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2 母の姿


 メイドに案内され、一階の食卓に着くと三人が着席して待っていた。


 一人は銀髪に黒い瞳を持つ、伯爵と思われる男性。年齢は感じるが気品は漂っている。


 二人目は鮮やかな紫の髪を巻き上げ、宝石や金細工の装飾品を沢山身に付けた、夫人と思われる美しい女性。ドレスの胸元が開いたデザインで、香水の香りが部屋に漂っている。


 三人目はリィティアより少し体格が良い銀髪の少年。父の気品と母の整った容姿を受け継いだ甘い顔立ちをしている。ゲームの攻略対象の一人『セリック』に違いなかった。



「お嬢様の稽古が終了致しました」

「そうか」

「リア、早く座りなさい」

「……」



 縦長のテーブルには、目を泳がせるほどの料理が並べられており、四人が食べ切る量ではなかった。私は疑問に思い口を開く。



(お母様、これで呼び方合ってますかね…)

「お母様、食べ切れず残った料理はどうなるのですか?」

「捨てるわよ、逆に、他にどうするの?」

「そうなのですね…」



 花の様に飾られた惣菜など、見た目にも気を配っている。貴族の価値観と日本人の価値観はどうしても合わないらしい…。



「リアから話すなんて珍しいわね、何かあったのかしら?」

「料理が綺麗だと思いまして」

「王宮の食事と比べたら、貧相なものよ」



 食事が始まるとナイフやフォークを使ったマナーなど知らないため、隣に座るセリックの見よう見まねで料理を口に運んだ。



「……」

「……」



(父親とセリックは寡黙な所が似ていますが、リィティアは母親の血が濃いようです)



 こうして、たまにカチカチと食器の音が鳴る、静かな家族の食事は終わった。



__




 ペラッ

 ペラッ



 自室でマナーの教科書を読んでいると、時計は夜9時を指していた。この体の成長の為にそろそろ寝ることにする。



「寝る前にトイレへ…」



 暗がりの廊下を進むと、ふとリィティアの母親の顔がよぎった。夕飯時、まともに会話ができたのは母一人であり、貴族生活やこれからの為に色々話を聞けるかもしれない。


そう思い立った私はトイレを済ました後、三階の両親がいると思われる場所へ向かった。



「何をしている」

「ッ…」



 背後から急に父に声を掛けられて、声が出そうになった。



「三階には上がってくるなと忠告したはずだが」

「ごめんさない」



 三階に行ってはダメなルールでしたか…。

 おずおずと自分の部屋に戻ろうとした時、女の声が聴こえてきた。



「今日の相手はアナタでいいわ」

「かしこまりました、セラ様」

「昨日の使用人はすぐに果ててつまらなかったのよ」



 使用人に体を預ける母親セラが、薄い下着一枚で近くの部屋から出てきた。私は頭が真っ白になり父の顔を見上げるが、無表情で何を考えているか分からない。



「あら…リア、あなたがここに来たって事は男に興味があるの?」

「いえ、間違えただけです」

「そう、リアにはまだ早いわ、行きましょ」



 他の男と平然と私たちを通り抜ける母親を見て、全身に寒気が走った。



「お父様は…容認しているのですか」

「セラは容姿と血が優れた女だ、ローク家の子を残した以上問題はない」



(なるほど…こんな環境でまともな子供は育たない…)



 部屋に戻った私はなかなか眠れず、机の上に白紙を出し、記憶を辿ってリィティアのゲーム内の行動を書き出した。



【魔法学園】


・主人公:ミーテル

・悪役令嬢:私

・攻略対象は四名


・リィティアは主人公に強く執着する

・学園内で評判操作、濡れ衣を仕掛ける


・魔法競技、個人戦

 → 危険指定外の魔法で重傷者が出る

 → リィティアが示唆


・学園の結界破壊

 → リィティアが関与

 → 魔物が大量侵入

 →リィティアは姿を消す


 最終的にリィティアは主人公一行が倒した魔王の魔力核を取り込み、ラスボスとして立ち塞がる。


 

「リィティアは強敵でした…後半は完全な悪に染まってしまいますが」



 魔法は『下位』『中位』『上位』『超級』の四つで分けられ、リィティアは超級魔法を何度も使用してくる最悪の敵だった。


 中盤のリィティアですら、風、火、水、の三属性を混合した氷魔法を操り。学園トップの攻略対象ですら兄以外一属性しか扱えない為、リィティアは学園最強の敵と言える。



「確か、聖女の存在がリィティアの特異性を薄めるのを危惧し、主人公を学園から排除しようとしていましたね」



 聖女は魔王の力が増大した年に生まれ、500年に一度しか誕生しない設定があった。



「500年振りの聖女誕生に、魔法が強いだけでは話題に負けますよね…」



 リィティアの内心をゲーム内で語られる事は無いが、主人公をいじめる理由は単純だったのかもしれない。



「そろそろ寝ますか」



 ずっと考えていたら眠気が襲ってきた、目が覚めたら本人の意識が戻っているかもしれない、など考えながら広いベッドの中で目を瞑った。

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