【第7章】未来人、工業規格と織部好みの対立をひとつの結論に統合する
未来人は工業規格センターを出たあと、
夕暮れの街をゆっくりと歩いた。
右には均一に整った街の直線。
左には古い町並みの歪んだ影。
未来人はその両方を眺めながら呟いた。
「……これだ。
この“対比”こそ、今の世界が抱えている核心だ。」
統一規格=均一化、効率、分別、再現可能性、資本主義的正解
織部好み=歪み、ムラ、偶然、時間、非再現性、創造の根源
未来人の視線は遠くのビル街に向く。
「現代は“規格の世界”を優先しすぎた。
ズレを排除し、歪みを悪とし、
偶然すら管理しようとしている。」
そして、ふっと微笑む。
「……だが、それでは世界は進化しない。
未来を作るのは常に、“規格外”だ。」
◆ 未来人、織部焼を思い返す
未来人は上着のポケットに手を入れ、
美術館で見た織部焼の姿を思い浮かべた。
・歪んだ縁
・溜まる釉薬
・ムラと陰影
・完璧ではないが“確かな美”
未来人は静かに呟いた。
「歪みには、時間が宿る。
均一には、時間が入らない。」
「陶芸家は、規格ではなく“流れ”を作る。
工業規格は、流れを止める。」
「歪みは未来へ開いている。
均一は過去の最適化に閉じている。」
この言葉によって、
“統一規格 vs 織部好み” が
思想として完全に揃う。
◆ 第6章・最終結論
未来人はビルの窓に映る自分を見て、
静かに宣言した。
「均一は秩序を生み、
歪みは未来を生む。」
「規格は必要だ。
だが“正しさ”にしてはいけない。」
「未来とは、規格外のゆらぎが生み出すものだ。」
彼は空を見上げながら言う。
「織部好みは、
歪みを許したんじゃない。
歪みを“価値”に変えたんだ。」
未来人の口調は穏やかだった。
◆ 完結:未来人の旅はここで一区切り
未来人は歩き出す。
無数の規格に囲まれた現代社会を後にして、
歪みとムラが息づく小さな路地へと向かう。
「……未来は、整いすぎてはいけない。」
夕暮れの光が建物の歪んだ影を伸ばし、
その姿はどこか織部焼の釉薬のムラのように揺れていた。
未来人は最後に、
小さく言った。
「完璧より、不完全のほうが未来を持っている。」




