Page2 憤怒と慟哭
由緒正しき嫡男にのみ継承が許される名“ザルク”。
ブリステア建国以来その掟が揺らいだことはない。 幻帝国ブリステア。王家の起源は男神ルシフェルと言われる。
ルシフェルの力の象徴はは白龍であり、その力を秘めた刀、白龍刀を使いこなすことができなければ皇帝を名乗る資格はない。
――しかし現在、その刀を持つのは“ザルク”ではなかった。
「親父が死んだ……だと?! 嘘をつけ、ふざけるな! オレは昨日会ったんだぞ? 話したんだぞ?」
厳粛な会議の場に罵声が轟く。
「てめぇらは主君を守らずして何してんだ!?」
青年は怒りに任せて諸侯らに詰め寄る。
部屋の隅で窓の向こうばかり見ていた男爵を目に止めた瞬間、凄まじい覇気を纏ったまま彼に詰め寄りそして襟首を掴む。
「男爵、つまりはてめぇもとは騎士だ。爵位くれたらさいならってことですか、主君を守れなかった上に職務放棄たぁいいご身分で」
フンと鼻で笑えば、男爵は顔を青ざめさせてお許しをお許しをとガタガタ震えながら許しを乞う。
その姿を青年はいかにもつまらないと言わんばかりに舌打ちする。
男爵を解放し、諸侯たちの方を見て止めを刺した。
「ああ、そうかそうか……皇帝も使い捨てってか。外道ども」
出ていこうとドアノブに手をかけた。
しかし部屋から出ることは叶わなかった。
「君の声、廊下まで聞こえてたよ」
会議の主役が現れたのだ。
物腰柔らかに、というよりはどこか幼さを残した口調で語るこの人は、
「このっ……裏切り者!」
裏切り者ことアーネイ・ノイルス。
「開口一番それとは心外だね」
にこにこと笑いながら座るよう促す。
青年はいかにも不服そうに上座に腰掛けた。
それを確認してアーネイは口を開く。
「じゃあ、始めようか」
まだ皇帝の葬送さえ終わっていなかったが、会議の話題は継承式のことであった。
淡々と会議は進行する。
進めば進むほどに上昇する怒りのボルテージ。
血気盛んな青年が再び立ち上がるまで時間はそうかからなかった。
「てめぇの今までは全部嘘か!?」
わなわなと震える声が静けさをもたらした。
「どういうことかな?」
アーネイは動じる様子なく涼しげに問い掛けた。
その瞳は果てしなく藍であった。
「僕は過去も未来もそして今も、嘘にする気はないのにな」
ふと零れた悲嘆に満ちた呟きは青年には届かない。