うので、深夜番組に持ち込み

本当にOAすることになった。


レポーターは、俺の子飼いの南野三郎。


出演者に手を出すとんでもないたらし野郎だが、二枚目でインテリ

グラドルなどイチコロだ。


村野リリーに手を出すことも計算済み。


彼女と、さらに似ている女のデータを集めることで、

もぐりの情報を手に入れようというのが、警部の考え。


有力な情報が手に入るまで、取材は続ける・・・それが条件なのだ。


さて、いかなることになるのか・・・・

まずは、このリリーの調査からだ。


すでに警部からはメールで情報が来ている。



「プラスチックプロダクション所属で雑誌のグラビア中心に活躍する

 24歳。本名は仁科恵子・・・本籍も確認済。

 2年前に現事務所に所属しているが、それ以前の経歴は分からない。

 ホクロの位置から、AV女優の西野さとみとも噂されている。

 その頃の写真は添付を確認してください」


添付写真を見ると、原田モモヨには似ていない。

むしろもっとフェロモン出しまくりで、やや暗い感じのあるモモヨの目と

全然違う、明るいキャビキャビ系・・


「現事務所に所属した際に、整形したと考えられる。

 男関係は派手で、芸能活動と並行して、銀座のクラブで働いているので

 ここで出会った広告代理店○○の取締役と交際の痕跡があり。

 現在も男女の関係を継続中・・・・添付写真を確認してください」


今度は、ラブホテルから出で来る二人の写真・・・

警部ってタブロイド紙の感覚があるな・・・下世話でいい。

 

「交際相手とは別に30歳のホストとも肉体関係あり。

 細身のしょうゆ顔に弱く、身持ちは悪い。

 この2年で、他に数名の男と短期の交際を繰り返している。

 ホストの写真は添付でご確認ください」


今度は、マンションの一室の盗撮だ。

ここまでやると、やばいぞ・・・・


まあ、この情報をレポーターに入れておこう。

あいつも、細身でしょうゆ顔・・・ホスト風・・・


こんなはすっぱな女を、夜の六本木・麻布あたりに立たして

カメラを回して、少しでも似ている女がいれば、レポーターが突撃する。


「この写真ご覧ください・・・あなた似てますよね」


レポーターは、まずこれで切り出す。


で、リリーを呼んで、カメラはその似ているところを移していく。


近くで、モニターをチェックして、無線インカムで俺は指示を出す。


一日に30名近くを捕まえ、その名前と住所を聞き出す。


そして、VTRを警部に届け、それを科研がさらに分析して、

原田モモヨとの類似点を分析する。


これを1週間続ける予定だ。


面白いもので、5日間で、類似80%以上の女が3名浮かび上がった。


一人は、西麻布のチーママで32歳の古田ななみ

一人は、四谷に住むモデル さくら で26歳

最後の一人は、高輪に住むキャパ嬢で 24歳


整形痕があると分析された、いわゆる整形美女。


次は、この三人に対して、船越警部が下世話な調査を始める。


まずは、チーママから・・


「古田は、西麻布のクラブななみを経営する。

 その資金は、暴力団○○組からのもの。

 このクラブには、芸能プロ・トップシークレットの社長が出入り。

 トップシークレットは、プラスチックプロダクションの傍系。

 このクラブは、セクシーなサービスがあり要注意

 店内の模様は、添付の写真をご確認ください」


確かにスリットの入ったチャイナドレスで、男膝の上に馬乗りの

女の足が写っている・・・って警部のかもしれない・・


どちらにしろ、餌として用意したリリーの事務所と関係が深い。

これは面白い。 

 




そして、二人目のモデル、さくらっていう女の方は…


「さくらは、三鷹に在住・・・・モデルとしては、ターニングポイントに

 所属しているが、ほぼ仕事はない。

 銀座のクラブにヘルプとして出るのが仕事。

 ただし、不倫中で、交際している男性が、六本木のギャング団と関係の

 深い格闘家・・・聞き込みによると、DVの疑いがもたれている

 その格闘家は、西麻布のななみに出入りしている。

 ちなみに密会中の二人の写真は添付をご確認ください」


もはや趣味としか言いようのない下世話写真を確認する。


西麻布と芸能プロ・・・もうこれは疑惑濃厚だ。



そして三人目・・・・


「キャパ嬢河合とも24歳は、高輪の高級マンションに在住。

 ただしマンションの名義は、沢村和夫なるIT企業家。

 特に西麻布のクラブや芸能プロとの関係はない。」


どうもこれはただの他人の空似・・まさにドッペルゲンガーなのかと

思っていると・・


「ただし、整形は、先月の模様。

 ビフォーアフターの写真は添付をご覧ください」


確かに整形して、原田モモヨになっている。


「この整形について、キャバクラの同僚から有力情報。

 クラブに紹介人がいるとのこと。

 西麻布ななみが、それに該当するとして、現在潜入中」


だそうである。


これは逮捕が近いかも・・




☆☆☆☆☆☆☆



整形医は、原田モモヨを作り続けることを辞めなかったのだ。


それは、彼女を作り続けることが、自分の存在価値に思えたから・・・


西條メグの事件の後も・・・やめられなかった。


そして、今、組織から「紹介人が連行されたので、すぐ逃げて


姿を隠せ・・」という連絡が入った。


だが、彼は何もせず待っていた・・・・警察が来るのを


もう潮時だ・・・・

 

そして・・・整形医は、取り調べ室で、すべてを告白した。


そして、世の中に原田モモヨの若いころの顔を増やしていたことも…


「世の中は、醜いじゃないですか・・・・

 それを変えたかった・・・醜い奴らは皆殺し・・」


彼は狂ったその思いを、涙しながら語り続けた。


当然だが、捜査のきっかけとなった西條メグの事についても尋ねてみた。


「ああ彼女の骨格は理想的でしたよ。

 もう何度か整形ていたので、もともとの形ではなかったけどね」


これも、マッド整形医の原田モモヨ計画の一つなのか・・・


「いえ、これだけは違う」


「何が・・」


「これは彼女たちから、原田モモヨの写真を提示されたんだよ。

 彼女と一緒に来ていた男が写真を出してきた」


まあ、有名な懐かしのスターの写真を出してきたことに

別に疑うところはない。


「驚きましたよ、その男が有名な企業家だと知った時には…」


その男が、サクソンコーポレーション田村信一郎だったのだ。


「彼女はね、彼の希望を叶えるために、整形したんですよ。」


取調室のマジックミラーの向こうで、船越警部が深くため息をついた。

 

☆☆☆☆☆☆☆


しばらくして、俺は、西條メグの証拠品から、身元が割れ、六本木のもぐり整形医が逮捕されたニュースを見ていた。探す手間が省けた・・・・

この医者が、モモヨと他何人かしか知らなかったという事に納得した。

なんせ70歳を超えているんだから…


俺は、やくざの山崎に会っていた。


「田舎育ちの女が、六本木に被れて、ケバケバしい女王蜘蛛に変身してもそれは驚くことではないよ。」


「そうだよね、俺も整形でも気にしない派ですよ、

 でもあの辺りドラッグも蔓延しているらしいじゃない」


「ああ金持ちの成金野郎やポットでの有名人は、秘密のクラブに集まるんだよ。

 特権階級を味わうためにいい女とか薬を使う。

 それを用意するのが、俺たち…いい客なのよ

 まあ、やつらのやってることは、仁義も人情もない・・チンピラとは変らんがね」


「秘密のクラブって・・・」


「そこだよ、高木ちゃん、そういうところにいるのは、タレントとかモデルといっても

 高級コールガールなんだよ。女に50万とか100万とか払う。

 メグもその一人でね、その客の一人が、例の田村信一郎らしいのよ。」


俺は、原田モモヨの人生を追及するという、なかなか崇高な目的で動いているのに

やくざ上がりのプロダクション役員に、成り上がりのIT野郎、さらには整形した高級コールガールと、どんどん下世話な世界に落ち込んでいる。


ただ、ここで重要なのは、原田モモヨの若いころとそっくりな整形美女に田村信一郎がかかわっていたという事実だ。


これは、田村を調べるしかないな~ 

翌日、俺は「ITのホープ・田村信一郎」という企画書を局に出した。

もちろん1週間もしない内にGOが出た。

彼を取材する事が決定した。


・・・・続く


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