表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

軍手

作者: 原沙良葉

彼が私を恨んでいるかどうかなど、私は知らない。


彼は吸い込まれていったのだ。あの軍手に。


私の目の前で。


トラウマを植え付けられこそすれ、彼になんの危害を加えたわけでもない私が何故恨まれなければならない?


第一私は無二の親友を失ったんだ、彼だって私と離れて悲しんでいるはずだよ、優しい男だったから。


あれは冬の夜だった。私たちは酔っていた。


仕事の成功に、いや、私たちの才能に歓喜して。


ふらふらと通りを歩いた。そして彼がーーいや、私が?ーー軍手を見つけたんだ。


そうだ、彼が見つけたんだ。私のせいじゃない。


戯れに軍手を手にはめた。ひらひらっと右手を振った。


彼は笑った。私は怒っていた。


彼が私を馬鹿にしたのだ。いや違う、私は彼に嫉妬したのだ。彼の才能に。成功はしなかったが。


だから彼と飲んだのだ。成功を笑ったんだ。


軍手はなんだか暖かそうに見えた。私はそれを貸せと言った。


彼は笑ったまま突っ立っていた。貸してくれる気はないようだった。


奴にはもともとそういうところがあったからね。優しさという言葉からはほど遠い男だった。


私は彼の左手をつかんで軍手を奪おうとした。なのにつかんだと思った左手は消えていた。



消えていたんだ。


彼も驚いたようだった。


そのまま彼は消えたんだ。ああ、空が綺麗な夏だったんだ。今となってはどうして軍手をはめたのかも思い出せないがね。


しゅるるっと。


彼が消えて私は泣いたよ、そうだろう?一緒に成功に向け頑張ってきた仲間を失ったんだ。


それに彼は私の兄弟だったからな。



・・・なんだかやけに暗いな。


うん?ここかい?


君はそんなことも知らずに来たのか。ここは軍手の向こう側だよ。


なんたってあの時吸い込まれたのは、この私の方だったのだからな。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] お疲れ様です。hiromaru712です! まずは小説家デビューおめでとうございます。 ライバル出現か…w。 世にも奇妙な物語っぽい短編、楽しく拝見しました。 続作も楽しみにしてます♫
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ