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3話

ここから登場人物が増えていきます。


南極の氷に閉ざされた深淵の回廊。青白く輝く世界の核の前で、空はアビスを見据え、穏やかな笑みを浮かべていた。だが、その微笑みは、底知れぬ何かを覗かせるものだった。アビスは、創造主の圧倒的な力に触れたばかりの恐怖と畏怖を胸に、なおも竜の姿で震えていた。


「その格好で出れば、この世界のほとんどの生物が死んじゃうよ」

と空は軽い口調で言った。


アビスの体から発する禍々しいオーラは地球上のほとんどの生物が感じるだけで恐怖し死んでしまうほどの力をもっていた。アビスが驚く間もなく、空は指を軽く鳴らした。


次の瞬間、空間に黒い霧が渦巻き、そこから人間の姿をした「器」が現れた。ダンディーで渋い雰囲気を漂わせる、執事のような装いの男性の身体だった。黒のタキシードに白いシャツ、銀のネクタイピンが光り、年齢は40代半ばに見えるが、どこか超越的な威厳を湛えていた。空は微笑みを深め、言った。


「この器に入れば、いつでも元の姿に戻れるし、力を制御できる。どうだ、試してみるか?」


アビスは一瞬躊躇したが、すぐにその器の異常性に気づいた。この身体は、単なる人間の形をした器ではなかった。内部には、空を嫌悪していた天界の神々に匹敵する力が宿っていた。アビスは戦慄した。


「私は……こんな存在に喧嘩を売っていたのか」

と、自身の傲慢さを後悔しながら、黒いモヤのような姿を収束させ、器に吸い込まれるようにしてその身体を纏った。次の瞬間、ダンディーな執事の姿のアビスがそこに立っていた。鋭い目つきと落ち着いた物腰は、まるで高級ホテルのコンシェルジュのようだ。


「悪くないだろう?」


と空が笑う。アビスは自分の新たな姿に手を動かし、力の制御が完璧であることに驚嘆した。


「主よ……この力、この器は……」


言葉を失うアビスに、空は軽く手を振った。


「細かいことは気にしないでいい。さあ、行こう。この世界を少し見て回るぞ」


二人は南極の氷の回廊を後にし、空間を越えて世界へと飛び出した。現代の地球は、数百年前の平凡な惑星とは全く異なる姿をしていた。


ゲートの出現以来、世界は魔物と覚醒者によって再構築されていた。そして、驚くべきことに、世界共通言語「ユニオン」が誕生していた。


これは、ゲートの魔力と覚醒者の能力が国境を越えた交流を促し、言語の壁を溶かした結果生まれたものだった。ユニオンは、英語や中国語、日本語など既存の言語を融合させ、魔力による直感的な理解を可能にする言語だった。空はこれに興味を示し、


「人間の適応力は面白いな」と呟いた。 


世界には、8つの巨大なゲートが存在していた。アメリカ、日本、ロシア、中国、イギリス、フランス、ドイツ、オーストラリア――これらの国に位置するゲートは、覚醒者の中でもSランクの上位者でなければ攻略できないほどの難易度を誇っていた。


これらのゲートは、かつてアビスが裏から管理し、魔物の出現を制御しつつ、世界のバランスを保っていた。アビスは執事の姿で空の隣に立ち、説明した。


「この8つのゲートは、地球の魔力の流れを調整する要です。私がその動きを監視し、必要に応じて魔物を送り込んでいました」


空は頷き、宙に浮かんだまま世界を観察した。


「ふむ。バランスは悪くないが、少し物足りないな。この世界、もっと面白くできるはずだ」


彼の言葉に、アビスは一瞬身を硬くしたが、すぐにその意図を察した。空は創造主として、この地球を新たな段階へと押し上げるつもりだった。

空は両手を広げ、静かに言った。


「この世界のバランスを崩さないように調整する。地球のレベルを少し上げる。今までよりも大きく、新たな大陸を作り、様々なアイテムや力を世界に分ける。そして、前の状態のアビスレベルのモンスターや新たな生物を生み出していこう」 


その言葉とともに、空の力が世界を包んだ。地球の内核が震え、大気圏が一瞬揺らぎ、空間そのものが拡張を始めた。太平洋の中心に、新たな大陸が隆起した。


緑豊かな森林、火山が噴き出す荒々しい大地、魔力が渦巻く湖――新しい大陸は、まるで神話の時代を思わせる景観だった。同時に、世界中に新たなアイテムが生まれた。魔力を増幅する剣、時間を遅らせる指輪、空間を切り裂く弓――これらは、覚醒者たちの手に渡ることで、新たな戦いと進化を促すだろう。


さらに、空はアビスに匹敵する力を持つ新たな魔物を生み出した。天空を裂く鳳凰、深海を支配するリヴァイアサン、大地を揺らす巨獣――これらがゲートから現れることで、世界はさらなる混沌と調和の狭間へと突き進む。


アビスは、執事の姿でその光景を呆然と見つめた。


「このようなことが……簡単にできるのは、まさしく神以上の力でないと不可能です。私は主に仕えることができてよかった」


と、彼は心から感じた。空の力は、彼が想像していたどんな神話の神々をも超えていた。アビスは、自分の新たな役割に誇りすら感じ始めていた。



一方、天界管理局では、空の不在が深刻な混乱を引き起こしていた。管理局の中心、輝くクリスタルの回廊では、管理者たちが騒然としていた。空が去ったことで、管理していた無数の世界のバランスが微妙に揺らぎ始めていた。星の軌道がわずかにずれ、因果律が不安定になり、それを修正するために神々が協力し制御を行なっていた。


「空がいないせいで、こんな事態に!」と、炎の神格を持つ管理者、フレイアが叫んだ。彼女の周囲では、炎が制御不能に揺らめいていた。


「彼の力がなければ、こんな微調整は不可能だ! なぜ彼を邪魔者扱いしたんだ!」

「黙れ、フレイア!」


と、時間の管理者クロノスが苛立たしげに返す。「空はあまりにも強すぎた。彼がここにいると、我々の存在意義がなくなる! だが……確かに、今の状況は予想外だ」


管理局の管理者たちは、元々空の力を借りて世界を管理していたが、彼の存在を疎ましく思い、陰で彼を遠ざける策を講じていた。だが、空が自ら去った今、彼らはその力の大きさを痛感していた。管理局の最高議会では、緊急会議が開かれていた。 


円卓に座る12の神格たちは、それぞれが異なる世界の法則を司る存在だったが、誰も空の代わりを務めることはできなかった。


「空はどこに行った?」と、空間の管理者エーテルが問う。彼女の声は、虚空に響くように低く、冷たかった。「彼の気配は完全に消えている。どの世界にも、どの次元にもいない」


「地球だ」と、予知の管理者オラクルが静かに言った。彼女の目は、未来の断片を映し出す水晶のように輝いていた。「彼は地球に降臨した。だが、何をしようとしているのかは見えない……彼の力は私の予知を拒絶する」


「地球だと? あのちっぽけな試作品に?」と、フレイアが嘲るように笑ったが、その声には不安が滲んでいた。「あの惑星は、ゲートと覚醒者で勝手に回っている。我々が介入する必要もないはずだ」


「そう思っていたのは我々だけだ」と、クロノスが吐き捨てる。「空がそこにいるなら、事態は我々の制御を超える。彼は……世界を再構築するつもりかもしれない」


管理者たちの間に重い沈黙が流れた。空の力は、彼らが管理するすべての法則を超越していた。彼が本気で動けば、宇宙の構造そのものが変わる可能性があった。だが、彼らは空を追うことも、呼び戻すこともできない。なぜなら、空は彼らにとって「制御不能な創造主」だったからだ。


「ひとまず、地球の状況を監視するしかない」と、エーテルが結論づけた。「だが、空が何をしようとしているのか、正確に把握する必要がある。誰かを派遣するべきだ」


「誰を?」と、フレイアが鋭く問う。「我々の中に、空に立ち向かえる者がいるのか?」


その問いに、誰も答えられなかった。管理局は、空の不在によって初めて、自分たちの無力さを思い知った。だが、彼らはまだ知らない。空が地球で始めた「遊戯」が、宇宙全体に波及するほどの変革をもたらすことを。


空とアビスは、新たな大陸の中心に立っていた。そこは、空が作り上げたばかりの、魔力が渦巻く未踏の地だった。空は空を見上げ、軽く指を振った。すると、空に虹色のオーロラが広がり、新たな魔物の咆哮が遠くで響いた。


「さて、アビス。次はどこを見て回る? この世界はまだまだ可能性に満ちているぞ」


アビスは、執事の姿で恭しく頭を下げた。


「主のご意志のままに。日本、アメリカ、あるいは新大陸のゲートを巡るのも一興かと」


空は笑い、言った。

「いいね。じゃあ、まずは日本のゲートからだ。あそこの覚醒者たちは、なかなか面白いらしいからな」


二人は空間を越え、東京へと向かった。地球は、創造主の気まぐれによって、新たな時代へと突き進もうとしていた。天界の混乱を知らぬまま、世界は静かに、しかし確実に変貌を始めていた。



^_^

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