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テレビ制作会社・マッドテレビが行く !

今や、テレビの世界も不況の嵐!

予算は削られるは、ギャラは押さえられるは!

そのくせ、映像だけはどんどんきれいになる。

お陰で機材費編集費だけはねあがり、制作費は安くなり、クオリティは落ちる。


そもそも、3Dといい4Kといい、客は求めてない。

家電メーカー様様の為の国策だが、全く無駄遣いでしかない。


そう言う訳で、テレビ屋も食うためには、色々やらなきゃいけなくなる。



俺は、インテリである。

が仕事は、テレビのディレクター・・・やくざな稼業である。


花形職業だったのは、遠~い、遠~い、昔の話。

金はないし、睡眠時間もないし、何より安定もない。


だけど、好きなんだよね・・・テレビってのが!


食うためには、なんでもやります。

しかも楽しくってのが、俺の信条だ。


まずは、軽いエピソード1から、物語を始めよう。


ゆめが丘ニュータウンの分譲地は、まだ三割くらいしか売れていなかった。

世の中、不況なので仕方がない。


中田家は、ニュータウンの一角にあり、まだ両隣はサラ地のままで、

ぽつんと立っていると言う感じ。

午後三時、その家の周りは、たまに営業車のようなものが通っていくだけで閑散としていた。

だが、事件は、そこで起きていたのだ。


「奥さん、悪い・・・・でもあなたには死んでもらわないと・・・」


背広を着た40歳くらいのサラリーマンが、汗びっしょりでナイフを持ち、30代後半のちょっとセレブな主婦らしき女性にじわじわと近づいていた。


「あなたの旦那が悪いんだよ。旦那の銀行が、どうしても、金を貸してくれないんだよ。

そう、300万融資してもらえれば、助かるのに…」


こういうのを逆恨みというのだが、この主婦は、危機管理に優れていた。

1ケ月前、郵便受けに脅迫書がとどいた時点で、ちゃんと警察に届けていた。

おかげでこちらも準備万端。



というわけで、そろそろいいタイミング、その時だ、指令が出た。

リビングの壁が、ミシミシといいだした。

そして、今度は天井がグワングワンと揺れ始め歪みはじめる。


「地震だ・・・・・」


男は、殺意を忘れ、防御を考え、床に伏せた。

揺れは収まらず壁は、外から強く引っ張られる形で、ずれていく。


「今だ、行けい~」


外で、野太い声がすると、次の瞬間、バリバリ、グーンという音とともに

壁と天井は、いっせいに、何かの力で、引きはがさてしまった。、

つまり、床以外はなくなったのだ。


「逮捕だ~」


銭型刑事みたいな声とともに15,6名の制服姿の男が、部屋に乱入し、男を取り押さえた。


「米沢たかし、現行犯で逮捕する」


女は、呆然としつつ保護された。

外にクレーン車が4台、それぞれが壁や天井を吊りあげていた。



こんな破天荒な捕り物帳を仕掛けるのが、船越警部である。


「船越警部、こんな感じでいいですかね」


「いいんじゃない、高木ちゃん・・ほんと仕事が完璧だね」


「まあ、こんなのドッキリの延長ですから楽っすよ・・・・で、これ請求書」


「700万・・・・もう少し負けてよ」


俺、高木の本業はテレビのディレクター。

俺の勤めるMAD-TVは、いわゆるテレビの制作会社である。が、不況の折、仕事が減り、やり始めているのがこういう警察からの依頼による事件解決のお手伝いなのだ。


証拠現場の録画や録音、さらに捜査段階でのリサーチに録画、とにかく犯人逮捕に関してテレビ屋が出来る事なら何でもやっている

今日のは、大規模で、犯人が被害者を襲う所を現行犯で逮捕したいという依頼で


「じゃ、家を作って、やばくなったら、壁をひっはがして、確保するというので・・・」


実にくだらないが、犯人が予想をしていないという点で、効果は絶大なのだ。


日芸卒の映画オタクの船越警部だからこそのアイデア。


「でさあ、次の案件なんだけど…・」


今度は、名付けて「やどかり大作戦」らしい。


覚せい剤の売人の家族が、とあるマンションに住んでいるらしい。

で、右隣が、ずっと空き家で、左隣が、来週空き家になる。

なので、両隣に、家族を用意してほしい。

で、証拠を集めて、さらに逮捕のタイミングを計りたいという事だ。

まさか犯人も、仕込みの家族が見張っているとは思わない。


これで、予算は400万とのこと。

まずは、エキストラの手配だ。右隣の部屋には、若夫婦・・・これを月25のギャラで、左には、子供二人いる家族・・・こっちは月40

が、美術はいらないから、人件費くらいかな・・・高感度マイクのレンタルと小型カメラに家庭用ビデオは、会社のを出すとして、後は仮払い40万

1ケ月で済めば、半分くらいがもうけになる。


「いいですよ、でも最高で1ケ月にしますね、そのあとはまた別途予算で・・・」


「ああ、わかったよ」


こういう具合に仕事は続く・・・が、まさかあんな大事件に巻き込まれるなんて

その時は、予想だにしてなかったのである。



俺が出会ったのは、テレビという華々しい業界を舞台にしたミステリーというか

スリラーというべきか・・・・

軽佻浮薄を自負しているテレビ屋の俺が、結構シリアスな社会の暗部に関わるように

なってしまったちょっと悲しい物語・・・・

しかも、どうも、それはテレビでOAするには、ハードすぎる。

だから、こうやって小説にしてしまおうというわけだ。


ちなみに「登場人物は、現実の・・・・と一切関係ありません。」とだけ書いておこう。

信じる信じないは、読んでいるあなた次第という但し書きだ。


テレビの業界とは、ミリモウリョウがうごめく世界。

しかも、構図もキー局をピラミッドの頂点とした奴隷世界。

フジテレビに日本テレビにテレビ朝日に・・・・

それらの局を頂点に、下請けとして、テレビ制作会社が林立し、

さらに、その下に技術会社・美術会社・スタイリストにヘアメイク・・・

たった一つの番組に何百人もが関わる。


いまや局の人間だけで、番組を作るなんて事は、ほとんどない。

企画をたてて、台本を作り、ロケに行き、編集をする・・そういう

クリエイテイブに関しては、制作会社の時代といって過言ではない・・・

そのかわり、お金を儲けるという美味しいところは、局が握るので、下請けは、

金銭的には追い込まれしかも労働は過酷だ・・・

が、これは、まあどの業種でも同じだろう。


いわゆる皆さんが想像するような「テレビの仕事」は、制作会社がやっている。


まっ、くどい話はやめにするが、簡単に言うとだ、あんたたちは、おれたちがいないと、

M〇みたいなお笑いも、めざ〇〇テレビやスッ〇りのような情報番組も、

アイドルも、音楽も、野球も、サッカーも、楽しめないわけだ。


俺のいるテレビ制作会社MAD TVも、その一つ。

社員は20名、年商4億円の小さな会社。

俺は、この会社に10年目を迎える中堅ディレクターなわけだ。


まっ、はっきり言って、ギャラは局の半分以下

だから社長は、いつも渋い顔をして節約節約と叫んでいる。

が、仕事をやめない限り、ずっと現場で制作が出来るのは魅力的。

それと重要なのは、「ネクタイをしなくていい!」

ちなみに俺は、その理由だけで、ここにいる。


テレビ業界のあれこれは、おいおい勉強していただくとして、

そろそろ、あの肝心の話を始めようか・・・・


そう、俺がぶち当たってしまった、あの殺人について・・・・



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