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Iota Subscriptum(下書きのイオタ)

短編ですのであっさりしてますがよろしくお願いします.

 イオタ、というのは僕の名前で、漢字を当てると「庵太」だ。


 大学生活も今年が最後の年で、僕たち芸術科コース(ほんとはもっと長い名前なんだけど、そんなの誰も使わない)の人間は、卒業するために卒業制作をする。それは人によって彫刻だったり、絵画だったりする。

「はぁ……」

 僕は一人、絵の具やら石膏像やらなんやらが雑然とした、この所謂美術室で脚立に座り、巨大な壁のようにも思えるキャンバスに向かう。まだ、下書きしかできていない。

 もう六月も下旬。窓の外はどんより暗く、蝸牛と香川県人しか喜ばないような雨天が続く。窓を開けようが閉めようが、じめじめした蒸し暑さは僕のTシャツを見る見るうちに着心地悪いものにしていく。……「触る触るうちに」、かな。


 ――この絵を、早く完成させなくちゃならない。


 下書きのイオタ、というのは僕の渾名で、僕の絵のほとんどが下書き止まりか、何とか(単位のために)完成させても、それは下書きに比べたら見るに堪えないものになることから、周囲のみんながそう僕を呼ぶようになった。

 悪口言われてる僕でさえ、このニックネームはぴったりだと思う。





 本当の意味での「下書きのイオタ」は――ほんとは「イオータ」だけど、古代ギリシャ語において「〝ι(イオータ)〟が直前の母音と合体してその母音が長母音化し、そしてその〝ι〟は綴らずに、その母音の下に小さく〝ι〟を書く」という文法上の事項のことだ。何で周囲のみんながこんなことを知っているのかといえば、この大学はなぜか哲学が必修で、その講義の教授が古代のアリストテレスとか、その辺の哲学者を専門にしていてさらに、その講義は必修なのに人気がなくて誰しもが授業をまともに聞かないから、そういう講義に関係のある余談をよくその教授がするからだ。

 まあ、その講義を取ったのは一年の時だし大抵の人もそうだから、僕がいなかったら多分こんな話なんて誰も覚えていなかっただろう。

「なにこれ?! まだ真っっっっ白じゃん!」

 二ヶ月前。何とか四年生になった四月。

「うん……まだ何にも決まってないんだ」

「まじで? あんた卒業するために大学入ったんでしょ? てことは卒業制作(これ)するために大学入ったのにこの三年間何も考えてなかったの?」

 いつの間にか僕の隣にパイプ椅子を持ってきて、でもそれに座らずに僕の顔を指さしてギャースと叫んでいるのは、同級生で幼馴染のカナだ。背は僕と同じぐらいで、スレンダーで、ポニーテイルがトレードマークの中学校からの陸上娘。学部は違うけど(確か文学部)同じ大学で、それに地元ではお隣さんだ。だから彼女とは幼稚園から小中高大と、……えーと、十九年ぐらいの付き合いになる。幼稚園とか小学校低学年の時のことはほとんど覚えていないけれど、たぶんその頃からずっと、僕は彼女に引っ張られて、いじめられっ子だった僕は彼女に助けられてばかりだ。僕が今こうして大学の芸術科コースにいて、あんな渾名を付けられても絵を描いているのは、他ならぬ彼女が原因だ。

 いつだったか、幼稚園だったか、小学校低学年だったか、もう時期は曖昧だけど、僕は休み時間にお絵かき用のスケッチブックだったか自由帳だったかに当時大好きだった恐竜の絵を描いていた。当時から知り合いだった彼女は、僕の、茶色のクレヨン一色で描かれたティラノサウルスを見て、

『上手だね、イオタくん』

 そう言って、にっ、と微笑んだのだ。

 ……それが原因。きっかけ。我ながら単純な奴だ。

 それ以来ずっと、僕は絵を描き続けている。漫画家、とかだったら画家になるよりかは幾分か道は開かれているかもしれないけれど僕の頭に浮かぶストーリーなんてないし、イラストレーターになるって言ったってそれ以上に難しいだろう。

 でも、僕は絵を描き続けている。

 たった一人、彼女のあの笑顔が見たい、そのためだけに。

 ――現在完了進行形。

 そういえば、彼女は勉強だけはからっきしで、高校の時なんかは毎日僕が教えたっけ。

 ……当時彼女は、同級生のリュウくんと付き合っていたはずなのに。

「え? だからわかんないってイオタ、現在完了進行形とか。例文出してよ例文」

「うーん、――I have been loving you since I was 3 years old、 とかかな?」

「…………へ?」

 たぶん彼女には、僕の英語が流暢すぎて聞き取れなかっただろう。と、僕は思っていた。

 実はその数日後にリュウくんと別れてたなんて知るのは、高校を卒業してからだった。


 窓を開けるとさあっと暖かい風が吹き込んできて、また季節が巡ってきたと寝惚けてぼんやりしている頭で思う。寝惚けてぼんやりしているから、隣にいる彼女の文句も全然頭に入ってこない。

 あと一年経ったら大学も卒業。絵で食べていく気も自信もないし、就職活動もすぐに心折れて三年の三月にはやめてしまった。幸い実家が田舎の農家で、上二人はどちらも東京やら名古屋の一流企業に就職してしまったから、僕が実家の跡を継いで、時間があるときに絵を描くのもいいかな、とそんな甘いことを考えていた。


 そしてそんな僕の隣に、彼女がいてくれたら、と。





 淡い灯り。真っ白なベッドの上。

「リュウくん、好き」

「俺もだよ、カナ」

「リュウくんのその立派な胸板も、がっちりした腕も、その顔も、好き」

「俺も、カナの髪も、慎ましい胸も、くびれた腰も、日焼けした肌も、みんな好きだ」

「ありがと、リュウくん」

「カナ、キスして」

「いいよ」

「んっ」

「どうだった?」

「うん、とってもいいよ」

「そっか」

「うん」

「ねえ、リュウくん、……来て」

「いくよ――」

 はっ

「夢……また、か」

 埃まみれの扇風機が生温い息を吐き出し、一年のときに中古で買った冷蔵庫がうんうん唸りをあげている。

 体中べとべとで、寝間着にしている首がよれよれのTシャツが体に張り付く。

 窓を開けたって西日が僅かに差し込むだけで、風なんて一ミリメートル毎秒も吹き込みやしない。そんな僕の狭い下宿先。

 ――高二から断続的に見る、この夢。

 ひどい夢だ。何がひどいって、確かにトラウマ的な夢だということもあるけど、それ以上に二人が言い合っている「好きなところ」が表面的なことばかりだってことが。僕は心のどこかで、カナがリュウくんのことをほんとのところ好きでいて欲しくなかったんだろう。まさか僕の深層心理が彼らの関係を奨励してこんな夢を見せているわけではあるまい。

「へー、で、どんな夢見てたの?」

「ぅわっ!」

 突然耳元でカナの声。焦る僕。

「いや、まだ夢が続いてるんだ、目を覚ませ、目を覚ま――」

「んなわけないでしょ!」

 ベッド横に座る彼女の肘鉄が僕の脇腹を襲う。小さい頃空手もやってたんだっけか。痛い。

 仕方なしに、ぼさぼさの頭を掻きながら体を起こし、彼女に向かうようにベッドに腰掛ける。地元の田舎では彼女とはお隣さんだったけれど、こちらでは、僕が大学から少し離れた安くて狭い下宿先にいるのに対し、彼女は大学近くの高くてセキュリティも万全な賃貸マンションに住んでいる。それなのに彼女は、月に一回ぐらい、こうして唐突に僕の家に現れるのだ。

「……おはよう、カナ。てかどうやって入ったの?」

 彼女は僕の(デスク)付属の回転椅子に座り、

「インターフォン鳴らしても出ないから玄関開けたら、開いた」

 そう言って玄関を指す。彼女はタンクトップにホットパンツ、裸足という格好。(いくら胸が慎ましいといっても)目のやり場に困る。

「何回来ても暑い、この部屋。クーラー()けてよ」

「クーラーは点けない主義なんだよ」

「で、どんな夢だったわけ?」

「……何しに来たの?」

 そう問うと、さっき玄関を指したのとは逆の手に持った四角い箱を僕の目前に掲げる。

「今日は、何の日でしょーか?」

 鼻先の白い箱からは、冷気と甘い香り。

「今日は、……九月二十二日土曜日、か。確か、『秋分の日』だな」

「アホか」

 声と同時に、さっきまで玄関を指していた指が真っ直ぐ眉間に突き刺さる。

「ぅがっ」

 そのまま僕はベッドに仰向けに倒れ込む。

「今日はイオタの誕生日でしょ。おとめ座最後の日。おめでとう、二十二歳。で、イオタが好きなショートケーキ買ってきたから一緒に食べよ」

 僕は眉間を押さえながら起き上がって答える。

「ありがとう、カナ。……僕ももう二十二歳か」

 生まれてから、なんだかひどく遠くまで来てしまった気がする。

 カナの存在も、僕からひどく遠い存在になってしまった気がする。

「あ、そういや私やっと、就職決まった!」

「え――」

「しかもトーキョー!」

 ……僕は生まれて初めて、「絶句」というものをした。同時に「二の句も継げない」も初体験だ。……あれ、これは「呆れてものも言えない」という意味だったか。動揺している。

 あの「甘い考え」は、文字通り甘くて――溶けてなくなった。

「ちょっと、……おーい?」

 僕の目の前で彼女に(てのひら)を振られて意識を取り戻し、

「お、おめでとう、カナ、じゃあこれは、カナのお祝いのケーキでもあるね」

「そう! じゃあ乾杯しよ!」

 そう言って彼女はうちの冷蔵庫から文字通りのビール五百ミリリットル缶を二本取り出し、「イオタが起きる前に入れといて冷やしといたんだ」と背の低い四角い(テーブル)の上に並べる。僕はベッドから立ち上がって、皿とフォークを二個ずつ水切りから取り出す。

「あ、あと包丁」

「え?」まさか。

 真っ白な四角い箱を開けたら、案の定ホールケーキが出てきた。

「全部食えるのか、これ……」

 僕は彼女の正面に腰を下ろしながらぼやく。

「だいじょーぶだいじょーぶ、食べれなかったら私が食べるから」

 ここで「太るぞ」と言ったら、ダメだろうな。

「ここで『太るぞ』って、イオタは言わないんだよね……」

 彼女はケーキを切り分けながら、少し寂しそうに独りごちる。正面で立ち膝をしてケーキに向かって屈む彼女。やばいやばい胸が胸が。慌てて目を逸らす。

「だって、そういうの女の人は気にするだろ?」

「そうだけど……ま、いーや、じゃあ乾杯!」

「乾杯!」

 僕と彼女は缶を軽くこつんとぶつけ、プルタブを引く。ぷしっと気持ちいい音。夕方からビールなんて、だいぶ贅沢だな。

「ケーキうまー」

 彼女はにこにことショートケーキを頬張る。

「ほんとだ、うまい」

 僕もケーキを口に入れてそう言ったところで、

「ジリリリリリ」

 携帯電話が着信を告げた。携帯はベッドに備え付けの枕元にある台に置かれていて、僕は立つのが面倒でベッドに寝そべってそれを掴む。携帯に表示された名は、「母」。

「ちょっとごめん、電話出るよ」

「誰?」

「母さん」

 そう言われて彼女は体を少しびくっとさせたように見えたが、気のせいだろう。

「もしもし? 何、母さん」

「久しぶりだねぇ、二十二歳の誕生日おめでとう」

 確かに久しぶりの実家の母親からの電話だったけれども、

「あのさ、母さん、今友達が来ててさ――」

 と言いながら(テーブル)の方を見ると、そこにカナはもういなくて、ばたん、と玄関が閉まる音が聞こえただけだった。机の上には、飲みかけのビールと食べかけのケーキ。

「……何が『だいじょーぶだいじょーぶ』だよ」

 僕は、呆れて、そう、「二の句も継げない」。

「ん? どうかしたのかい、イオタ」

「いや、なんでもないよ、で、用件はそれだけ?」

「いんや、それは前置きで、あんた大丈夫なのかい、卒業は?」

「うん、大丈夫だよ母さん。単位もちゃんと取ったし、あとは卒業制作だけだ」

「そーれが一番心配なんじゃないかい」

 母さんは言葉通り心配そうに言う。和室の黒電話の横に座って話す母親の姿が目に浮かぶ。後ろではセミの――あるアニメで知ったけど、確かヒグラシだ――鳴く声がする。もう夏も終わり、夏休みももう終わる。九月が終わる。

「私ゃねぇ、あんたが学校でなんて呼ばれてるか知ってるんだからね」

「えっ? なんでそんなこと知ってるんだ?」

「隣のカナちゃんから。あんたもカナちゃんぐらいうちに電話してきなさいよ。かわいい三人息子の一人なんだから」

 なんだそれ、とツッコむ間もなく、

「それでね、その後カナちゃんに訊かれたの。『イオタって、巨乳が好きなんですか?』って」

 その後ってどの後なんだ? え、まさかカナが僕の実家に電話してるのか? カナがカナの実家に電話したのをカナの母親経由で聞いたのではなく? っていうか何訊いてんだよカナは?! それにカナカナ言いすぎてヒグラシの鳴き声みたいになってるし!

「ちゃんと答えといたわよ、『そりゃ、ないよりあるほうがいいんじゃない? 本棚の奥とかはそういう本が多かったしね』って」

「おい、何てこと言って――」

「冗談は置いといて」

 …………おそらく冗談ではなかっただろう。言い訳にしかならないが説明すると、僕が巨乳もののエロ本しか持っていないのは、カナとは幼馴染で、ほんとに小さい頃は一緒にお風呂に入ったり、プールに行ったりしていたから、本の上でも巨乳じゃない胸を見るとどうしても彼女の胸を思い出して恥ずかしくなってしまうからだ。――そう、幼稚園とか小学校低学年の時のことはほとんど覚えていないなんてのは真っ赤な嘘だ! そして因みにここでの「赤」というのは色ではなくて「それ以外の何物でもない」という意味だ。「赤の他人」とかいうのもそれだ。豆知識。

 母さんがこの話をすることが予想できたから、カナは帰ったのか。

 ……とかどうでもいいこと考えていると、

「ほんとにカナちゃんが訊いたのは、『何でイオタはイオタって名前なの?』って」

「……、そうなんだ」

 僕も、気になる。

「あんたの名前ね、ほんとにその『下書きのイオタ』から来てるのよ」

「え――」

 そうだったのか。「庵で生まれたから」とかじゃなくて良かった。聖徳太子を知った小学校の頃はそんなことを考えたこともあったけど。

「でもだからって、その、今僕が言われているような理由じゃないよな?」

「もちろんそうよ。そんな出来損ないな名前いくら三人目でも付けるわけないでしょ」

 「でも」ってなんだ「でも」って。出来損ないな名前って外見上変わらないでしょうが。

「お父さんが付けたの。昔も言ったかもしれないけど大学で哲学をかじっててね。まあお父さんバカだったから、ギリシャ語さっぱりで入門の途中でやめたんだけどね」

 母さんの苦笑している顔が目に浮かぶ。

「で、そこで『下書きのイオタ』を知ったみたいで。私に『三人目の息子には(いお)()って名前を付ける!』ってその日の帰りに言ってたの」

「……母さんと親父って、大学から付き合ってたの」

「ぶーっ、残念、高校の二年からでした」

 ぐはっ、あんまり聞きたくなかった……。

「てか兄さんたちの名前はそれ以前に決まってたのか」

「うん。『授業中暇だ』って言ってよさそうな名前ずっとノートに書き出してたんだって」

 だから親父はバカだったんだろう。いや、バカだからそんなことしてたのか。

「でね、話は戻るけど、どうしてお父さんがその名前にしたかっていうとね、お父さんはこう言ったの。『下書きのイオタっていうのは、表記上現れてなくても確かにそこにいて、直前の母音を伸ばすんだよ。そんな風にさ、将来庵(いお)()が嫁さんを貰ってさ、もし庵太が彼女の傍にいられない時も彼女を支えてやれるような、もし庵太が先に死んじまってもその思い出で彼女が生きていけるような、そんないい男になってほしい、っていう俺の願いが込められているんだ。それにほら、母音ってなんか女の人みたいだろ?』当然そこで私のボディブローが炸裂したけどね」

 そこでふふふと笑う母親に心底恐怖を感じた。

「……そうだったんだ」

「そういうこと。だから、卒業制作、何作るか知らないけど頑張りなさい。もう頑張ってるだろうけど。それじゃあ、正月には完成させて帰ってきなさいね。お盆帰ってこなかったんだから」

「うん、わかった。それじゃあまた」

 電話を切る直前、

「カナちゃん、大事にしなさいよ」

 母さんはそう言った。

 もちろん、カナは大事なひとだ。

 彼女は幼馴染。

 僕の初恋のひとで、

 今でも恋し続けているひと。

 ……ああ、結局カナが僕の実家に電話しているか訊くのを忘れた。今度会ったときにでも訊いてみよう。

「はぁ、……何だかなぁ」

 慌ただしくカナがやって来たと思ったら帰り、母さんからの電話の声もやんだ、静かな部屋(ワンルーム)

 テーブルには食べかけのケーキと飲みかけのビールが二つずつ。

 そこにいるのは、ただ僕一人。


 カナは、就職が決まってしまった。しかも花の大都会、東京。

 僕が田舎の実家を継ぐとしたら、卒業したらもうほとんど会えなくなってしまう。

 ……そんなのは、イヤだ。

 でも、どうすればいい。今から就活をしたって、東京どころか就職できるかさえ危うい。

 僕は、彼女と一緒にいたい。これまでみたいに、これからもずっと。

 なら、どうすればいい……。

 答えの出ない問い。漠然とした不安は降り積もっていく。

 でもやっぱり、この想いは、この想いだけは伝えなければ。

 たとえその恋が破れても。たとえそれからの僕が一歩も前に進めなくなったとしても。

 ――あの絵が完成した時に。

 僕の隣で回る、壊れて首を横に振らなくなった扇風機は、僕の思いに無言で「YES」と答えてくれているようだった。





 実家の親父から送られてきたメールに添付されていたのは、「今年もいい感じに稲が育ったぜ」という黄金の絨毯が広がる中、母さんが溢れんばかりの笑顔でピースしている写真。とうとう親父はアイフォンに手を出し、それを使いこなしている。

「もう、日が沈むのか……」

 対して僕はといえば、どんどん日が短くなる中、いつものようにキャンバスに向かっていた。窓の外、街並みが橙色に染まるのを見ながら、僕は溜息を()く。

 夏休みが終わって、もう一月(ひとつき)と十日。十一月も今日から中旬へと差し掛かる。気温はどんどんと下がり、寒がりの僕はコートと手袋はもう手放せなくなっている。部屋の中は、まだ暖かいけれど。

 目の前のキャンバスは、まだそのほとんどが白い。僕は右手に持った絵の具の付いていない彩色用ナイフを、中指を軸にしてくるくると回す。――こんなことばかり、器用になっていく。

 夏休みに入る少し前の七月の初めから、一週間のうち平日は毎日この所謂(いわゆる)美術室に来て彩色を始めているけれど――だからお盆にも実家に帰らなかった――全く進んでいない。締め切りは二月の初め。果たしてこの絵は塗り終わるのか。

「うう、眠いなあ……」

 ふぁああ、と大きな欠伸(あくび)。昨日は深夜のファミレスのバイトで、それが終わってからずっとここにいるからだ。

 僕は、自分でもわかるぐらいに焦っている。あの夏の、彼女の就職が決まったと聞いたあの日から。これから僕が何をすればいいのか、その答えはいまだに出ていない。

 ふぅぅ、と長い溜息を()いて前のめりになり、キャンバスにこつんと額が当たるのを感じ、僕は目を瞑った。


 ムー、ムー、ムー、……。

 僕の携帯がヴァイブレーションしている。ジーパンのポケットの中だ。

 どうやら僕は、脚立に座ってキャンバスに頭を預け、絶妙なバランスを保って眠ってしまっていたようだ。

 ぼんやりとした頭で携帯を取り出すと、表示された名は、「カナ」。ゆっくりと体を起こしながら、それを開いて通話ボタンを押す。

「もしも――」

「イオタ! 今日私の誕生日なんだよ! それなのに――」

 そこまで聞こえてこの部屋の扉が勢いよく開く。

「――どんだけ心配したと思って――」

「ぅわっ」

 扉の音で体がビックリして、そのバランスを崩し、

「ちょっ、危ない――」

 がしゃーん

 駆け寄って僕を支えようとした彼女を巻き込んで、脚立と僕は床に倒れ込んだ。目を瞑る一瞬の間に、僕は痛みさえないものの、手で何かに触れる。柔らかくて、温かい――

 目を開けると、彼女は僕の下敷きになって床に仰向いていて、僕はその上に縦四方固めをするかのように乗っていて、僕の手が触れていたのは、カナの胸のあたりの……着こまれたコートだった。これだけ分厚ければその下の彼女の胸なんて感じる余地はない。

 けれど。

 時が止まって感じられる。

 自分の早鐘を打つ心臓と、彼女の鼓動が体に響いてくる。自分の熱と彼女の体温が混ざり合っていく、そんな感覚。

 周囲はすでに暗く、この部屋を照らすのは半月と満月の間の、少し膨らんだ月と淡い街の灯りだけ。つまりこの部屋はほぼ真っ暗。そして顔のすぐ前、目の前には、僕の体の下には、最愛の人が寝ていて、彼女は僕を見つめている。図らずしも僕は寝起きだ。――やばい。

「ごめん、大丈夫だった?!」

 僕はまだぼんやりする頭を働かせて体を起こす。

「うん、体は平気。でも……」

「ん?」

「イオタ、ちょっと……当たってるよ」

 ごめん、と言って立ち上がろうと思った。でもその前に、

「でも、いいよ、今、誰もいないし、」

 ――それは、

「……来て」

『ねえ、リュウくん、……来て』

 高二から続く、あのひどい夢。

「うっ――」

 フラッシュバック。トラウマ。僕は口を手で押さえてばっと立ち上がり、床に倒れる彼女から、一歩二歩と後ずさる。

「えっ……」

 自分から後ずさる僕を見て、彼女は驚愕の表情。仰向けのまま、僕から目を逸らす。

「私、そんなに、ヒかれるほど、魅力ないかな……」

「いや、ちがっ、」

「ごめんイオタ、」

 伸ばされた僕の手を躱して彼女は、持ち前の運動神経で素早く立ち上がって部屋の扉へと走る。扉の前で僕へ振り向き、

「――じゃあ、ね」

 彼女はそう言って、無理に、笑っていた。

「待って!」

 彼女は部屋から出ると、幽かな街灯りと月明かりだけを頼りに暗い大学の廊下を疾走する。揺れるポニーテイルはその僅かな光を写して美しくて、僕は一瞬見蕩れ、(かぶり)を振って僕も追って部屋を出るけれど、中学からの陸上部短距離のエースは伊達じゃない、瞬く間に彼女は廊下の角。彼女がそこを曲がるとき、彼女の顔の横の中空でこの暗黙(くらくしずか)()(なか)光っていたのは、たぶん、涙だ。

 どうして、僕はいつも彼女を傷つけてしまうのだろう。どうして……。

 僕はただ、彼女が好きなだけなのに。

 少しの間、僕は暗い廊下で放心して、立ち尽くしてしまっていた。

 ――だめだ、彼女を追わなければだめだ! ここで追わなければ、彼女を独りにしては、男が、(すた)る。

 僕はもう、「立ち尽くした・・・・」のだ。立ち止まるのは、もうやめだ。

 これからは走り続けるだけだ。彼女を追って。

 拳を握り締め、彼女の消えた廊下の角へと走り出す。

 陸上部エースの彼女と、ずっと美術部の僕では走っても走っても距離が遠くなっていくのはわかりきっているけれど、その遠い先にいる彼女が少しでもこっちを振り向いて、僕のことを待ってくれるように。

 僕は、必死に走り続けるしかない。

 暗黙の廊下に、響く足音は一つ。彼女は、どこまで行ってしまったのだろう。もう大学を出ただろうか、それとももうタクシーを拾って僕の手の届かない遠くへ――

 どんっ

「遅いっ」

 廊下の角で、僕は何者かに突き飛ばされた。背中から着地、何とか頭は守った。

「追いかけるまでが遅い! ……追ってこないかもって、ちょっと心配になったじゃん……私が本気で逃げたら絶対イオタじゃ追いつけないし」

 床に背中を結構強く打ちつけて呼吸が困難になって「ぐぅの音も出ない」。……動揺している。

 目の前で泣いているのは、紛れもなくカナだった。

「ゴホッ、……ごめん、……その、ヒくわけないじゃないか、カナの、か、体に」

 彼女はそれには答えず、咳き込む僕に手を差し伸べる。僕はそれに掴まって何とか立ち上がる。

「突き飛ばしたのは、待たせたのとおあいこ」

 彼女はつーん、と僕から顔を逸らす。

「……あのさ、」

 僕は、彼女の手を掴んだまま、もう一方の手をそこに重ねる。ぴくっ、と彼女の体が反応する。

「あの、さ……、もう少し、もう少しだけ待ってくれないか」

 我ながら頼りないことを言う。

「あの絵が完成するまで。あの絵が完成したら、今度こそ、伝えたいことがあるんだ」

 彼女は俯いて、しばらく黙っていた。一度洟(はな)を啜り、もう一度洟を啜った。

「わかった……でも、待つのは今年いっぱいだから。それ過ぎたら、もう、知らないから」

 彼女はそこまで言うと僕が弱々しく握っていた手を振りほどき、僕にポニーテイルを向けて廊下を歩きだした。

「ありがとう、カナ。僕のせいでこんなに遅くなったし、送っていくよ」

 僕がそう言うと、今度はスカッとした笑顔で、

「じゃあ、正門まで競走ね、負けた方が私の誕生日ケーキと飲み代(おご)りね、よーい、ドン! あ、イオタ、荷物忘れてるよ?」

 彼女は、「どん」でスタートダッシュを決めた僕に楽しげに叫ぶ。

 折り返す僕とすれ違う時、

「ばか。……今日だと思ったのに」

 彼女はそう呟いた――気がした。


 今年は、もうあと一月と二十日。

 僕はこの数十日間、キャンバスに向かってラストスパートをかける。

 ……まあ、この日の飲み代とケーキの代金は、スパートをかけたところで僕の驕りになることは大方決まっていたのだけれど。





 十二月、二十四日。

「やっと、完成したんだね、イオタ」

「ああ……」

 空はどんより曇り空、こんな天気だとこの部屋は、まだ昼過ぎなのに灯りを点けないとほとんど真っ暗になる。

 暖房が控えめに吐息をする部屋。僕も彼女も、そこまで厚着していない。

 もう十二月も後半。一年が終わり、大学生活もあと三ヶ月で終わる。

 隣でカナはううんと呻きながら、顎に手を当て眉間に皺を寄せて「考える表情」。

「でもこれ、何描いてあるの?」

 彼女がそう言うのも当然だ。いや、確かに下手くそだけれども。

「テーマは『ひと』。説明すると、まずキャンバスの左上から右上を結ぶ斜線をイメージして。その斜線上が〝現在〟で、それより右上が〝過去〟、左下が〝未来〟。〝過去〟の部分の中心からずっとこちら側に向けて道が続いているだろ? これがひとの人生であり〝運命〟。で、〝過去〟の中心の、道の始まりの小さな円、つまり生まれた瞬間が白で塗られているのは、『人間は生まれたときは〝白紙(タブラ・ラサ)〟である』って言った、えーと……誰かの言葉から。この道が通っている黒と赤を基調とした、混沌とした渦である〝過去〟は、いろいろな記憶が混ざり合ってそれは黒色となり、でもその中でも嫌な記憶である赤は混ざらず残り続ける。この黒色ね、相当絵の具使ったよ、いろんな色混ぜたからね。で、それで〝現在〟のこのラインまで〝過去〟の色がはみ出しているのは、〝現在〟が〝過去〟の影響を色濃く受けているから。そうしてひとは〝今〟〝ここに〟いる」

 僕はその〝現在〟の仮想ライン上に立つ一人の人指す。性別不明の、向かって右半身が白、左半身が黒と赤の混色の、クロッキー人形みたいな、ひと。

「そして道はここで途絶え、その先は真っ白な〝未来〟。ここはなんにも塗ってない。でも、ただそこには〝今〟にいるひとが描く未来の――下書きの、自分がいる」

 ……単純で、中二みたいなテーマ。

 半分真っ白なんて、いつも下書き止まりで中途半端だった僕にピッタリじゃないか。

「『下書きの自分』って、うまいこと言ったつもりかっ」

 彼女が肘で僕の脇腹を小突く。

「でも、完成したね」彼女は微笑む。

「ああ、完成した」僕も微笑む。

 ほとんど同じか、僕のほうが少しだけ高い背。

 彼女の横顔を見ながら、僕は意を決する。

 そう、絵は完成したのだ。

「あのさ、……この絵が完成したら言いたかったことがあるんだ」

 それは彼女にもわかりきった前置き。

 彼女はこちらを向く。僕の顔はもう湯気が出そうだ。

 彼女はそれを見てか、目を逸らして、

「私もね、言いたいことがあるんだけど、……先に言うね」

 僕が先を譲るであろうことを見越して、彼女はそう言う。

「私はこんな性格だし、ガサツだし、料理へただし、片付けるのも苦手だし、頭もあんまりよくないし、腕っぷしが強いし、就職先も実家から遠いし、給料も安いし、……ぼそぼそ、……だし、」

「ぼそぼそ」の部分は、「胸も小さいし」と聞こえた。

「……そんな私でも、いいの?」

 そう言ってちらりと僕を見て、目が合うとまたすぐ逸らした彼女の頬は、桃のようなピンク色だ。

「もちろんだよ、カナ」

 僕と彼女は向かい合い、僕は両手で彼女の肩を掴む。

「……待たせて、ごめん」

「……ばか」

 彼女も、僕を見つめてくれている。

「ずっと、好きだった。生まれた時から好きだったんじゃないかってぐらい、ずっと前から。高校の時、カナがリュウくんと付き合いだした時、悔しいような、悲しいような気がしたけど、僕なんかと付き合うよりずっといいと思った。でも、……でも、やっぱり諦められなかった。僕はカナが好きだ。その綺麗で長い髪も、その性格も、顔も、その、……胸も、みんな好きだ、だから、」


 バシーン


 僕の頬に衝撃が走る。強制的に僕は右を向かされ、視界が真っ白――な僕の絵の一部を映す。

 しまった、胸は禁句だったか……!

「ばかっ、私がどんだけ待ったと思ってんのよっ! もう、私、二十二歳だよ……ズッ、……ずっと、待ってたんだから……」

 強烈に平手打ちされた頬をさすりながら彼女に目を戻せば、彼女の瞳から大粒の涙がぽろぽろ零れていた。

「……ごめん、カナ」

 僕は彼女を抱き締める。彼女は柔らかくて、彼女がコンプレックスにしている胸だって柔らかくて、思っていたより華奢(きゃしゃ)で、その髪からは甘い香りがした。対する僕は絵の具の臭いしかしないんじゃないか、というか抱き締めてよかったのだろうか、もう心臓は肋骨を叩き折りそうだ、でも、伝えなければ、……今しか、今しかない。

「結婚、しよう」

 彼女の耳元で、僕は囁く。思っていたより、うまく言えた、と思う。語尾が疑問でないのは、なんとなくそう言わなきゃいけない気がしたからだ。

「……うん」

 彼女は僕を抱き返し、僕の肩に頭を乗せたまま、頷く。

「でも……」と彼女は体を少し離し、僕の顔を見つめる。

「でも、仕事どうしよう、せっかく決まったのに……」

「僕の、『庵太(イオタ)』の名前の由来、聞いたんだってね」

 彼女は抱かれた体を少しだけぴくっとさせて、

「うん、ごめんね、黙って訊いて」

「いいよ。それでね、僕の名前は、『僕が近くにいなくてもカナを支えられるようなデカい男になれ』って名前なんだけど、」

 そこで僕は、少しだけ深めに息を()く。

「――僕は、カナを一人にするなんて無理だ。僕が、カナについて行くよ。主夫になる」

「でも実家は?」

「親父も母さんも、まだまだ元気さ。カナの仕事が続かなかったら、実家に帰ればいい」

「でも――」

「僕もパートするしさ、大丈夫だよ」

「…………うん、ありがとう、イオタ」

 そう言って、彼女は目を瞑った。

 ………………やることは、わかっている。

 心臓はすでに破裂しそうなほどで、僕の顔は耳まで真っ赤。

 生唾を飲み込む。

 僕も目を瞑ったほうがいいのだろうか、いや、そうしたら彼女が見られないじゃないか、つまり目を開けたまま――

「もう、遅いって」

 彼女はぱっと目を開け、動揺しっぱなしの僕に優しくキスをした。

 僕は、目を開けたまま。

 左心房が間違って鼓膜を叩いてるんじゃないかってぐらいに、自分の拍動が聞こえ、

 中枢神経が間違って唇に直接あるんじゃないかってぐらいに、彼女の体温が伝わる。



 ぼやけていた彼女にピントが合う。彼女は僕から少し離れ、僕の右手は勝手に自分の唇を触り出す。

 初めてのキスは、頭が真っ白で、ただドキドキして、ただ、温かかった。

『「どう、だった?」』

 固まる僕に、ふと放たれた彼女のその言葉が、僕を現実に引きずり戻す。

 その言葉が、僕の心にチクリと刺さる。

 そうか、彼女は初めてではないのだな、と。

「ねえ、……どうだった?」

 僕は彼女のその問いから逃げたくて、

 醜い嫉妬をする自分から目を背けたくて、

「雪が――」

 降りそうだね、と言おうとして彼女に背を向けて窓の外を見て、

 降りだした雪に目を奪われた。

「雪だね」

 隣に来た彼女が独り言のように呟く。

 ……なぜだろう。

 空はこんなにどんより曇っているのに、降り注ぐのが水でなくそれが凍ったものなだけで、ここまで感じるものが違うのは。

「……ごめん、ちょっとリュウくんに嫉妬してた」

 ――でも、心が洗われるのは、同じだ。

「ありがとう、頭が真っ白になるほど、……その、すごかったよ」

 口が、彼女を最先端に感じた感覚器官が、その興奮のままに滑り出す。

「よかった、嫌だったらどうしようかと思ったよ」

 彼女も少し照れながら、外の雪を見ながら言う。

「「あのさ――」」

 僕たちは同時に向かい合って一緒に喋り出して、今度はどうぞどうぞと譲り合う。今度は僕が先。

「今から、どこか行かない? 食事とかさ」

「でも、今日とかどこも混んでるよ? クリスマスイヴだし。予約とかしてんの?」

 ……そうか、今日はクリスマスイヴだったのか、気付かなかった。だがここは知っていたふりだ。

「いや――」

「じ・つ・は、予約してましたー、行こ行こっ、どーせ使い道なくてバイト代貯まってんでしょ?」

 どうやら彼女の用件も同じだったらしい。彼女は僕の腕をとる。

「そうだね、行こうか」

 僕たちは部屋の隅にある机に放られたコートを羽織り、部屋を出、二人並んでこつこつと冬休みで静かな廊下を歩く。

 ホワイトクリスマスなんて――ほんとはイヴだけど、この二十二年間で初めてだ。もしかしたら、誰かからの贈り物かもしれない。


 そんなことを思いながら、僕は隣で笑う彼女を見て微笑む。


 これからのことは、どうなるかわからない。

 僕の卒業も、彼女の仕事も、僕の実家も。

 僕たち二人の将来も。

 誰にも、わからない。


 だって本当の未来は、

 下書きさえされていない真っ白なキャンバスなのだから。

大学で「下書きのイオ(ー)タ」というのを知って,そこから連想して書いたものです.こういうエンディングを書くと死にたくなるのでできるだけ書きたくないです.

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― 新着の感想 ―
[一言] 素朴な話だけど好きでした。ただ話を書くのではなく、こういう言葉の意味とかをテーマのひとつにしている話はいいですね。 ってかこれがいつぞや言ってたヒロインはみんな貧乳っていうあれですなw
[一言] はじめまして* 読ませていただきました** とても面白かったです\(^o^)/ これからも更新頑張ってください(*^-^*)
2012/08/25 20:37 退会済み
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