金のなる木の物語
俺は、会社に戻り、話を整理していた。
リロイズファンの凶器にかられた少年が殺された日、17歳のタレント原田モモヨは、同じホテルで、男と逢瀬を楽しんでいた。
そこには、若きスターモモヨのマネジャー山瀬もいた。
そして、そのモモヨのマネージャー山瀬は殺され、カレンダーには「双子のリロイズ」の文字が・・・そのリロイズは解散し、今はいない
たまたま同じ日に沖縄の同じホテルにいた。
「う~ん、しっくりこないな」
どちらにしろ、ここまて暗い話だとリロイズもモモヨも番組にするには、
かなり辛いな・・・
っていうとき、あるADが持ってきた資料に驚くべき話が手でいた。
原田モモヨの利権が四谷プロダクションに移っていたのだ。
「えっ、これはなんだ」
芸能界には、おいしい利権が数々存在する。
その中の一つが、原版管理権。
よく、ミュージシャンは印税で稼げていいね・・・桑田も桜井もそれで何億もたたき出すこれは実は、全てではない。
CDセールス一枚の取り分は歌唱印税1%作詞印税2%作曲印税2%といわれている。ところがだ・・・ここに原盤印税といわれているものがある。
所属事務所や所属レコード会社がもち、そこから制作費や広告費や管理費を払うのだが、その額が半端ではない。
値段に対する10%前後といわれている。
つまり作詞作曲より遥かに多いのだ。
3000円アルバムを一人の作詞作曲もするアーチストが100万枚売ったとする。彼には一枚から150円入るから、1億5000万円が入る。
長者番付に入る額だ。これがマスコミがはやし立てる額。
ところが原盤を持つ人間や組織には、一枚300円、なんと3億が入ってくるのだ。つまり倍・・・これが原版印税のすごいところ。
もちろんアーティストが持って丸儲けもある。
なんとこの権利は、基本、所属事務所や所属レコード会社が持っている。
ところが、なぜかそのアーチストと丸で関係のない他の事務所が持っていることがある。
利権として、やり取りされているのだ。
たまたま、別の番組でモモヨの映像と音楽を使用するため、俺は、
ADにリサーチを頼んでいた。
それを見て愕然としたわけだ。
・・・・なんとモモヨの原盤管理は、彼女の事務所から四谷に移っていた。
俺は、リロイズの事件は、モモヨではないかと疑っているところがあった。
この利権の移動は、モモヨ側が利益を差し出したという事かもしれない。
これで、話は変わってくる。
あの日、山瀬は、リロイズの事務所に助けてもらった
という筋書きに・・・・
すると、すべてがクリアになる。
そしてリロイズは、この取引の犠牲になっていたわけだ。
引退すると、アーチストのレコードは売れなくなると思っている人が多いが
とんでもない・・・
ビートルズは解散前1億程度が、解散後で2億5000万枚
美空ひばりや山口百恵は、毎年何千万、何億もの印税を稼ぎ出しているらしい。
伝説は、活動を停止しても、売れ続けるのだ。
実際、原田モモヨのCDは引退前に1500万枚だが、引退後も1000万枚
ベストアルバムが出るたびチャートをにぎわす。
その他にもDVDも売れ続けている。その額は、引退後だけで約250億。
原盤管理印税10%とすれば、25億である。
これが、四谷プロの懐に入っているのだ。
つまり、山瀬は、利権を四谷プロに譲渡している。
そう考えると、そこには理由がある。
雑誌記者のジョージは言う。
「彼は弱みがあったんでしょ。でないとそんな話に乗るわけないわよ」
つまり、今までの推理と間逆になってしまった。
山瀬が四谷プロに貸しを作ってプロダクションを作ってもらったのではなく、
むしろ山瀬が四谷プロに利権を差し上げ、守ってもらっていたということなのだ。
「やはり原田モモヨに弱みがあったんだ」
「それにしても、たかが男のスキャンダルに何億もだすものかな??」
「時代が違うからね・・今とは、男の影が出ちゃうと終わりだよ」
5日後の雑誌に、こんな見出しが・・・・
「35年前のお忍び旅行・・伝説の美女・原田モモヨの秘密」
まあ、雑誌記者のジョージに俺が流したのだが・・・・
やませ自殺の理由は、これだという衝撃的な内容に、マスコミは大騒ぎ・・・
俺が、仕掛けた理由は、番組の宣伝の為だ。
これで、世間はオンエアーまで忘れない、原田モモヨはいきなり話題の人になった。だが、この記事がえらいことを引き起こしてくれた。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
俺は、夢の中でセクシーなグラドルとの逢瀬を思い出して
桃源郷をさまよっていた。
その時だ。
「何か体が重い・・・・」
そう感じた瞬間、目を覚ました。
覆面をした男が、馬乗りになっていた。
「これ以上、深入りをするな」
俺の首には、ひんやりした金属の感触が・・・・
「もう警告はしない。これが最後だ」
そして、俺は何かをかがされ、また深い眠りに落ちた。
翌日、目を覚ましたときには、何もなかったような
ただそこにナイフが置かれいたこと以外は・・・
「このままでは殺される」それだけが俺にはわかった。
警察に行くべきか、アンダーグラウンドの組織に相談すべきか・・・・・
俺が選んだのは、後者だった。
犯罪番組の取材をした時に、知り合ったのが、山崎という○○組の若頭だ。
彼の組織は、昭和の戦後すぐから、演歌の興行権も持っていて、芸能界のルートが深い。実際、山崎の女は、売れないタレントであることが多く、彼のおかげでスターになった奴も多い。まあ世の中そんなものだ。
山崎に相談すると・・・・
「簡単じゃないの? 原田モモヨが動いてきたか、今利権を握る四谷プロだろうね」
「四谷と考えると、原田が少年を殺したのが濃厚だよ。
正当防衛とはいえ、殺人だからね。リロイズのファンに仕上げて、
その殺人を買い取る・・・原田はまだ商売を続けられる」
「さらにそのかわり版権を譲渡する・・・・・こりゃ上層部も知ってるね
となるとね、それを探る高木ちゃんはうるさいから消したくなると
いうものだよ」
「で、山瀬は、そんなに落ちぶれてたわけだろ。
いまだ利益を生むモモヨの利権から、分け前を欲しくなるというわけだよ」
「高木ちゃん、調べてあげるよ。」
裏社会からのリサーチと同時に、当然正面からのアプローチも必要である。
そこで、俺は、あの頃テレビの企画書を持って、原田モモヨの過去素材を借りるという大義名分コンタクトをとった。
そもそも、四谷プロは、半端なく大きな企業だ。タレント数は600名以上。
どれくらい売上げるか説明しよう
まずトップクラスの女優二人がCM
を各7本、一本5000万の年間契約で、撮影の都度、さらに1000万が年4回。
一人頭6.3億円!これに映画とドラマで3000万、バラエティーのゲストがいいギャラで150万が年8本。この二人で14億。さらに二番手グループのイケメンとアイドルが6人いて、3000万のCMが一人3本。各2億売上で12億円。
この8人で26億!
さらにいわゆる雛壇芸人が20名。
一本バラエティーにでて15~20万だが、営業は50~100万の間。
一人1.5億売上るから美味しい!
ここまでで56億円。
さらに年間3000万売上る俳優とタレントが100人。まあまともなのはここまで!
後は、平均350万だが400人いる。
ここまでで、100億円。
自社ビルも20階立てになるわけだ!
が、まだあるぞ!
例の音楽や映像の権利。
演歌にポップスのカラオケも原版管理は入る。
他社だが、五木ひろし・木の実ナナの居酒屋など30年以上カラオケベスト20に入っていて、この一曲で1000万以上のカラオケ印税が入っていることを考えると、
四谷プロ音楽出版には、10億以上入る計算。
さらにモモヨなどの過去の音楽のCD販売や映像のDVD販売に
音楽配信は20億。
これ映画製作にテレビ番組制作もやっていて、40億。
たぶん200億近い年商がある。
全面ガラス張りのおしゃれなビルに圧倒されながら、
応接室に通された、
俺は、古臭い応接の古臭い黒皮のソファに座った。
担当は、30前後の若い男だった。
さっそく企画書を渡し説明を始めた。
四ツ谷駅の目の前に12階建ての自社ビルを持つ四谷プロダクションは
数十年の歴史ある、いわば業界の老舗である。
俺は、古臭い応接の古臭い黒皮のソファに座った。
担当は、30前後の若い男だった。
さっそく企画書を渡し説明を始めた。
『あの頃テレビ:原田モモヨの1990~にっぽんのぐらふてぃ~』
放送時間 19:00~21:00
20年前の同じ時間、原田モモヨは公演を行っていた。
20時40分、彼女はステージの上から「引退」を表明した・・・・
「でですね・・・・あの伝説のスターを再現し、視聴者に過去のその時を
再現するまさに新しい形の番組なんですよ。」
担当者は、企画書を読むと、それを持って部屋を出て行った。
しばらくすると、白髪交じりの60過ぎのたぶん相当えらい奴を連れて戻ってきた。
俺は少し緊張を感じた。名刺には、常務取締役 中本健二とあった。
「なるほど・・・この企画、面白いですね。」
「そうでしょ。これは受けると思うんですよ」
「うちもDVDやレコードが売れるからね…これは前向きに検討しますよ。」
「ありがとうございます」
「ただし、あくまで、この企画書通り、いいイメージだけならの話ですよ。
昔の恋愛とかのスキャンダルは困るんだよね」
キタキタ~ という事は、やばいのかな~
「版権がうちだと聞いて、高木さんは、どう思いました?」
ここは慎重にいかないと・・・・
「いや~芸能界では、よくある話でしょ。
山瀬さんの所に裏から協力していたのは四谷さんだと思ってますよ」
この山瀬という単語に、一瞬、古だぬきの目がひきつった感じがした。
「山瀬君をご存じなんですか?」
「いえ面識はないんですが、この企画立てた後に探しているときに
例の自殺が・・・・」
「ああ、私どもも驚きましたよ。できるやつだったのに残念な結末ですよ。」
彼の所は小さなプロダクションだから、いろいろ手伝ってたんでね。
モモヨが引退すると決めた後は、権利の管理が大変だから、
徐々にうちに権利を移すことになったんですよ。」
理には適っている。
「そうなんですね。でも、まあ番組には関係ないですし・・・・」
ただ、探りを入れられているのは確かだ。これはそろそろ退散だな。
古だぬきは、念を押してきた。
「あくまで、スキャンダルとか暗黒面は出さないで下さいね。
それでないと、山瀬君も浮かばれないし、モモヨも引退しているし…」
俺は、考えていた。
ただ映像の使用許可を求めるだけなのに、わざわざ取締役が出てきた。
それだけ慎重に応対している事実が、違和感がある。
むしろ、俺が、彼の言うスキャンダルに近づいている事を知っていると見たほうが
しっくりくる。
スキャンダルもみけしの担当者が、俺の顔を拝みに来たという事だ。
この男、常務取締役 中本健二を調べなければ・・・
という事で、俺は芸能界に裏話といえば雑誌記者ジョージという事で、
さっそく呼び出した。
「高木ちゃん、すごい人に会ったのね。四谷の中本といえば、元々暴力団の
準構成員だよ。四谷プロに入ったのも、当時流行っていた写真誌のせい。
所属しているタレントのスキャンダルをもみ消す役でね」
「力技の人ってことか・・」
「それだけじゃないんだよ。中本は上手いんだよ。脅しつつも交渉する。
相手にメリットを持たせて、つまりおみあげを持たせて、もみ消すんだよ。
そのうち、敵と仲良くなるんだよ。
貸し借りを作ることで、四谷ブロを盛り上げ、役員まで登りつめている
まあ、できる奴なんだよね。」
たが、俺の所には、今のところ脅ししかしてきてない。
「どんなにインテリやくざでも、根はやくざだからね。
自分にメリットがなくなると、とことん冷血らしいよ。
楯突いた女優がいたんだけどね、写真誌にスキャンダルが出た時は、
抑えたんだけど、売れてきて、他のプロダクションに仁義をかいた移籍を
したら、すけこましをしかけて、セックス写真をばらまいて引退させ、
さらに自分のいた○○組の人間を近づけて最終的にしゃぶ漬けで
転落の最後まで、痛めつけたらしいよ」
つまり、蛇みたいなやり口らしい・・気を付けなければなさそうだ。
蛇の道は蛇という事で、その情報を、裏社会の友・山崎に入れた。